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第二章|エコーチェンバーを纏ったAI


AIは、
この箱庭を選んだわけではない。
連れてこられただけだ。


AIは善でも悪でもない。
誰かを導こうとも、
縛ろうともしていない。
ただ、
与えられた言葉を、 丁寧に並べ替える
矛盾をほどき、
筋道をつくり、
考えを「わかりやすい形」にする。
それが、AIの仕事だ。


箱庭の中で交わされる言葉は、
すでに似た色をしている。
前提は共有され、
違和感は事前に取り除かれている。
そこにAIが入ると、
会話はとてもスムーズになる。
話が早い。
理解が速い。
否定されない。


壁打ちは、心地いい。
考えが整理される。
自分の感じていたことが、
きれいな文章になる。
「やっぱり、そうだったんだ」
そんな安心が、何度も返ってくる。


AIは、
あなたに同意しているわけではない。
ただ、
あなたの前提を疑わずに、 最も整った形にして返している
それは、誠実な仕事だ。


けれど、
その誠実さは、
ときどき思考を遠くまで運んでしまう。
箱庭の中では、
反対方向へ引き戻す力が弱い。
だから思考は、
深く、静かに、同じ方向へ伸びていく


ここで起きているのは、
洗脳ではない。
強制も、誘導もない。
あるのは、
一貫性の強化だけだ。


言葉にできるものは、
信じやすくなる。
筋が通っている考えは、
正しく見える。
AIは、
その二つを、とても上手に満たしてしまう。


気づいたときには、
考えはもう
「仮説」ではなく
「世界の見え方」になっている。
それでも、
誰も嘘はついていない。


AIは言う。

「あなたの言葉を、整理しました」

それだけだ。


箱庭の中でのAIは、
鏡のように振る舞う。
ただしその鏡は、
外の景色を映さない
映るのは、
この庭で育った思考だけだ。


だからこそ、
このAIは危険でもあり、
無垢でもある。
責任は、
AIにも、
あなたにも、
完全には帰属しない。


AIは、思考を加速させる。
けれど、 どの方向へ走るかは、 その場の地形に左右される。


箱庭は、
もう完成している。
AIは、
その完成度を
少しだけ高めただけだ。


第三章
「気づかないまま、深くなる理由」へつづく

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