アポロン|第1話|坂道のアポロンで“告白”を聴く夜― 降りてこい、ビル・エヴァンス ―
宵の口の、真夜中の喫茶店。
外はまだ明るいのに、店の奥だけ少し夜が早い。
今日は、ピアノの話をします。
アニマン三世です。
……え? ここ、真夜中の喫茶店ですよね?
うん、いる。しれっと、いる。
漫画の1コマ
『坂道のアポロン』の薫は、
どうにも恋愛が下手だ。
言いたいことがあるのに、
言う前に空気がズレる。
ズレたまま、話が進む。
──そのくせ、心だけは本気。
ムカエレコードの地下室。
薫は律子の前でピアノに座る。
「降りてこい、ビル・エヴァンス」
(演奏前の、薫の心の声)
そして、弾く。
“いつか王子様が”。
ジャズの機能
ジャズって、
すごい演奏を見せる音楽だと思われがちだけど、
この場面は真逆だ。
ビル・エヴァンスのピアノは、
「見せる」より先に、
**“言えないことを置く”**ために鳴る。
告白って、言葉の勝負みたいに見えるけど、
ほんとは、間(ま)の勝負だ。
言葉を置く間。
息を吸う間。
怖くて逃げたくなる間。
その“間”を、
ピアノが先に引き受けてくれる夜がある。
薫が欲しかったのは、
テクニックじゃない。
勇気の代わりになる、音の手すり。
ビル・エヴァンスは、
そういうときに降りてくる。
アニマン三世の余韻
……で、結局、王子様になれたのかって?
そこは漫画で確認して。
でも一つだけ言うと——
告白の前に、レコードを回すやつは、だいたい本気だ。
宵の口の真夜中の喫茶店。
次は、空気を黙らせた曲の話をしよう。
チェット・ベーカーでね。
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