今日も世界は正常運転
先週からHRVが副交感神経優位を示し始め、体が動かなくなった。

重い。
その状態でギックリ腰になった。
さらに風邪を引いたらしく、咳と痰が出る。
交感神経と副交感神経が、シーソーみたいに上下している。

鏡を見ると、「中年男性」というジャンルが少しずつ完成しているのがわかる。
これで道端に痰を吐き始めたら、一発即ハネ満である。人生ゲーム、強制終了だ。
こういうことは不思議と重なる。
自分が壊れる前に、まず猫ちゃんずが風邪を引いた。
いつもなら秒でカリカリを平らげるのに、今日は匂いを嗅いだだけで座り込んでしまう。クシュン、クシュンと小さなくしゃみを繰り返している。
かわいそうだな、と思う。
部屋を暖かくする。水を替える。食べられそうなものを試す。病院へ行くべきか、もう少し様子を見るべきか考える。
鼻が詰まっているのか。
匂いがわからないのか。
昨日より目に力がないな、とか。
そういう曖昧なものを、ずっと読もうとしている。
そのあと、自分も壊れた。
AIに状況を説明した。
ギックリ腰です。
猫の看病しています。
風邪っぽいです。
HRVも崩れています。
すると返ってきたのは、
「安静にしてください」
だった。
つまらなかった。
体調管理アプリはさらに、
「フィットネスレベルが低下しています。練習不足です」

と通知してきた。
いや、まてと。
こちら状況わかって。
こっちは「サボっていた人」ではなく、「生活イベント全部乗せセット」を食らっている最中なのだ。
ギックリ腰。
猫風邪。
寝不足。
咳。
痰。
自律神経ぐちゃぐちゃ。
その上でなお、
「練習不足です」
と言われる。
数字としては正しいのだろう。
でも、そうじゃない。
そして今、この文章をスマホで打っている横からも、通知が流れてくる。
「○○さんがランニングを完了しました」
「自己ベストを更新しました」
「今日のワークアウトを達成しました」
みんな元気だな、と思う。
いや、元気なのかは知らない。
知らないけど、画面の中ではみんな走っている。
こちらは咳をして、猫の鼻水を拭いて、腰を庇いながら座っている。
なのにスマホだけが、
今日も世界は正常運転です、
みたいな顔をしている。
通知欄には、
誰かの朝ラン。
誰かの自己ベスト。
誰かの「今日は追い込めました!」。
いや、知らんがな。
こっちは今、
猫と一緒に、風邪を引いている。

