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「なぜ社外取締役を増やしても日本企業は変わらないのか」——ウィリアムソンが解く、コーポレートガバナンス改革の本質


はじめに

2023年3月、東京証券取引所はPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対して「改善計画の開示と実行」を求める要請を出した。対象企業は上場プライム市場の40%を超えていた。

社外取締役を増やせ。株主還元を強化せよ。ROEを改善しろ。

それから2年が経って、数字は動いた。社外取締役の割合は上がり、自社株買いは増え、東証の平均PBRも2倍台に乗った。しかし「本当に変わったのか」という問いへの答えは、投資家の間でも割れたままだ。

形式は変わった。でも何かが足りない。その「何か」を、1985年に出版された1冊の経済学書が説明している。

オリバー・ウィリアムソン『資本主義の経済制度(The Economic Institutions of Capitalism)』。師コースの取引費用理論を受け継ぎ、「企業はどう統治されるべきか」を初めて体系化した書物だ。


ガバナンスの経済学とは何か

ウィリアムソンの出発点は、コースが発見した概念「取引費用」だ。市場を通じて取引するには、探索・交渉・契約・監視のコストがかかる。コースはそのコストが高い場所に企業が生まれると言った。

ウィリアムソンはここから先を問うた。「企業の内部では、どんな構造で人・資産・意思決定が組み合わさるべきか」。つまり「ガバナンスとは何のためにあるのか」だ。

彼が定義したのは、ガバナンスは取引の特性によって決まるということだ。

鍵となる概念は「資産特殊性(Asset Specificity)」。特定の取引・関係にしか使えない資産のことを指す。設備だけではない。人間が積み上げたノウハウ、特定の取引先との信頼関係、独自の製造プロセス、ブランド——これらはすべて「その文脈からはずれると価値が下がる」という性質を持つ専用資産だ。


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