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夏の夜に 川魚を獲る


月の暗い夜 二人は川魚を獲りに出かけた


手にしたガス灯の白い灯りに
         夜の小径が 浮かび上がる

辺りは 密かな生き物の気配に満ちている

山の小径を抜けて 一息つくと
ザァザァ  …
どぷん どぷん …
水音が聞こえてきた

美桜はギュッと父さんの手を握り 顔を見上げる
暗やみの中で 大きな手が握り返してくる

藪を踏んで 水辺に下りる
川の匂いがする
冷たい水に足を入れる
火照った身体に沁みて
美桜はもう怖いのなんか 忘れてしまう

父さんはガス灯を高く掲げ
    川面を照らして浅瀬を歩いて行く

美桜も 小さな足を踏み締め
    危なっかしい足取りで 後に続く
    胸がドキドキする


やがて 前方に大きな岩
    足を止め 岩陰の深みを照らす

何匹もの魚が   寄り添って漂い じっとしている

美桜は 息を飲んで見つめる


父さんは 右手のうなぎバサミを構えると

そっと深みに差し入れ
寝ぼけた一番大きなヤツを つかみ上げた

目覚めた大物は 暴れるが
途中で折ってきた小枝をエラに通してぶら下げると
          先へと歩いてゆく



どこかで カジカが鳴く
流れ続ける水の音
どこまでも暗い夜の川

遠くに 隣家の灯りが見えて
ほたるが   あたりに   ふわり ふわりと  漂う

   父と娘の 夏の夜のひととき  


補足  夜の川魚獲りについて

  • 月の暗い夜の方が、魚が警戒心を解きやすく、川魚を獲るに適している。

  • うなぎバサミは うなぎの捕獲用のハサミで
    細長く、先端が鋭く尖って、刃の部分はギザギザになっている。

  • 夜の川で、魚を掴み取りするのは、かなり難しいとされるが
    ここでは、漁というより遊びとして
    山村に暮らす人から聞いた話をもとにしています。

  • カジカについて 
    魚と カエルがあり
    カジカは、清流の岩場などに生息する魚で、食用として利用されている。
    カジカカエルは、清流や渓流などの水辺に生息するカエルで
    澄んだ美しい声で鳴き、「フィフィフィ」「コロコロ」と聞こえます。

この物語で鳴いているのは カジカカエルの方です。


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