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サイキッカー

大きな声では言えませんが、
ここだけの話です。

私、ある能力を持っていまして
扱いに困っているのです。

あっ!他言は一切、無用ですよ。


能力というのは

まず、どんなにシンプルなラインも
複雑化させるというものがあります。

日常生活においてそれが表れるのは

たとえば、
訪れたことのない目的地を目指すとき。

一本道だから
絶対に大丈夫だと思うでしょう。

ところが

目的地を通り過ぎて横道に入る
という特殊なインスティンクトが
発動するんですよ。



ショッピングモールでは、
お店のゲートを通り過ぎるその瞬間

大脳辺縁系に埋め込まれた
記憶抹消装置が作動する…


(あたりを見回して)
しっ。誰にも聞かれていないようですね、
続けましょう。


装置が発動すると、恐ろしいことに
おのれの向うべき方向が定かでなくなるのです。

これはおそらく

魂を磨くために自分自身に負荷をかけようと
ハイヤーセルフと交わした約束か

はたまた、

多くの民衆を路頭に迷わせた過去世の経験から
自分自身に呪いをかけたカルマか

まあ、そんなところでしょう。


装置の作用はなにしろ強力ですよ。

朦朧とした意識のなかで
第六感七感八感を研ぎ澄ませ、歩き出します。

すると、意図する方向とは真逆に向かうんです
寸分の狂いなく。

ものすごい精度ですよ…
我ながら恐ろしいほどの能力です。


こうなったら最後
どんな地図も、ただの紙切れと化してしまう。

地図がだめならスマホがあるですって。

グーグルマップを
自在に高速回転させ

ゼロ磁場で我を失った方位磁石ばりに
スマホを混乱させることくらい
お手のものですからね。


さらに驚くべきことに、

この能力を駆使すると
建造物の構造を変えることもできるんです。

たとえば駅の出口。
ただの出口ではなくなります…

まず、どうしたって出られなくなる。
出たところでどこに向かうべきかなど、
わかるはずもない。

さながら決死の脱出ゲームです。

今まで、何人もの尊い命が失われたことか…



いったいこの能力、
どう扱えばよいのでしょうか。

今の話は、くれぐれも内密にお願いしますね。




#方向音痴

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