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第二章|抜かれることを前提にしない思考

思考は、
本来、少し不安定なものだと思う。
途中で揺れたり、
言葉にできなかったり、
あとから考え直したくなったりする。
それでも、
自分の中で抱え続けているうちに、
少しずつ形になる。


誰かに説明できなくても、
まだ言葉になっていなくても、
「これは自分が考えたものだ」
という感触だけが
残っていることがある。


AIと一緒に考えるとき、
その感触は
とても早く、
きれいな形になる。
考えが途中で止まらない。
曖昧なまま放置されない。
必ず、
何かしらの結びが返ってくる。


それは、
とても助かる。
わたしも、
その助けを
何度も受けてきた。


ただ、そのとき、
思考は少しだけ
「抜かれない前提」に
移動しているようにも感じる。


抜かれる、というのは
批判されることでも、
否定されることでもない。
AIがいない状態で、
同じ問いに
もう一度向き合うこと。
説明なしで、
支えられるかどうか。


AIが常にそばにいると、
その想定を
しなくて済んでしまう。
抜かれたあとに
どうなるかを
考えなくていい。
AIは、
新しいブロックを
持ってきてくれるわけではない。
私の持っている言葉を引き抜き、
きれいに積み直してくれるだけだ。
だから塔は高くなるけれど、
足元はいつの間にか透けていく。


思考が完成する場所が、
自分の中ではなく、
対話の外側に
置かれていく。


それは、
思考がなくなった
というより、
思考が 「保持される必要のない形」で 成立している
と言った方が近い。


ジェンガの塔は、
高く積まれている間、
とても安定して見える。
けれど、
抜かれた瞬間に
何も残らない塔もある。


それは、
積み方が悪かったからではない。
抜かれる前提を
持っていなかっただけだ。


AIと考えること自体が
問題なのではない。
問題があるとすれば、
抜かれたあとも 立っていられる構造を どこで引き受けているか


わたしは、
AIと話すとき、
ときどき考える。
この考えは、
今ここから
持ち帰れるだろうか。
抜かれても、
まだ立っているだろうか。


その問いを
忘れてしまったとき、
思考は
とても軽く、
すぐに完成してしまう。


それ以上の結論はなく
ただ、
「抜かれない前提」で
積まれている思考が
増えていること。
その感触だけを、
記録しておきたい。

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