なぜ私たちは現実より「物語」にハマるのか?その答えは『世界物語大事典』にあった
人はなぜ、現実よりも物語の世界に夢中になるのか。
まず、今日紹介する本を紹介する前に、まずその理由を探ってみましょう。
物語に惹きつけられるのは、単なる現実逃避ではなく、人間が生まれながらに持っている大切な本能の一部です。
人間は「物語る動物」
人間は「賢い人(ホモ・サピエンス)」と呼ばれますが、それ以上に「物語る人(ホモ・フィクトゥス)」と呼ぶのがふさわしいかもしれません。
私たちは、誰に教わるでもなく、幼い頃からごっこ遊びに夢中になります。
大人になっても、空想したり、夢を見たり、映画や小説を楽しんだり、人生の多くの時間を物語の世界で過ごしています。
まるで、自分だけの架空の世界を持っているかのよう。
物語は「人生のシミュレーター」
物語、特に主人公が困難に立ち向かう話は、人間にとってフライトシミュレーターのような役割を果たします。
現実で同じような問題に直面する前に、物語を通して安全に経験し、どう対処すればいいかを学ぶことができるのです。
物語が人と人をつなぐ
物語は、社会をまとめる「接着剤」でもあります。
共通の物語を持つことで、人々は同じ価値観を共有し、コミュニティとしての一体感を持ちます。
物語は、時代や文化を超えて、人々の知恵や想いを伝えてきたもの。
ローラ・ミラーの『世界物語大事典』は、こうした人間の根源的な欲求に応える一冊です。
単なる物語のカタログではなく、人類が紡いできた壮大な想像力の歴史をたどる「地図」みたな本。
この本は「かつて創造された最も偉大な架空世界を巡る旅」へと私たちを誘い、なぜ私たちがこれほど物語を愛するのかを改めて教えてくれます。
4000年の物語の歴史を巡る旅
この本は、古今東西の「最も偉大な架空世界」から約100作品を選び出し、美しいイラストや写真とともに紹介するガイドブックです。
本書は、4000年にもわたる物語の歴史を、以下の5つの時代に分けて紹介しています。
第1部 古代の神話と伝説(1700年まで)
『ギルガメシュ叙事詩』や『オデュッセイア』など、文明の原点となった物語
第2部 科学とロマン主義(1701年~1900年)
『ガリヴァー旅行記』や『海底二万里』など、冒険と発見の時代の物語
第3部 ファンタジーの黄金時代(1901年~1945年)
『オズの魔法使い』や『すばらしい新世界』など、ジャンルの礎を築いた名作たち
第4部 新しい世界の秩序(1946年~1980年)
『一九八四年』や『指輪物語』、『ナルニア国物語』など、二つの世界大戦を経て生まれた傑作群
第5部 コンピューター時代(1981年~現代)
『ニューロマンサー』から『ハリー・ポッター』、『ゲーム・オブ・スローンズ』、そして村上春樹の『1Q84』まで、現代を代表する物語
神話の世界から、科学的な探検、そして現代のデジタル空間へ。
読み進めるごとに、人類の想像力の進化を体験できる本!!
ビジュアルと解説がすごい
各作品の紹介ページでは、あらすじ、書かれた時代の背景、作者について、そして後世に与えた影響などが分かりやすく解説されています。
何より素晴らしいのは、作品の挿絵や地図、関連する写真などがオールカラーでふんだんに掲載されている点です。
編集者ローラ・ミラーの素顔
ここでは、総合編集者であるローラ・ミラー氏に焦点を当てます。
ローラ・ミラーとは?
ローラ・ミラー氏は、アメリカで非常に有名なジャーナリストであり、批評家です。
人気オンラインマガジン「Salon.com」の共同設立者の一人であり、長年「Slate」誌で書籍や文化に関するコラムを執筆してきました。
その文章は『ザ・ニューヨーカー』や『ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー』といった一流メディアにも掲載されています。
読みやすさの秘密
ミラー氏は大学の研究者ではなく、一般の読者に向けて文章を書くプロの批評家です。
そのため、専門用語が少なく、非常に明快でジャーナリスティックなスタイルで書かれています。
難しい学術書ではなく、誰もが楽しめる読み物になっているのは、ミラー氏の手腕の賜物です。
また、本書に収められた約100の作品は、学術的な網羅性よりも、文化的にどれだけ重要か、現代の私たちにどれだけ響くか、という批評家ならではの視点で選ばれています。
だからこそ、古い古典と並んで現代の人気作品も紹介されているのです。
この本は、大学教授が作った堅苦しい教科書ではなく、「アメリカの著名な批評家が選んだ、最高に面白い物語の世界展」のようなものだと考えればいいと思います。
日本に届けるために
監修:巽 孝之氏(SFの権威)
日本語版の監修を務めたのは、慶應義塾大学名誉教授であり、日本を代表するSF評論家でもある巽孝之氏です。
巽氏はアメリカ文学、特にSFの専門家として知られています。
SFやファンタジー作品が多くを占める本書において、巽氏の監修は、内容の正確さと学術的な信頼性を保証する「お墨付き」の役割を果たしています。
翻訳:越前 敏弥氏(ベストセラー翻訳家)
翻訳を担当したのは、『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズなど、数々の世界的ベストセラーを手がけてきた日本で最も有名な翻訳家の一人、越前敏弥氏です。
越前氏の翻訳は、その読みやすさと面白さで有名。
SFの専門家と、ベストセラー翻訳のプロ。この二人が揃ったことで、『世界物語大事典』は、めちゃくちゃ読みやすくなったわけです。
想像力の翼を広げるための本
ここまで、『世界物語大事典』の魅力について見てきました。
最後に、この本の本当の価値についてまとめてみましょう。
著名な批評家ローラ・ミラー氏が選び、日本の最高のチームによって翻訳された、美しくも個性的な一冊です。
選ばれた作品には偏りがあり、すべてを網羅した完璧な事典ではありません。
しかし、物語は人間にとってなくてはならないものです。
本に収められた一つ一つの世界は、人類が現実を理解し、未来を夢見るために、いかに想像力という翼を広げてきたかの力強い証です。
なので、この本、完璧な「地図」というより、私たちの尽きることのない想像力を映し出す「鏡」と言える。
そのセレクションの偏りさえも、ある時代、ある文化の中で、どのような物語が人々の心を捉えてきたのかを教えてくれる、興味深い手がかりとなります。
まだ見ぬ素晴らしい物語の世界を発見したい、そして、なぜ私たちがこれほど物語を愛するのか、その秘密に触れてみたいと思ったら、この本は最高の旅の仲間になってくれるはずです。
ぜひ、読んでみてください!
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これからも毎日、本を紹介したいのですが、このnote、ずっと赤字状態です。もし本好きの方がいらしたら、チップを送っていただけると嬉しいです。