見出し画像

第15章 ママとベイビーちゃんの戦い



その日から、ママとベイビーちゃんの戦いが始まった。

第一ラウンド。


ベイビーちゃんは、まだ自分でミルクを飲むことができなかった。

そのため、鼻から管を通してミルクを飲むことになっていた。

そのミルクは、ママが絞った母乳だった。

母乳のほうが発育が早いと言われ、ママは毎日、必死に母乳を絞ることになった。

見た目だけなら、一リットルくらい出そうなおっぱいから、ママは一生懸命に母乳を絞り出そうとした。

ところが、出てきたのはわずか二十cc。

どれだけ頑張っても二十cc。

見た目だけではダメだった。

しばらくすると、看護師さんがやって来て、母乳マッサージが始まった。



これがママの試練、第二ラウンド。

痛いのなんのって、まるで出産パート2のようなものだった。

マッサージをされるたびに、飛び上がるほど痛かった。


「やめて! 助けて!」

それでも、どんなに頑張っても、やっぱり二十ccだった。

やがて看護師さんも諦め、小さな冷蔵庫を見せてくれた。

「この冷蔵庫の中には、ミルクがたくさん入っていますから」

看護師さんが扉を開けると、そこには粉ミルクで作ったミルクが、たくさん用意されていた。

今までやってきた努力は何だったの?

そう思ったけれど、仕方がない。

私はママになったのだ。

しばらくすると、看護師さんが私を呼びに来た。

ベイビーちゃんに触れるという、嬉しい知らせだった。

私は保育器の窓から手を入れ、ベイビーちゃんの小さな、小さな手に触れた。

するとベイビーちゃんも、その小さな手で、私の指を力いっぱい握ってくれたのだった。

私のベイビーちゃんは、私が絶対安静の時に食べすぎていたおかげもあって、無事に体重が二千五百グラムを超え、保育器から脱出した。

退院のめどは、まだ立っていなかった。

それでも、お母さんが病院内にあるベイビーちゃん用のお風呂で、体を洗ってもいいことになった。

ある日のこと。

その日は、ベイビーちゃんの入浴日だった。

いつものようにベイビーちゃんのところへ行き、私は看護師さんに教わったとおり、丁寧に体を洗った。

「早く大きくなれ」

そう声をかけながら、丁寧に、丁寧に洗った。

入浴を終え、ベイビーちゃんを元のベビーベッドへ戻そうとした、その時だった。

何気なく横を見ると、隣にいたベイビーちゃんの名札に、なぜか私の名前が書いてあった。

やってしまった。

私は間違えて、自分のベイビーちゃんではない、別のベイビーちゃんを入浴させてしまったのだった。

だって、顔がそっくりだったんだもん。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集