コラム:カロニア群島神話雑考①神名の「ルー」について
カロニア群島神話において「ルー」が付く神が五柱いる。昼と夜、時間を司るルールー、ソソルー。
陸、海、空それぞれを司るグゥワルー、ショグルー、テーテルーである
この「ルー」という言葉には神格化の意味があるようだ
カロニアの言葉でグゥワは大地、ショグは海、海原。テーテには高い所などと意味がありそれにルーを続け神格化しているようである。
また他の神々も日常の祈りでは省略されることもあるが、 祭や重要な祈りの場面や正式な呼びかけでは必ず「ルー」が付く。ルー・トハンブリー、ルー・ピ、ルー・パックルル等である
私は長年の聞き取り調査を通じて、この「ルー」について一つの考えに至った。「ルー」は、日本神話におけるワタツミやオオヤマヅミの「み」やイカヅチ、オロチの「ち」に極めて近い役割を持つ。
その存在に「ルー」を付けることで、ただの自然現象や精霊が、 畏るべき神として昇格する。日本の祝詞でいうところの「畏み畏み」に近いものと考えている
これは島民が「この存在は畏るべきものだ」と自らに言い聞かせ、
同時に親しみと敬意の両方を込める、優しい呼びかけなのである。ただし、例外が一つある。
それは最高神ムーターである。
ムーターの名前そのものがすでに究極的に神聖であるため、 「ルー」を付ける必要がない——むしろ付けることは畏れ多いとされている。「ルー」という一音は、カロニアの人々が持つアニミズムの核心を最も簡潔に表していると思う。
自然のすべてに霊が宿る世界で「ただのもの」から「神」へと昇格させるための静かで力強い言語的儀式なのだ。
根津曽大学
プセポリネシア研究室 教授 畑里増郁
