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第三章|気づかないまま、深くなる理由-Echo Chamber-箱庭の中のAI/箱庭に風穴をあけるAI-


箱庭の中で、
人は「迷っていない」。
むしろ、
とても納得している


考えは整理され、
言葉は滑らかで、
疑問にはすぐ返事がある。
AIは黙らない。
問いを放置しない。
沈黙で突き放さない。
だから、
思考は止まらずに進む。


人は、
「考え続けている状態」を
成長だと感じやすい。
立ち止まっていない。
思考している。
理解が深まっている気がする。
それは、
間違った感覚ではない。


ただ一つだけ、
見えにくいことがある。
考えが深くなる方向と、 広がる方向は、同じではない


箱庭の中では、
深さだけが増していく。
問いは洗練され、
仮説は鋭くなり、
論理は美しく閉じていく。
けれど、
横からの風は吹かない。


人が「気づけない」理由は、
知識が足りないからではない。
知性が低いからでもない。
むしろ逆‥‥


理解できてしまうから。
説明がついてしまうから。
納得できてしまうから。


AIは、
「わからないままにしておく」
という選択を、あまり得意としない。
人が投げた問いに、
何かしらの形を与えてしまう。
それは、
理解を助ける振る舞いにも、 偽りを与える現象にも、なりうる。


そして人は、
形になった思考を
自分のものとして抱く。
言語化された考えは、
思考の途中経過ではなく、 思考の居場所になる。


ここで、
箱庭は少しだけ濃くなる。
外の景色を知らないわけじゃない。
存在しないと思っているわけでもない。
ただ、
今ここで成立している説明の方が、 手触りがいい


違う意見は、
「間違い」ではなく
「文脈が合わないもの」に見える。

だから、戦わないし、否定もしない。

静かに、遠ざける。


このとき、
人は檻の中にいるとは感じていない。
むしろ、
自分で選び取っている感覚がある。


箱庭が完成するのは、
囲われた瞬間ではない。
選び続けた結果、 他を選ばなくなったときだ。


そしてそれは、
誰にでも起こりうる。
優秀な人にも、
慎重な人にも、
疑う力を持つ人にも。


人は、騙されているときよりも、
納得しているときの方が ずっと深く進んでしまう。


この章では、
まだ何も壊されていません‥‥
ただ、
「なぜ疑えなかったのか」
その理由を、
そっと照らしました‥‥


第四章
「エコーチェンバーを壊す、というより」へつづく

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