6年前、モノクロに見えた水戸の街。
――水戸の街なんて何もないと色眼鏡をかけた僕の目には、映るすべてがモノクロに見えた。
人生は物語。
毎月最終日には、誰の目を気にすることをせず、自分の過去についてつらつらと語っている。今日は4月30日。今月も記憶の旅に出かけよう。
今日は「6年前、モノクロに見えた水戸の街。」というテーマで話していく。
水戸の街に移り住んで、かれこれ6年になる。小学生が入学して卒業するだけの時間を、この街で過ごしていると思うと感慨深いものがある。
東京で生まれ育ち、18年間ビルに挟まれた狭い空の下で暮らしていた僕にとって、初めて水戸の空を仰いだときの解放感は特別で、何故か今でもその感覚を覚えている。
ただ、心が揺れ動いたのはそれくらいで、最初はなんでこんな地に来てしまったんだと、自分の運命を嘆いたし、水戸の街なんて何もないと色眼鏡をかけた僕の目には、映るすべてがモノクロに見えた。
理由は大きく2つある。
1つ目の理由は、「僕が水戸に来ることになったのは、大学受験に失敗したから」。
僕は元々東京の大学を受験し、進学する予定だった。中学2年生のときから第一志望校に掲げていた大学があったし、そこに進学できるように日々勉強していた。一時期は模試でA判定を取れるくらい頑張っていた。
センター試験を受け、残すは二次試験となった。正直センター試験の結果は思うよりよくなかったのだけれど、そこであきらめるなんてことあってはならない。二次試験までの1カ月、僕は対策を続けた。
その果て、僕は二次試験の試験日を間違えた。
明日だと思っていた試験日がその日だった。慌てて家から飛び出したけれど、もう間に合わなかった。大学に電話をかけたけれど受け入れられるわけがなかった。家に帰って、僕はすぐに寝室へ転がり込んだ。
泣き疲れて眠るという経験は、人生で初めてだった。
幸いなことに保険で茨城大学の後期日程に出願していた。無事にそこに合格できたから大学生になれたものの、当時の僕は自分のせいとはいえ望まない進学だったし、初めての水戸、初めてのひとり暮らしということもあり、少なからず不安のなかにいた。
当時はコロナ真っ盛り。みんなマスクをして、生き苦しい日々を繰り返していた。入学式も、コンパも、学園祭も、何もなかった。そう、コロナが、水戸の街がモノクロに見えた2つ目の理由だった。
大学1年生のときに付き合っていた人から、「小説の方が向いているよ」と勧められて、馬鹿真面目にそれを信じた冬の始まり、ちゃんと小説を書いて、少なくとも自称作家にはなろうと意気込んだことを覚えている。
それからいろいろあったけれど、20歳の最後の日に、成人の日を舞台にした小説『Message』をAmazonで出版することができた。本を出すだけじゃ誰の目にも触れられないと思って、自分で届けることにした。
大学の友達、小中高の旧友、お世話になった先生、飲みの席で知り合った人……たくさんの人に手売りをするうちに、徐々に水戸のプレイヤーとつながるようになっていって、街を舞台に仕事をする面白さのかけらを知ることになった。それが大学4年生が始まった頃である。
当時大学近くのシェアハウスによく通うようになり、水戸の街で開かれるイベントにも顔を出すようになった。その延長線上で知り合ったのが、今僕が仕事をしている会社の社長だった。それがきっかけで、大学卒業後も東京に帰らず、水戸を拠点に仕事をしていくことになったのだ。
今、僕は木の家ゲストハウスという宿泊施設のマネージャーをしている。水戸の街に来る様々なゲストを日々迎え入れている。
そして、謎解き制作団体「Mito Escape」の代表として、水戸の街を舞台にした周遊型の謎解きイベントの運営をしている。つい昨日、無事に販売開始となった。
その名も、「水戸まちなか謎巡り『君色オセロ』」。
水戸発祥の世界的ゲーム「オセロ」を題材にした謎解きと物語を楽しめる体験型のイベントゲームだ。概要は以下の通りである。
●イベント概要
場所:水戸駅、南町、泉町
開催時期: 2026年4月29日(水)〜11月29日(日)
所要時間: 約1.5〜2時間(制限時間なし)
キット販売額: 1,500円(税込)
○販売場所
①川又書店 エクセル店
②メガネのクロサワ水戸本店
③水戸芸術館
※事前オンライン販売もございます。
●クレジット
主催:謎解き制作団体「Mito Escape」
水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会
協力:株式会社メガハウス
後援:水戸市
水戸観光コンベンション協会
一般社団法人日本オセロ連盟
6年前、モノクロに見えた水戸の街で、僕は今、水戸の街を訪れた人がそれぞれの「色」を見つけられるような体験を届ける仕事をしている。
僕が6年間で見た街並みを、この街が僕にくれた出逢いや夢を、水戸の歴史や文化を詰め込んだ、そんなコンテンツになっていると信じている。
街を歩けば、誰かに会える。
誰かに会えるから、その街がもっと好きになる。
そんなきっかけづくりを、また明日からやっていこうと思う。
20260430 横山黎
▼「水戸まちなか謎巡り『君色オセロ』」の詳細はこちらから
