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レコード男子|キャノンボール・アダレイ|『Cannonball in Japan』|日本の熱気は、ファンキー・ジャズをちゃんと迎え入れていた

キャノンボール・アダレイ『Cannonball in Japan』。
1966年8月26日、東京サンケイホールでのライブを収めた一枚。

ジョー・ザヴィヌルを迎えた第2期黄金時代の熱と、日本の聴衆がそれをきちんと受け止めた空気まで入っている気がする。今夜はそんな盤を手に取ってみたい。

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今夜の一枚は、キャノンボール・アダレイ『Cannonball in Japan』。

ジャケットを見た瞬間に、まず空気がある。

黒を基調にした画面。浮かび上がるキャノンボールの顔。

そして赤く差し込まれた "J"APAN の文字。

派手ではないのに、遠くからでも目に止まる。これは“来日記念盤”というより、日本という場所そのものがタイトルに入ったライブの記録なのだと思う。

キャノンボール・アダレイを少し続けて聴いてきて、改めて面白いのは、同じ人の盤でも重心がずいぶん違うことです。

『Somethin’ Else』では、黒いジャケットの硬派さと、その中でしなやかに歌うアルト。

『Mercy, Mercy, Mercy!』では、クラブの熱をそのまま受け取る夜。

そしてこの『Cannonball in Japan』では、アメリカのファンキー・ジャズが、日本の聴衆の前でどう鳴ったかという、もうひとつ別の面白さがある。

この盤は1966年8月26日、東京サンケイホールでのライブ録音。

メンバーは、キャノンボール、ナット・アダレイ、ジョー・ザヴィヌル、ヴィクター・ガスキン、ロイ・マッカーディ。

つまり、キャノンボール第2期の充実したクインテットだ。

ジョー・ザヴィヌルが加わり、ファンキーでありながらモーダルな感触や、もう少し先の時代につながる色合いまで混ざり始めている。

この時期のキャノンボールは、ただ陽気なだけではなく、60年代ジャズの先端と大衆性を同時に抱えていたのだと思う。

収録曲も、そのことをはっきり示している。

「Work Song」
「Mercy, Mercy, Mercy」
「This Here」
「Money in the Pocket」
「The Sticks」
「Jive Samba」

この並び、かなり強いです。

キャノンボール・クインテットの持ち味が、そのまま見取り図みたいに並んでいる。

ファンキーで、親しみやすく、でも決して軽薄ではない。

聴き手をつかむ入口をちゃんと持ちながら、演奏の中身はしっかり濃い。そして、リーダーとして、曲の紹介やメンバー紹介をきっちりこなす。こういうところが、キャノンボールの偉さだと思う。

特にこの盤では、「Mercy, Mercy, Mercy」の位置が大きい。

この曲はすでにキャノンボール第2期黄金時代を代表する作品として定着しつつあり、ザヴィヌルの名を広く届けた曲でもある。

ゴスペルやソウルの温度をたしかに持ちながら、微妙にカントリーの要素まで感じさせるという指摘も面白い。

つまりこれは単なる“ノリのいいヒット曲”ではなく、60年代ファンキー・ジャズの条件が、非常にうまく整理されている曲なのだ。

でもこの日本公演盤の面白さは、その代表曲が入っていることだけではない。

むしろ僕が惹かれるのは、これが日本の聴衆に向けて鳴らされたキャノンボールだということ。

いま振り返ると、60年代ジャズの日本受容は、かなり真剣だった。

単に“海外の有名ミュージシャンが来た”という珍しさだけでなく、きちんと音楽として受け止め、聴き、熱を返す土壌があった。

この盤のタイトルにわざわざ in Japan とあるのは、単なるツアーの地名表示以上の意味を持っている気がしてならない。

日本で鳴ったこの夜が、ちゃんと作品として残すに値すると判断された。

そこに、当時の日本のジャズ熱も刻まれている。

キャノンボールは、そういう場にとても似合う人。難しさだけで客を選ぶ人ではない。
かといって、迎合する人でもない。
親しみやすさを持ちながら、演奏の芯は強い。

だからこそ、アメリカのクラブでも、日本のホールでも、その場の空気をちゃんと自分の音楽へ巻き込める。

この盤は、そのことを証明しているように思う。

資料の解説でも、60年代ジャズ・ファンクの流れや、ザヴィヌルがのちにフュージョン方面へつながっていくこと、さらにはキャノンボールがその先駆けのような役割を果たしていたことが示されている。

ここは大事。

『Cannonball in Japan』は懐かしい来日記念盤ではあるけれど、内容は決して後ろ向きではない。

むしろ、この時代のジャズが次の時代へどう開いていくかまで、うっすら見せている。

その意味で、この盤はとても面白い場所にある。

50年代的なハードバップの延長にありながら、60年代的なファンクの感触が強く、さらにその先の融合的な音楽まで予感させる。

それでいて、実際に鳴っているのは難解な実験音楽ではなく、ちゃんと体が動くジャズだ。

この“分かりやすさと先進性の両立”は、キャノンボールだからこそ出来たことかもしれない。

「Work Song」の押し出し。
「This Here」の快楽。
「Money in the Pocket」の弾み。
「The Sticks」の反復の気持ちよさ。
そして「Jive Samba」の軽快さ。

こういう曲たちが日本のホールでどう響いたかを思うと、少しわくわくする。

きっと会場には、ただ座って聴くだけでは済まない種類の熱が生まれていたはずだ。

『Cannonball in Japan』というタイトルは、だから少し誇らしい。

海外の大物が日本に来ました、というだけではなく、日本でこの音がちゃんと受け取られたという記録でもあるから。

そしてその中心にいたのが、キャノンボール・アダレイという、熱と親しみやすさを両方持ったアルト奏者だった。

この符合は、とても美しいと思う。

今夜は、キャノンボール・アダレイ『Cannonball in Japan』。

日本の熱気は、ファンキー・ジャズをちゃんと迎え入れていた。

そんな記録として、レコード男子の棚に置いておきたい一枚だ。



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