カロニア群島神話録『パックルルルカス神話』4章⑥ニセポセ族の決意
これは例外的にショグワ・ニ族ではなくニセポセ族の語り手達に聞いた話をまとめたものである
私の父のお祖父さんのそのお祖父さんのお祖父さんがこんな話を聞いたんだ…
……
私たちは、ニセポセ大地と森、山に生きるもの。
パックルルのもとから巣立った私たちの最初の父母はニーショグニー平原から森へ入っていった。
ショグルーの大地を足がかりに佇む、ボリボリの統べる森へ踏み入れた時、
私達の最初の父母は森のざわめき、大地の鼓動、山々の息吹に心を囚われた。
最初の父は言った
「ここで私達は根を張ろう。木々の囁きに耳を傾ける、獣の息づかいを感じながら」
最初の母も言った
「たくさんの子たちを枝葉のように広げましょう。大地に包まれ、山に腰掛けるように」
最初の父母はお互いに続ける
「パックルルに託されたこのサモ(サモイモ)を、ハーバ、ヤーバの導きで育てよう」
「大地と森の恵みと共に生きて生きましょう」
「たとえ、波の音が遠のいても」
「たとえ、海の恵みが遠のいても」私達の最初の父母はその言葉の通り、大地に根を下ろし、土を耕し、森を愛した。私達はニセポセ。
森と大地に包まれるもの
カロニア群島神話録:解説
山と森に生きる、ニセポセ族の創世譚です。
他の部族に比べて「根を張る」という静かな覚悟が強く感じられる語りで、彼らはニーショグニー平原の開けた大地を離れ、ショグルーの大地とヴォリヴォリの深い森、山々の領域を選びました。
主にハーバヤーバの恵みを頼りに農耕を行い、時にはホノノホの火を借りて狩りも行ったといいます。
「たとえ波の音が遠のいても」という言葉には、海の豊かさを諦め、森と山の厳しさと恵みの両方を引き受ける決意が込められています。
ニセポセ族は4大部族の中でも特に「大地に根を張る者」として、その生活は森の静けさと山の試練の中で育まれた忍耐強さ、そして農耕神ハーバヤーバへの深い信仰に支えられています。
この語りは、単なる部族の始まりではなく、 「選ばなかった道」をも受け入れて生きる覚悟を語っているようにも感じます。
根津曽大学
プセポリネシア研究室
教授 畑里増郁
