リハビリはどこまで回復する?理学療法士が正直に解説します
今回は「リハビリの回復」について書いてみました。「どこまで回復するの?」という質問は、現場でもよく聞かれる、でも一番答えにくい質問でもあります。今回は、理学療法士として正直なところをお話しします。
はじめに
ご家族や患者さんから、
「リハビリって、どこまで回復するんですか?」 「元通りになりますか?」 「いつまで続ければいいんですか?」
という質問をいただくことがよくあります。
これは本当に切実な質問だと思いますし、自分も毎回、誠実に答えたいと思っています。
ただ正直に言うと、
「ここまで回復します」と断言することは、ほとんどの場合できません。
それは、ごまかしているわけでも、はぐらかしているわけでもなく、回復には本当に多くの要素が関わっているからです。
今回はその「リハビリの回復」について、理学療法士として現場で感じていることをまとめます。
結論:回復には3つのパターンがある
最初に結論からお話しします。
リハビリでの回復は、大きく分けると次の3パターンに分かれます。
① ほぼ元通りに戻るパターン
② 一定のところまで回復して、そこで安定するパターン
③ 進行を遅らせる・現状を維持することが目的のパターン
「リハビリ=元通りに戻すもの」というイメージを持たれることが多いですが、実際には①だけがリハビリではありません。
②や③も、立派なリハビリの目的です。
ここを知っているかどうかで、リハビリへの向き合い方がかなり変わってきます。
① ほぼ元通りに戻るパターン
例えば、
軽度の捻挫や打撲
一部の骨折(適切な治療を受けたもの)
軽度の腰痛・肩こり
術後の早期回復
など。
これらは、適切なリハビリと時間をかければ、受傷前とほぼ同じレベルまで戻ることが多いです。
ただし注意点として、
受傷の程度
手術の有無と内容
年齢
元々の体力
リハビリの開始時期
によって、戻り方には個人差があります。
「同じ骨折」でも、20代の方と80代の方では、回復のスピードも到達点も変わります。
② 一定のところまで回復して、そこで安定するパターン
ここが一番多いです。
例えば、
脳卒中後の麻痺
脊髄損傷
重度の骨折後
心臓・呼吸器疾患後
など、神経や臓器にダメージが残るケースでは、「ある程度まで回復してから、そこで安定する」という経過をたどることが多いです。
特に脳卒中の場合、よく言われるのが、
「発症から6ヶ月までが回復の伸びる時期」
という考え方です。
これは「6ヶ月を過ぎたら何もしなくていい」という意味ではなく、
神経の回復が一番起きやすいのが6ヶ月以内
それ以降も、機能維持と生活動作の獲得は十分可能
という意味です。
実際の現場でも、6ヶ月を過ぎてから歩けるようになる方、自分で生活ができるようになる方はたくさんいます。
ここで大事なのは、
「機能が元通りに戻ること」と「生活ができるようになること」は別物
という視点です。
例えば、麻痺が完全には治らなくても、
装具を使って歩けるようになる
片手で食事ができるようになる
一人でトイレに行けるようになる
これも立派な「回復」です。
リハビリでは、機能の改善と同じくらい、**「できる動作を増やすこと」**を重視します。
③ 進行を遅らせる・現状を維持することが目的のパターン
これは見落とされがちですが、とても大切な目的です。
例えば、
パーキンソン病
進行性の神経疾患
認知症
重度の変形性関節症(手術ができない場合)
加齢に伴う体力低下
など、病気そのものが進行性であったり、加齢が大きく関わるケースでは、
「悪くなるスピードを遅らせる」
「今できていることを維持する」
ことが、リハビリの主な目的になります。
「現状維持」と聞くと、何もしていないように思われるかもしれませんが、実際にはまったく逆です。
何もしなければ進行が早まる病気・状態に対して、リハビリで進行を遅らせている時点で、それは大きな効果です。
特に高齢者の場合、
1週間の安静で筋力は10〜15%低下する
寝たきり期間が長いほど、回復にかかる時間も伸びる
という事実があります。
つまり、「動き続けること」自体が、最大のリハビリになっているケースは本当に多いです。
回復に影響する5つの要素
「どこまで回復するか」は、次の要素によって大きく変わります。
① 病気・ケガの種類と程度 脳卒中なのか、骨折なのか、進行性疾患なのか。同じ病名でも、損傷部位や程度によって経過は変わります。
② 年齢・元々の体力
回復の土台になる部分です。同じ手術を受けても、元々運動習慣があった方と、ほとんど動いていなかった方では、戻り方がかなり違います。
③ リハビリの開始時期
発症・受傷からどのタイミングでリハビリを始めたか。一般的に、早ければ早いほど回復しやすいです。
④ 本人の意欲・取り組み方
ここはかなり大きいです。リハビリは「やってもらうもの」ではなく「自分でやるもの」という意識があるかどうかで、結果が変わります。
⑤ 環境・家族のサポート
自宅環境が整っているか、家族の理解があるか、退院後も動ける環境があるか。生活全体が回復に影響します。
これら5つが組み合わさって、最終的な回復の到達点が決まります。
なので、「同じ病気だから同じように回復する」ということは、ほぼありません。
「回復の停滞期」は必ず来る
リハビリを続けていると、必ずどこかで停滞期が来ます。
「最初は順調に良くなっていたのに、最近変化がない」
「同じことの繰り返しに感じる」
「本人のモチベーションが下がっている」
これは、ほぼ全員に起こります。
ただし、停滞期=もう回復しない、ではありません。
停滞期は、
体が現在の状態に慣れている時期
次のステップに進む前の準備期間
負荷や内容を見直すタイミング
であることが多いです。
この時期にリハビリをやめてしまうと、そこから先の回復はかなり難しくなります。
逆に、停滞期を越えると、また少しずつ変化が出てくることも多いです。
「リハビリの卒業」をどう考えるか
「リハビリはいつまで続けるべきか」という質問もよくいただきます。
これも一概には言えませんが、目安としては、
機能の改善が頭打ちになった
生活で必要な動作ができるようになった
自主練習で維持できる状態になった
このあたりが「次のステップに進むタイミング」になります。
ただし、リハビリを完全にやめる、というよりは、
病院・施設でのリハビリから卒業して、
自宅での自主練習・運動習慣に切り替える
という考え方が現実的です。
「リハビリの卒業」は、「運動をやめる」ことではありません。
特に高齢者の場合、リハビリをやめた途端に体力が落ちる方は本当に多いです。
なので個人的には、 「リハビリの卒業=運動の生活化」 という捉え方をおすすめしています。
家族にお願いしたいこと
ここは少しお願いに近いのですが、ご家族の関わり方は、患者さんの回復にかなり大きく影響します。
特に大事だと感じるのは、
① 過介助にならないようにする
「できることまで手伝う」のは、回復を遅らせる原因になります。少し時間がかかっても、本人にやってもらうことが大事です。
② 焦らない、比べない
「あの人はもう歩いてるのに」「もっと早く回復するはず」と比較してしまうと、本人の意欲が下がります。回復のペースは人それぞれです。
③ 小さな変化に気づく
「昨日より少し動きが良くなった」「表情が明るくなった」など、小さな変化を見つけて伝えてあげることが、本人の励みになります。
「リハビリは本人と専門職だけのもの」ではなく、ご家族も含めたチーム全員で進めるもの、という感覚を持ってもらえると嬉しいです。
まとめ
「リハビリはどこまで回復するか」について、お話ししてきました。
整理すると、
回復には「元通り」「一定で安定」「現状維持」の3パターンがある
元通りに戻すことだけがリハビリではない
機能の回復と、生活動作ができることは別物
回復には病気・年齢・開始時期・意欲・環境が関わる
停滞期は必ず来るが、続けることが大事
リハビリの卒業=運動の生活化
これが、現場で感じている正直なところです。
「どこまで回復しますか?」という質問に、断言で答えることはできません。
ただ、本人とご家族と専門職が、
今の状態を正しく理解して
現実的な目標を共有して
小さな積み重ねを続けていく
ことができれば、その人にとっての最善の回復には、必ず近づけると思っています。
このnoteでは、リハビリ・介護予防・医療サービスについて、現場目線でわかりやすく発信しています。ご家族のリハビリや介護で気になることがあれば、他の記事も読んでみてもらえると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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