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レコード男子|QUEEN『Greatest Hits』『Greatest Hits II』|ベスト盤が“入門編”を超えてしまうとき

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クイーンのベスト・アルバム『Greatest Hits』と『Greatest Hits II』が、CDと2LPでリイシューされる。

こういうニュースを見ると、つい思ってしまう。

「またクイーンか」と。

でも、そのあとすぐに思い直す。

「いや、クイーンなら仕方ない」と。

なぜなら、クイーンのベスト盤は、単なるヒット曲の寄せ集めではないからだ。

それ自体が、ひとつの時代のロック史になっている。

『Greatest Hits』という、強すぎる入口

1981年にリリースされた『Greatest Hits』は、1974年の「Seven Seas Of Rhye」から、1980年の「Flash」までを収めたベスト盤。

つまり、初期のクイーンがどんどん巨大化していく過程を、ほぼ一気に聴けるアルバムということになる。

「Bohemian Rhapsody」
「Somebody To Love」
「We Are The Champions」
「We Will Rock You」
「Don’t Stop Me Now」
「Another One Bites The Dust」

こうして曲名を並べるだけで、もう説明がいらない。一曲一曲が、ロックの国道沿いに立っている巨大看板みたいな存在だ。ふつうベスト盤というと、「まずはこれを聴いてみて」という入門編の役割を持つ。ところがクイーンの場合、その入口がいきなり大聖堂になっている。軽い気持ちで扉を開けたら、天井が高すぎて首が痛くなる。

それがクイーンのベスト盤だ。

僕にとってのクイーン

僕の世代にとって、クイーンは少し不思議な存在だった。ハードロックのようでもあり、オペラのようでもあり、ポップスのようでもあり、スタジアムの大合唱のようでもある。

フレディ・マーキュリーの歌声はもちろん、ブライアン・メイのギターの音色も独特だった。あのギターは、ただ歪んでいるだけではない。どこか品があって、銀細工のナイフみたいな輝きがある。
そして、ロジャー・テイラーとジョン・ディーコンを含めた4人のバンドとしての強さ。

クイーンは、フレディだけのバンドではない。

もちろんフレディの存在感は圧倒的だけれど、楽曲の幅広さは、4人の個性があったからこそ成立していたのだと思う。ロックバンドでありながら、メンバー全員がそれぞれ違う方向から曲を持ち寄れる。

だからクイーンのベスト盤は、音楽性がひとつにまとまっているというより、豪華客船の中に劇場、闘技場、ダンスホール、礼拝堂が全部入っているような感じがする。

『Greatest Hits II』は、終幕へ向かう輝き

そして、1991年の『Greatest Hits II』。

こちらは「Under Pressure」から「The Show Must Go On」までを収録した、第二期クイーンの集大成といえる内容だ。

『Greatest Hits』が、クイーンが世界を制覇していく時代の記録だとすれば、

『Greatest Hits II』は、巨大なバンドが成熟し、そしてフレディの最晩年へ向かっていく時間の記録でもある。

「Radio Ga Ga」
「I Want To Break Free」
「A Kind Of Magic」
「I Want It All」
「The Invisible Man」
「Innuendo」
「The Show Must Go On」

1980年代以降のクイーンは、サウンドも映像表現もより大きくなっていく。

シンセサイザーも入る。
ミュージックビデオの時代とも重なる。
ライブエイド以降の、
スタジアムをまるごと揺らすような存在感もある。

ただ、僕にとって『Greatest Hits II』には、どこか切なさもある。フレディ・マーキュリーが亡くなる直前にリリースされたベスト盤。その事実を知ってしまうと、「The Show Must Go On」という曲名が、ただのタイトルではなくなる。

ショウは続けなければならない。
でも、そこには終わりの気配もある。

この矛盾を、あれほど堂々と歌にしてしまうところが、クイーンのすごさだと思う。

ベスト盤が“作品”になるバンド

ベスト盤には、便利なコンピレーションという側面がある。でも、クイーンの『Greatest Hits』と『Greatest Hits II』は、それだけではない。

それぞれが、ひとつの時代を封じ込めた作品になっている。

『Greatest Hits』は、1970年代から1980年までの爆発。『Greatest Hits II』は、1980年代から1991年までの成熟と終幕。

この2枚を並べると、クイーンというバンドの前半と後半が見えてくる。

しかも、今回はCDだけでなく2LPでもリイシューされる。

これはレコード男子としては、やはり気になる。
クイーンの音は、アナログ盤で聴くと、また違った厚みが出る気がする。

フレディの声の肉感。
ブライアンのギターの艶。
コーラスの重なり。
そして、ドラムとベースが支える大きな床。

ストリーミングで手軽に聴ける時代だからこそ、
レコードでベスト盤を聴く意味がある。

針を落として、片面ごとに聴く。
曲順の流れを身体で受け止める。

クイーンのようなバンドには、その儀式が似合う。

入口であり、王座でもある

クイーンをこれから聴く人にとって、この2枚は最高の入口になる。

でも、すでに知っている人にとっても、改めて聴き直す価値がある。なぜなら、ベスト盤は「知っている曲ばかり」だからこそ怖い。知っているつもりの曲が、ある日、突然違って聴こえることがある。

若い頃は「We Will Rock You」の足踏みと手拍子に反応していた。でも年齢を重ねると、「Somebody To Love」の孤独が刺さる。さらに時間が経つと、「The Show Must Go On」の覚悟に立ち止まる。

クイーンの曲は、派手な衣装を着てこちらに近づいてくるけれど、奥にはかなり深い感情がある。

だから、何度も戻ってしまう。

今回のリイシューは、単なる再発売ではない。
もう一度、クイーンという王国の門をくぐるきっかけになる。

そしてその門の先には、やっぱりあの4人がいる。

フレディ、ブライアン、ロジャー、ジョン。

ロックバンドという形を借りて、ポップスも、オペラも、ハードロックも、スタジアムの大合唱も飲み込んでしまった4人。

ベスト盤なのに、ベスト盤で終わらない。

それがクイーンなのだと思う。

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