【要注意】そのデータ、本当に信じて大丈夫? 多くの人が騙されている「科学のフリをした嘘」の巧妙な手口!『デタラメ』
今って、人類史上かつてないほど多くの情報に囲まれて生きています。
ニュースサイト、SNS、動画プラットフォームからは、絶え間なくデータやニュースが流れ込んでくる。
しかし、その情報の洪水の中で、何が真実で何が「デタラメ」なのかを見分けることは、日に日に難しくなっています。
政治家は平然と事実と異なる主張をし(ポスト真実)、企業は実現不可能な計画で資金を集め、メディアはクリックを稼ぐために扇情的な見出しを掲げる。
このような世界で、私たちはどうすれば真実を見極め、賢明な判断を下すことができるのでしょうか。
その問いに力強く答えてくれるのが、今回紹介する『デタラメ データ社会の嘘を見抜く』です。
著者は、進化生物学者のカール・T・バーグストロームと、情報科学者のジェヴィン・D・ウエスト。
情報の流れを異なる分野から研究してきた二人の専門家がタッグを組み、現代にはびこる「デタラメ」の正体を暴き、それに対抗するための実践的な武器と思考法を授けてくれます。
この本、なんと3人のノーベル賞受賞者が「私たちの生きる今という時代に必要な本」と絶賛。
「デタラメ」の正体!嘘との決定的な違い
本書を理解する上で最も重要なのが「デタラメ(原題:Bullshit)」という言葉の定義です。
これは単なる「嘘」とは異なります。
嘘つき
真実を知った上で、意図的にそれを隠し、偽りを述べること
デタラメ屋
真実がどうであるかに関心がない
彼らの目的は、聞き手を説得したり、感心させたり、自分を賢く見せたりすることであり、そのために事実を無視する
さらに本書は、現代のデタラメがより巧妙になっていると指摘します。
旧来のデタラメ
言葉巧みなレトリックや、ごまかしの表現が中心
新しいデタラメ
本書が主戦場と定めるのがこちら
数学、データ、統計、グラフといった「科学の衣」をまとっているのが特徴
数字や専門用語を使うことで、客観的で反論しがたいという印象を巧みに作り出す
この「新しいデタラメ」は、SNSという強力な拡散装置を得て、社会に蔓延しています。
SNSでは、情報の正確さよりも、速さや「いいね!」の数が重視されがちです。
そのため、悪意のない誤情報も、意図的に人々を騙すための偽情報も、驚異的なスピードで広まってしまうのです。
データに潜む罠
では、科学の衣をまとった「新しいデタラメ」は、具体的にどのような手口で私たちを騙すのでしょうか。
本書で紹介されている代表的な罠を、豊富な事例とともに見ていきましょう。
罠①相関関係を因果関係とすり替える
「Aが増えるとBも増える」というデータを見ると、私たちはつい「Aが原因でBが起きたんだ」と考えてしまいがちです。
しかし、統計学の基本は「相関は因果を意味しない」です。
本書でも紹介されているタイラー・ヴィーゲンのウェブサイト「見せかけの相関」には、笑ってしまうような事例が満載です。
例えば、「ミス・アメリカの年齢」と「蒸気や熱い物体による殺人件数」のグラフは、驚くほどきれいに連動しています。
もちろん、両者に因果関係などあるはずがありません。
これは、膨大なデータの中から都合のいいものを探せば、全く無関係なものの間にでも、もっともらしい関係性を見つけ出せるという好例です。
メディアは特にこの罠を多用します。
「〇〇を食べると、がんのリスクが△%減少!」といった見出しは、本来は単なる相関関係を示した研究であるにもかかわらず、あたかも因果関係が証明されたかのように報じているケースが非常に多いのです。
罠②都合のいいデータだけを見せる
データ分析において、しばしば最も重要なのは「そこにあるデータ」よりも「そこにない、見えていないデータ」です。
意図的に、あるいは無意識に、データが偏って集められることを選択バイアスと呼びます。
例えば、ある旅行サイトが「全米バーベキューが美味しい都市ランキング」を発表したとします。
しかし、このデータは「その都市でバーベキューを食べ、かつレビューを投稿した人」という、極めて限定的な人々からの意見に過ぎません。
地元の人々や、レビューを書かない大多数の観光客の意見は反映されていないのです。
同様に、商品の広告で成功体験ばかりが紹介されたり、投資のセミナーで儲かった人の話だけが取り上げられたりするのも、この選択バイアスを利用した典型的な手口です。
罠③グラフの見た目で印象を操作する
グラフは情報を直感的に伝える強力なツールですが、同時に、作り手の意図に合わせて簡単に印象を操作できる危険な道具でもあります。
Y軸の操作
グラフの縦軸の目盛りを「0」から始めず、途中から始めることで、わずかな変化を劇的な増減であるかのように見せかけることができる(テレビとかでよくある)
都合のいい期間の切り取り
株価や気温の変動を示すグラフで、上昇(あるいは下降)している期間だけを切り取って見せれば、全体の傾向とは全く異なる印象を与えることができる
3D効果や不要な装飾
一見すると豪華に見える3Dグラフや過剰なデザインは、数値を正確に読み取ることを妨げ、データの比較を困難にさせる効果がある
これらのテクニックは、一見客観的なデータに基づいているように見えながら、実際には見る人を特定の結論へと静かに誘導しているのです。
誰でも使える!デタラメを見抜くための実践的ツール
専門家でなくても、こうしたデタラメに対抗できる強力なツールがあります。
武器①「ありえない数字」を瞬時に見抜く「フェルミ推定」
「フェルミ推定」とは、厳密なデータがなくても、いくつかの既知の事実から論理的に概算値を導き出す思考法です。
「封筒の裏でできる計算」とも呼ばれ、提示された数字が現実的なものかどうかを素早く判断するのに役立ちます。
例えば、「フードスタンプ(低所得者向け食料支援)の不正受給額が年間〇〇兆円にのぼる!」という衝撃的な主張があったとします。
この巨大な数字に圧倒されるのではなく、分解してみましょう。
「受給者数」×「一人当たりの平均受給額」×「想定される不正の割合」
こうして要素に分解し、それぞれの概算値を当てはめて計算してみると、元の主張がいかに現実離れしているかがわかる場合があります。
デタラメな主張は、しばしば根拠が薄弱なため、とんでもない数字を使いがちです。
この「ざっくり計算」の習慣は、数字のデタラメに対する強力なワクチンになります。
武器②AIも怖くない「ブラックボックス思考」
AIや機械学習、複雑なアルゴリズムによる分析結果は、一見すると反論の余地がないように思えます。
しかし、その中身の複雑な数式を理解する必要はありません。
重要なのは、その「ブラックボックス」に何が入力され(インプット)、何が出力されたか(アウトプット)に注目することです。
「ゴミを入れれば、ゴミしか出てこない(Garbage in, garbage out)」
この本では、顔写真から犯罪者を90%の精度で識別できると主張したAIの事例が紹介されています。
著者たちはアルゴリズムを解析する代わりに、入力データに注目しました。
すると、「犯罪者」の学習データには警察のマグショット(無表情や不機嫌な顔が多い)が使われ、「非犯罪者」のデータには企業のウェブサイトにあるようなポートレート(笑顔が多い)が使われていたことが判明しました。
つまり、このAIは「犯罪性」ではなく、単に「写真の写りが悪いかどうか」を判定していたに過ぎなかったのです。
デタラメを指摘するときの心構えと技術
デタラメを見抜いたら、それを正すことも重要です。
しかし、相手を感情的に攻撃しては逆効果。
本書は、デタラメに反論する際の、社会的で倫理的なアプローチを提案しています。
正しくあること
反論する前に、自分の事実確認が絶対に正しいか、何度もチェック
寛大であること
相手が悪意で騙そうとしているのではなく、単に間違っているだけかもしれない、と考える
明確であること
専門用語を避け、簡潔に、何がどう間違っているのかを指摘
誤りを認めること
もし自分の反論に間違いが見つかったら、潔く認めて訂正
その姿勢が、知的な誠実さの証
特に友人や家族など、近しい人に対しては、相手の「アイデンティティ」と「意見」を切り離して議論することが重要です。
目的は相手を打ち負かすことではなく、共有されている情報の誤りを正し、より良い理解に共に到達することなのです。
情報に振り回されない「賢い市民」になるために
『デタラメ』は、情報が氾濫する現代社会を生き抜くための、自己防衛マニュアルであり、責任ある大人になるための必読書。
だいじなのは、高度な数学や専門知識ではなく、健全な懐疑心と、物事を鵜呑みにしない思考の習慣です。
情報を目にしたとき、常にジャーナリストのように自問自答する癖をつけましょう 。
誰がこの情報を私に伝えているのか?
その人はどうやってそれを知ったのか?
その人は私に何を売り込もうとしているのか?
この3つの問いを心に留めておくだけで、デタラメに騙されるリスクは劇的に減少するはずです。
データに溺れることなく、真実を見極める力を、本書と共に鍛えていきましょう。
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これからも毎日、本を紹介したいのですが、このnote、ずっと赤字状態です。もし本好きの方がいらしたら、チップを送っていただけると嬉しいです。