警察が来たらサイコロを飲む係!? 名もなき人々が支えた『歴史のなかの奇妙な仕事』
歴史の授業で習うのは、いつも王様や革命家、天才たちばかりです。
でも、ピラミッドを作ったり、汚れた街を掃除したりしたのは、名前も残っていない普通の人々でした。
フランスの歴史ライター、ニコラ・メラの『歴史のなかの奇妙な仕事』は、そんな「名もなき人々」が生活のためにやっていた、今では考えられないような奇妙な仕事にスポットライトを当てた本です。
この本に出てくるのは、吸血鬼ハンターや、人間の目覚まし時計、サイコロを飲み込む係といった、びっくりするような職業ばかり。
でも、これは単なる笑い話ではなくて、どうしてもその仕事が必要だった理由が、当時の社会にはあったのです。
この記事では、本の中で紹介されている約80種類の仕事の中から、特に衝撃だったものとかををピックアップして、紹介していきますね!
ぜひ、面白いと思ったら、買って読んでみてほしいです!
どんな本? 著者はどんな人?
著者のニコラ・メラは、フランスの歴史系ジャーナリスト。
彼は「歴史の教科書に載らないような裏話」や「偶然の出来事」を掘り下げるのが大好きで、YouTubeやブログでも面白い歴史ネタを発信しています。
この本では、仕事を大きく6つのテーマに分けて紹介しています。
トイレ掃除や死体処理などの「汚れ仕事」、神への祈りや迷信から生まれた「信仰の仕事」、医学が未熟だった時代の実験台のような「無茶な科学」、低賃金で単純作業を繰り返す「地味でつらい仕事」、命がけで高給を稼ぐ「恐怖の報酬」、そして体を酷使しすぎる「オーバーワーク」といった分類です。
これらを通して、当時の人々がどんな苦労をしていたのかが見えてきます。
命がけの「汚れ仕事」と都市の裏側
昔の都会は、今のように清潔ではありませんでした。
ゴミや汚れを片付けるために、誰かが体を張る必要があったのです。
子供たちが犠牲になった黒い職場
産業革命の時代、石炭を燃やして動く工場や家庭からは大量の煤(すす)が出ました。
煙突が詰まると火事やガス中毒になるため掃除が必要でしたが、当時の煙突は迷路のように狭く、大人の体では入ることができませんでした。
そこで雇われたのが、孤児院などから連れてこられた4歳から8歳くらいの小さな子供たちです。
彼らは裸同然の姿で真っ暗な煙突に入り、煤をかき落とす作業を強いられました。
怖がって登らないときは、親方が下から火を焚いて無理やり登らせることもあったといいます。
転落事故や窒息のリスクはもちろん、煤に含まれる有害物質のせいで多くの子供たちが癌などの病気にかかるという悲しい代償を伴う仕事でした。
機械のブラシが発明され、法規制が整うまで、この過酷な児童労働は続きました。
警察をごまかせ! 法と欲望が生んだ仕事
昔も今も、ギャンブルや遊びは人気ですが、法律で禁止されていることもありました。
そこで、警察の目を欺くための驚きの仕事が生まれました。
サイコロ飲み
特にユニークなのが、サイコロ飲みという仕事です。
昔のイギリスでは、違法な賭博場(カジノ)が警察に踏み込まれたとき、その場で「サイコロ」が見つかると逮捕されてしまいました。
そこで、賭博場の入り口やテーブルの脇に専門の係を待機させました。
見張りが「警察だ!」と叫んだ瞬間、その係はテーブルの上のサイコロをすべて口に放り込み、ごっくんと飲み込んでしまうのです。
当時のサイコロは今のものより大きく、骨や象牙で作られていたため、喉に詰まらせたり、お腹を壊したりするのは日常茶飯事でした。
まさに自らの消化器官を使った、命がけの証拠隠滅だったのです。
医学の進歩を支えた怖い仕事
今の安全な手術や医療があるのは、昔の人々が泥臭い方法で人体を研究してくれたおかげです。
医者のための調達係
18世紀から19世紀にかけて、医者たちが手術の練習をするためには解剖用の死体が必要でしたが、法律で許された死体だけでは数が足りませんでした。
そこで暗躍したのが「死体盗掘人」です。
彼らは夜中の墓地に忍び込み、埋葬されたばかりの遺体を掘り起こして医学校に売却していました。
人々は自分の家族の遺体が盗まれないよう、お墓に鉄の檻(おり)を設置したりして対抗しましたが、トラブルは絶えませんでした。
最終的には殺人事件まで起きたことで法律が変わり、正規の手続きで献体ができるようになったため、この仕事は消滅しました。
髪を切るついでに手術も
昔、医師は勉強だけをする知識階級であり、血が出る手術は野蛮なこととして忌避していました。
その代わりにメスを握ったのは、なんと床屋さんでした。
彼らは髪を切り、ヒゲを剃るのと同じカミソリを使って、虫歯を抜いたり、ケガの手当てをしたりしていました。
理髪店のシンボルである赤と白のポールは、当時干されていた「血のついた包帯」と「清潔な包帯」を表していると言われています。
お金持ちの道楽
お金持ちの人々は、自分の庭や家を飾るために、物だけでなく「人間」も飾りました。
庭に住む「生きた置物」
18世紀のイギリスの貴族の間では、わざと荒れ果てたような自然な庭を作るのが流行しました。
その雰囲気を高めるために、世捨て人を雇って庭の小屋に住まわせるという奇妙な雇用が生まれました。
雇われた人は、7年間、髪も爪も切らず、お風呂に入らず、誰とも話してはいけない、といった厳しい契約条件を課されることがありました。
彼らの役割は、庭の雰囲気をミステリアスにするための「生きた小道具」になることです。
しかし、こっそりパブに飲みに行ってしまう隠者もいて管理が大変だったため、やがてその役割は陶器の人形(ガーデン・ノーム)へと代わっていきました。
機械の代わりになった人間たち
人間目覚まし時計
目覚まし時計がまだ高価で不正確だった時代、工場に遅刻しないように労働者を起こして回る「目覚まし屋」という仕事がありました。
彼らは長い棒を使って2階の寝室の窓を叩いたり、豆鉄砲で窓ガラスに豆を当てたりして、お客さんが起きるまで粘り強く音を鳴らし続けました。
安くて正確な時計が普及すると、彼らの仕事は機械に取って代わられ、姿を消しました。
現代の仕事も未来から見れば「奇妙」かも?
ニコラ・メラさんの本を読むと、「昔の人はなんて野蛮だったんだ」と思うかもしれません。
でも、彼らが体を張って問題を解決してくれたおかげで、医学が進歩し、法律が整備され、今の私たちの生活があります。
そして、もしかすると100年後の未来人から見れば、私たちが今している仕事(満員電車での通勤や、パソコンの前で一日中座り続けることなど)も、「21世紀の奇妙な仕事」として紹介されているかもしれませんね。
めっちゃ面白かったので、ぜひ読んでみてください!
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