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あこがれクリスマス


私の母は、床にものを置くことを許さない。

ゴミを落とすことは持ってのほか、学校帰りの通学カバンや、推し活帰りの戦利品もすぐに片づけろと口酸っぱく言われてきたし、家具もできるだけ床との隙間ができるものを好んだ。すべては“掃除のしやすさ”のため。おかげで実家はいつでもルンバが導入できそうなほどまっさらな床がキープされている。

そんな母が、唯一積極的に床にものを置く時期がある。それが12月だ。


少し時をさかのぼる。
子どもの頃、クリスマスに親戚の家に遊びに行った時のこと。その家のリビングには天井に届きそうなほど大きなクリスマスツリーが飾られていた。

親戚は国際結婚していて、ご夫婦で英語のレシピを読み上げながら料理をしていた記憶がある。何一つ聞き取れなかったけれど、なんだかカッコイイと思った。私はそこで初めて七面鳥を食べた。

料理をごちそうになった後、親戚はクリスマスツリーの下に置かれていた箱を私に差し出した。飾りかと思っていたそれらの箱は、クリスマスプレゼントだったらしい。もらった瞬間も、包みをはがす最中も、中身が分かった時も、ずっとワクワクが止まらなかった。
「なんだかアメリカに来たみたいね」
と、母が言うので、私の中でこの日は“アメリカのクリスマスをした日”として認識された。


以来、クリスマスが近づくと母はツリーの下にプレゼントを置くようになった。“アメリカのクリスマス”が楽しかったのは、どうやら母も同じだったらしい。我が家のツリーは子どもの目線の高さ程度だったと思うが、プレゼントが置かれるだけで雰囲気が増す。私からしたら、充分“アメリカのクリスマス”だ。

その後、父は図書カードのような小さなプレゼントでツリーを飾るようになった。アルバイトをするようになって私や妹も用意するようになると、我が家のツリーは随分と賑やかになった。
あんなに床にものを置くのを嫌がる母が、この時だけはものが増えていくのを楽しそうに見つめている。なんだかちょっと笑ってしまう。


家族そろってプレゼントを開封した翌朝、私は掃除機の音で目を覚ます。すっかりキレイになったツリーの下を見て、あぁ、やっぱり母は母だなぁと思うまでが、私のクリスマスだった。

私が実家を出てからツリーは出さなくなってしまったようだが、今でも家族でプレゼントを贈り合う習慣は残っている。さて、今年は何を贈ろう。考える前に、去年何をあげたのか思い出さなければ。

(1,000文字)



<プロフィール>
書いたり描いたりするOL。カワイイお洋服と甘いお菓子と辛いラーメンが好き。ビールは苦手。




三條凛花さんが毎月制作されている『tote』への参加記事です。
12月号で一区切りとのことで、どうしても書きたくて頑張りました…!ギリギリでごめんなさい。ご査収のほどよろしくお願いします!


▼素敵な表紙の11月号!これから読みます…!

tote1冊つくるのにどれだけの労力がかかっているか……これを1年続けた凛花さんを本当に尊敬します。
仕事中心で家事はテキトーな私も、ちょっと家事がやりたくなったり、「暮らし」に目を向けようと思えるようなZINEで、毎月とても楽しみでした!

12月号も楽しみにしています!


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彩野リィ 最後までお読みいただきありがとうございました!「面白ぇ女」と思っていただけたらスキ❤️やコメント、シェアのほど、よろしくお願いします。チップは私の執筆のおとも・マウントレーニア カフェラッテにさせていただきます!🙇‍♀️