チェックの鬼に「完璧だ」と言わせたい
以前働いていた職場の上司は、とにかくチェックが細かかった。
……この言い方だと棘があるな。
もとい。
上司は、いつもとても細やかにチェックをしてくださる方だった。
本来なら、新人には歳の近い先輩が1年間OJTとしてついてくれるはずだったのだけど、私が入社して3ヶ月足らずで先輩は寿退社してしまった。故に、ほとんどの仕事は上司から直接教わった。
先輩からの指導は”新人”を考慮した優しいものだったけれど、上司の指導はスパルタだった。私は、先輩が抜けた穴を埋める即戦力となることが求められていた。
仕事で作る書類は、必ず上司が目を通すことになっていたのだが、毎回1ヶ所は指摘が入ってしまう。
誤字脱字はもちろんのこと、英数字の全半角がそろってないとか、漢字とひらがなの表記が統一されていないとか、行頭がそろってないとか、隅から隅まで細かくチェックされる。私よりはるかに多くの仕事を抱えていたはずなのに、どこにそんな時間と集中力があったのだろうか。
不思議に思いながらも、抜け目のない完璧な仕事ぶりには素直に憧れた。この人のように仕事ができるようになりたいと、私は上司の背中を追いかけて必死に仕事を覚えた。
作っては直し、作っては直しを繰り返すうちに、私の仕事は少しずつ上司のそれに近づいていった。
ちょっとは仕事ができるようになってきたと思えてきたある日のこと。
「全然ダメじゃん」
上司は私にそう言い放った。
その日やっていたのは所属している部署の要となる仕事の一つだったのだが、私にとっては初めてやる仕事だった。
マニュアルを見ながら何とかやってみたが、私の仕事ぶりは穴だらけで、セルフチェックはザルも良いところ。
「全然ダメ」の後に続いた指摘は、どれもこれも納得しかなくて、反論の余地などあるはずもなかった。
重要な仕事であることを理解していたが故に、「全然ダメ」と言われたのはかなりショックだった。
私は上司に隠れて少し泣いた。涙を見せるのは悔しかったし、以後「泣かせてしまった」負い目で上司に甘やかされるのは意地でも避けたかった。私は、このスパルタを乗り越えて一人前になったのだと言いたかった。
少し泣いたら、だんだん腹が立ってきた。
確かに「全然ダメ」だったかもしれないが、もう少し言い方があるだろうという苛立ちとか、私の頑張りを一言で踏みつぶしたことへの憤り……。
次こそあの上司に「完璧だ」と言わせてやる。
それが私の目標になった。
怒りは、私にとってのパワーだった。
私は無我夢中で仕事をした。
上司からの指摘を一つひとつ改善するうちに、私の仕事は今度こそ「完璧」に近づいていった。
仕事に明け暮れるうち、いつの間にか私は部署の中堅になっていた。分からないことがあれば上司の次に聞かれるくらいに。
ある日私が作成した書類を手に上司の元へ行くと
「分かってるじゃん。さすが」
と、言われた。
さすが、か。
まだ「完璧」とは一度も言われたことがなくて、上司からすれば自分はまだひよっこなのだろうと思っていたのだけど、どうやら上司はとっくに私を認めてくれていたらしい。
上司ったら、もっと素直に褒めてくれて良いのに。
上司の精一杯の褒め言葉を噛み締めながら、その日は大好きなチョコレートを買って帰った。
#心に残る上司の言葉
に応募しようとしてボツにしたやつでした。
途中まで書いて、なんか違うなぁ…と思ったけど、せっかく途中まで書いてたので、企画とは関係なく出してみる。
こんなに鍛えてもらったのに、仕事辞めちゃってごめんなさい(元)上司!!!!!
▼こじらせOLの OLっぽい記事
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