『UFOキャッチャー』−アタイに任せな−
ある雨の週末。
息子がUFOキャッチャーのワンピースフィギアが欲しいと言うので、ショッピングモールに併設しているゲームセンターへ家族3人で行くことになった。
取れそうな台を物色していると、箱に入った〝トラガルファー・ロー″が手前に横たわっているのを見つけた。
早速、トライしてみるのだが箱は少ししか動かず、淡い期待を持った一発ツモとはならない。
何でもアームの置く位置にコツがあるらしく片方を奥の箱スレスレにとの事だが、これがなかなか難しい。
「取れないかなー」と子供
「わかんねー」と私
・・・・・
「私の出番だな!」と妻の里香
出た、出た、里香の墓穴掘るパターン。
いつもろくなことにならないのだから辞めろと思うのだけど、このセリフが出るともう止まらない。
腕をまくり、おでこにハチマキを巻く勢いでフガフガと鼻息が荒い。
レバーを握り、ボタンを押す。
「うわっ」
「うわっ」
「うそっ!」
奇跡的に持ち上がったトラファルガー・ローが取出口へ吸い込まれた。
「やった!」
「いや、えっ ええーー」
ドヤ顔をして喜ぶ妻だったが一瞬でフリーズした。取出口から下まで落ちる筈が途中で引っ掛かったのだ。
しばらくの沈黙後「でも、これ取れたのと一緒らしい」息子がアクリル板に貼られた説明書きを指差し説明した。
「すげぇーじゃん、店員さん呼びな」と里香を褒めると、「まあねーー」と上機嫌、そして周りをキョロキョロし始めた。
里香の視線が左を向いて止まると、10メートルくらい離れた場所でこちらを見ていた黄色いシャカシャカのジャンパーを着たおじさんを見つけ、手招きし始めた。
おじさんは、顔を前に出しこちらを見ている。里香の手招きは大きくそして速くなっていった。
「すいませーん、来てもらっていいですかー!」里香は手招きで来ないおじさんに痺れを切らし大きい声で呼んだ。
おじさんは目を見開き、ゆっくりこちらに向かってくる。
「呼んでるんだから早く来れないものかねー」と里香がつぶやいた。
「これ途中で引っ掛かかったけど貰えますよね?」
「あー、貰えるよきっと」おじさんが言う。
「じゃあ取ってくださいよ」里香が言う。
「それなら店員さん呼ぶといいよ」
「ええーーー!」
「えっえっ、ごめんなさい」
「いいよーいいよー、ハハッ 取れて良かったね」おじさんは引き攣った笑顔のまま、狭い歩幅の割に早歩きでスタスタと去っていった。
「やっぱりお前、やるよなー」
「だって黄色いジャンバーって店員じゃん」"マイ解釈"を口にし、肩に風を切って出口へ歩いていく彼女に、あなたが歩幅狭く早歩きで退場しなさいと突っ込みたくなった。
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(1100字)
