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【理学療法士の統計学】みんなR言語を学ぼう

運動×栄養×データで健康を科学し、医療をアップデートする理学療法士のジローです。

最近は、政治家さんの「最近の医療情勢に関してどう対応していくか?」に関する答弁でも、当たり前に「医療DXの推進」が語られるようになり、病院内外のデータ活用がこれまで以上に重要視される流れが強まっています。

データの管理と、その適切なアウトプットは政策だけでなく、私たち理学療法士の臨床や研究にも直結する時代です。

これまでの有料の統計ソフトは高価で更新も大変でしたが、いまや無料で強力なツール「R(アール)」があります。

しかも生成AIやネット上の情報を活用すれば、導入のハードルも大きく下がっています。

↓ Rのダウンロードページ



エビデンスを強化し、仲間と解析を共有するために──。

これからの標準は、Rを中心にした統計学習と考えています。具体的にどのようなことを想定しているのか記事にして共有します。

✒️筆者紹介
理学療法士/修士(リハビリテーション学・公衆衛生学)

リハビリテーション医学の科学的根拠を追求すべく、大学院にてリハビリテーション学の修士号を取得。さらに、臨床研究・疫学・統計解析の実力を体系的に習得するため、公衆衛生学修士(MPH)を取得し、医療データの分析にも軸足を置く。

現在は、 医療リアルワールドデータ活用人材プロジェクト 東京大学履修コースで、医療の現場から得られる大規模データを用いた実証研究に取り組む。臨床と疫学をつなぐ視点から、介入効果の可視化と医療政策への応用を目指している。

脳卒中後の機能回復と栄養管理の臨床・研究に携わり、回復期リハビリ病院では病棟主任・教育主任を歴任。現在はリハビリ現場を離れ、医療研究開発センターのプロジェクトマネージャーとして新たな挑戦を始める。


🔹理学療法士は、みんなRを学ぼう

理学療法士が統計を学ぶとき、私はまず R(アール) を勧めています。
Rは、ウェブ上で公開されている無料の統計解析ソフトです。

現在、医療現場や研究の世界では、データがあちこちに散らばっています。
電子カルテ、リハ記録、アウトカム評価、健診データ、レセプト…。
これらは単独では力を発揮しにくいですが、統合されることで意味を持つようになります。

データを束ね、解析できるようになると、
単施設では難しかった「複数施設を含めた効果検証」や、
患者背景を踏まえた、より現実に近い研究が可能になります。

つまり、データを武器にした研究の射程が一気に広がるのです。


🔹統計は、ついに解放されはじめた

かつて統計は、
一部の大学教員や研究室に独占された技術でした。
場所と資金と権限を持つ人だけが扱える世界。

Rの登場で、その構造は崩れました。
誰でも、どこでも、同じ環境で、同じ解析ができる。
コードは共有でき、再現でき、検証できる。

これは単なるソフトの話ではありません。
研究の民主化です。

理学療法士が、自分の臨床を自分で検証できる時代が来ています。
Rは、そのための共通言語になりつつあります。


🔹高価な統計ソフトの限界

世の中には多くの統計ソフトがあります。私は大学院時代に Stata(ステータ) を使っていましたが、10万円ほどの購入費が必要で、ユーザーも少ない。

コードを共有しても、
「そのソフトを持っていないから見られない」
「同じ環境が再現できない」
そんな場面に何度も直面しました。

さらに昔、リハビリ系の大学院にいた頃は、研究室のパソコン1台にしか統計ソフトが入っておらず、解析待ちの順番ができることすらありました。

有償ソフトは、
・ライセンス更新にコストがかかる
・個人で継続利用しにくい
・環境の再現性が低い
という弱点を抱えています。

これは「研究を続ける」という視点では、かなり大きな障壁です。

🔹Rが変える研究環境

一方、Rは完全に無料です。
自分のパソコンにインストールすれば、誰でも、いつでも使えます。

さらに、Rの最大の強みは情報量と共有性です。
ネット上には、コードの書き方、解析の考え方、結果の解釈まで、膨大な知見が公開されています。

最近では生成AIが、コードの意味やエラーの原因、出力結果の読み方まで解説してくれるようになり、

「統計が苦手だから無理」という壁は、確実に低くなっています。

もし、理学療法士の多くがRを使えるようになったら、何が起きるでしょうか。

・解析の手順をコードとして共有できる
・他者の解析を再現し、検証できる
・解析を外注しても、その妥当性を自分で確認できる

つまり、エビデンスの質を、現場側がコントロールできるようになります。

これは単に「統計ができる人が増える」という話ではありません。
リハビリテーション医学全体のエビデンスを、より健全で、再現性のあるものに育てていくための基盤づくりです。

私の解析コードの一部です。
皆で、この解析の妥当性があるかどうか討論できれば、
より強固なエビデンス構築につながると思っています。



🔹まずは入り口から

「すぐにコードを書くのは難しい…」という方には、Rをベースにした EZR というソフトもあります。GUI操作で結果が得られ、同時に裏でRのコードも実行されるので、そこから少しずつ言語を学ぶのもおすすめです。

いずれにせよ、統計を学ぶ理学療法士は Rを中心に切り替えていく のが、これからの標準になっていくと考えています。

🔹R導入の具体案

1. 入り口をやさしくする

  • EZRから始める:GUIでクリック操作しつつ裏でRコードが生成されるので、「結果」と「コード」を同時に見て慣れていける。

(こちらの多変量解析編は、理論もわかりやすく解説されているので特にオススメ)

  • RStudioを標準に:見やすい画面、補完機能、データ可視化が揃っている。最初からR本体ではなく、RStudioを前提にしたほうが挫折が少ない。

(私は、この本で勉強しています)


2. 小さな課題に適用する

  • 学会発表や院内研究のクロス集計・t検定程度からRを使う。

  • Excelでやっていた表作りを dplyrでの集計に置き換える。

↓dplyrって何??

  • まずは「Excelよりちょっと便利」くらいの用途で慣れる(慣れたら、戻れません)。


3. 学びの環境を作る

  • 院内の勉強会:月1回でも、数人でコードを見せ合う場を作ると定着が早い。

  • 生成AIの活用:エラーの意味やコードの修正をAIに聞くと、初学者の壁を一気に下げられる。


4. 実務との接点を強調する

  • 臨床研究データ解析(RCTのベースライン比較やCox回帰など)をRで再現。

  • リハビリ実績や介護保険データの集計をRに置き換え、現場で「使える感」を実感する。

  • 成功体験があれば継続できる。


5. コミュニティに参加する

  • 医療者向けの R勉強会やSlackグループに参加。

  • 「1人で悩まない」ことが長続きの秘訣。


私も参加しているこちらのコミュニティーには、Rの講義があります。

ポスターをクリックすると、とべるようにしておきます

AIコーディング支援の光と影 ― 医療データを扱う立場から

最近は、さまざまな AIによるコーディング支援 が急速に普及しています。確かに便利で、生産性を大きく上げる可能性があります。

そのため、わざわざRを使用する必要がないのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし、医療データや臨床研究にそのまま使うのは非常に注意が必要です。

匿名加工情報でもリスクは残る

AIに解析そのものを投げるとき、そこに含まれるデータは基本的に外部サーバーに送信されます。たとえ匿名加工情報であっても、「外に出す」という行為そのものがリスクを伴います。

研究倫理や個人情報保護の観点から見れば、安易に扱って良いものではありません。

専門的な制御知識が必須

AIコーディングを安全に活用できるのは、

  • 外部送信を確実に制御できる知識を持つ人

  • 完全にローカル環境で閉じた形で運用できる人
    に限られます。つまり、かなり PCやセキュリティに達観している人 でなければ、安全に使うことは難しいのです。

結論:まずはRを学ぶことから

だからこそ、臨床研究をこれから始める理学療法士や医療職には、まずは AI支援に頼るのではなく、Rを基礎から学ぶこと(読み書きができる) が現実的で安全な第一歩だと考えます。

私自身、コードのたたき台をAIに書いてもらうこともありますし、効率という意味では非常に強力な道具だと思っています。

ただし、臨床研究をこれから始める理学療法士や医療職にとって、
最初の一歩としてAIに全面的に依存するのは、現実的でも安全でもない
それが今の率直な考えです。

理由はシンプルです。
研究で扱うデータは、患者さんの人生に直結する情報だからです。
どれだけ匿名化されていても、「外部に出す」という行為そのものがリスクになります。
そして一度外に出たデータは、基本的に取り戻せません。

その点、Rを基礎から学び、
・コードが「読める」
・最低限、自分で「書ける」
・解析を自分の手元で完結できる
・外に出して良い情報かダメな情報かをコードから判断できる(その上でAIを使う)

この状態を作っておけば、データを守りながら、統計の土台を着実に積み上げることができます。

AIは、Rのコードの読み書きができる人にとっては「補助輪」になります。
一方で、読み書きができないまま使うと、どこで何が起きているのか分からないブラックボックスになりやすい。

それは研究としても、倫理的にも、かなり危うい立ち位置です。

だから私は、

「まずはRの基礎を学ぶ。AIはその後」
この順番を強く勧めたいと思っています。

遠回りに見えるかもしれません。

でも、自分の手で考え、確かめ、説明できるという感覚は、
あとからAIを使うときに、確実にあなたを“使う側”に引き上げてくれます。

臨床研究は、派手なツールを使うことではなく、
判断の責任を引き受ける仕事です。

その第一歩として、Rという透明な道具を手に取る。
それは、とても地味で、とても誠実な選択だと思います。


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