三コマ寓話第五話
きんぺい王と雨の龍
むかし、山海に囲まれた国に、きんぺい王という男が君臨しておった。 この王、金銀を集めることに心を奪われ、 税を重くし、民の嘆きを聞かず、 「国とは余の器である」と豪語しては、 自らの欲を満たすことばかり考えていた。やがて民の声は天に届き、 雲の奥に住まう雨の龍が眉をひそめた。 「地上の理を乱す者、天もまた黙してはおらぬぞ」

ある夜、龍は尾を振り、雲を裂き、
大雨を国へと落とした。川は溢れ、田畑は沈み、民は家を捨てて高台へ逃げ惑った。しかし、きんぺい王は民を助けず、「余の宝だけは守らねばならぬ」と言い、黄金を詰めた箱を抱えて城から逃げ出した。その姿を見た龍は、「王たる者、民を捨てて宝を抱くか」と、さらに怒りを燃やし、雨脚は槍のごとく地を叩いた。

洪水は三日三晩続き、きんぺい王が逃げ込んだ山道も濁流に呑まれた。
王は宝箱を抱えたまま足を取られ、
ついに流れの底へ沈んでいった。その後、雨はぴたりと止み、龍は雲の奥へ帰っていった。民は力を合わせて国を立て直し、「王は民を守る者なり」という言葉を石碑に刻んだ。そして人々は語り継ぐ。「宝を抱いて沈んだ王の末路は、民を捨てた者の行く末である」と。

悪政は天に届く、民を捨てる者は、民に捨てられる、欲を抱けば沈む、理を守れば国は立つ!
おしまい
