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スマホも車もAIも、チップがなければ動かない ラピダスに2兆4000億円の税金が投じられてる。どういうことなの? 前編

2026年4月、政府が富士通と日本IBMの研究開å発に合計760億円の支援を決めた。ラピダスという会社が将来作る半導体を、あらかじめ買ってくれる顧客を育てるための投資だ。

なぜそこまでするのか。答えを整理するには、2021年に起きたことから話す必要がある。

車を注文したら「半年待ちです」と言われた。PS5はいつまで経っても定価で買えない。洗濯機が「入荷未定」になった。あのとき何が起きていたのか——今になって「半導体不足だったから」と答えられる人は増えたかもしれない。でも、なぜ半導体が足りなくなったのか。そして日本がどう関係しているのかを話せる人は、まだ少ない。


半導体が足りなくなると、モノが消える。

モモ「店長、ちょっと聞いていいですか。さっきお客さんと話してたんですけど」

レイ「何?」

モモ「息子さんの車がまだ届かないって言ってて。去年の秋に注文したらしくて」

レイ「半導体不足の影響がまだ続いてるのね。もしくは余波」

モモ「半導体? チップのことですよね。それって車にも入ってるんですか?」

レイ「今の車はエンジン制御・ブレーキ・カーナビ・エアコン・ウィンドウ、ぜんぶ半導体が動かしてる。1台に200個以上使われてることもあるのよ」

モモ「え〜! そんなに?」

レイ「2021年にその半導体が世界的に足りなくなって、車の工場が止まった。世界全体で770万台の生産が失われてる。日本の上場企業でも115社がマイナスの影響を受けてて、そのうち81社が生産調整に入ってる」

モモ「ものすごい数だ」

レイ「車だけじゃないわよ。PS5も同じよ」

モモ「あ! そういえばPS5、全然買えなかったじゃないですか。あれも半導体?」

レイ「ソニーが『半導体の供給制約』を理由に販売見通しを下方修正してる。当時は世界中でチップの取り合いだったのよ」

モモ「じゃあ私がPS5を定価で買えなかったのって、日本のせい?」

レイ「……世界の問題ね。日本だけのせいではないわよ」

モモ「え、ちょっとだけ日本のせい?」

レイ「……そこは複雑。でも日本が関係してないわけでもない」


昔の日本は、半導体大国だった。

モモ「でも日本って、昔は半導体で強かったんじゃないですか?」

レイ「そう。1980年代から90年頃にかけて、日本は世界の半導体シェアの約50%を持ってたのよ」

モモ「半分ですか。すごくないですか」

レイ「今は10%以下」

モモ「え〜! なんで!?」

レイ「理由はいくつかあるんだけど、一番大きいのは業界の構造が変わったのに乗り遅れたこと」

モモ「業界の構造?」

レイ「昔は一社で設計も製造も全部やる形が当たり前だったの。ところが90年代以降、世界は『設計する会社』と『作るだけの会社』に分かれていった。台湾のTSMCみたいに、他の会社から頼まれた半導体を製造することだけに特化する工場が生まれた」

モモ「なんか……会社が合併しまくってたのに気づいたら消えてたやつみたいな感じがしますね」

レイ「……淘汰に近い、の方が正確だけど。感覚は合ってるわよ」

モモ「え、ほんとに?」

レイ「流れを見失ったまま時間が経った、という意味ではね。日本は『作る力』はあっても、世界の分業の波に乗り切れなかった」


半導体の世界地図が、変わった。

レイ「ちなみに世界の半導体市場自体は、当時の約5兆円から今は約50兆円に拡大してる。パイが10倍になったのに、日本のシェアは5分の1以下になった」

モモ「えっ、そっちのほうがやばくないですか? 市場が大きくなってるのに取り分が減ってる?」

レイ「そう。日本は市場から置いていかれてる。その危機感から生まれたのが、ラピダスという会社なのよ」


ラピダス、という名前を聞いたことがありますか。

モモ「ラピダス? なんですかそれ」

レイ「2022年に設立した半導体メーカーよ。トヨタ・ソニー・NTT・NEC・ソフトバンク・キオクシア・デンソー・三菱UFJ銀行が出資してる」

モモ「日本の有名な会社ばっかり揃ってますね」

レイ「目標は、最先端の2nm世代の半導体を日本で作ること。北海道の千歳に工場を建設中で、2027年の量産開始を目指してる」

モモ「2nm……。ナノメートルって何ミリ?」

レイ「1ナノメートルは1ミリの100万分の1ね」

モモ「……やばい話してますよね?」

レイ「髪の毛1本の太さの5万分の1くらいのスケールよ」

モモ「見えてるんですか?」

レイ「見えない。電子顕微鏡でも確認が難しいレベル」

モモ「えっ、そんなもの作れるんですか?」

レイ「IBMと組んで、IBMの2nm技術を日本に持ってくる形で進めてる。2025年にはパイロットラインが動いて、同年7月には2nmトランジスタの試作にも成功してる。公的支援も累計で2兆4000億円を超えてるのよ」

モモ「に、2兆……」

レイ「国が全力でバックアップしてるプロジェクトなのよ」


作れても、買う会社がいないと工場は動かない。

モモ「じゃあラピダスが頑張れば、半導体の問題って解決するんですか?」

レイ「そう簡単じゃないのよ。ここが今回の核心で」

モモ「どういうことですか?」

レイ「工場を作っても、その工場に半導体を注文してくれる会社がいないと動かないの。TSMCもAppleとかAMDとかの大口顧客がいるから回ってる」

モモ「ラピダスには顧客がいないってこと?」

レイ「今の段階ではまだ確定してないわ。2027年に量産できると仮定しても、誰がそのチップを買うか、まだはっきりしてない」

モモ「それって……先に作った方が損するやつじゃないですか」

レイ「ニワトリと卵の問題ね。工場がないと顧客もつかない。顧客がいないと工場に投資できない」

モモ「で、どうするんですか?」

レイ「だから今回、政府が動いた。富士通と日本IBMの研究開発を支援して、ラピダスの2nm半導体を使う前提でチップを設計させることにしたのよ」

モモ「先払いみたいなこと?」

レイ「……まあ、合ってるわね。将来の顧客を今から育てる、という発想」

モモ「支援の額ってどのくらいですか?」

レイ「富士通が最大585億円、日本IBMが最大175億円。NEDOという国の研究開発機関が支援する研究費ね」

モモ「それって国のお金じゃないですか」

レイ「そう。製造だけじゃなく、需要側も育てないと意味がないって判断が出てきたのよ」

モモ「それって……うまくいくんですか?」

レイ「それが複雑でね。続きはまた話すわよ」

モモ「えっ、続き気になる。絶対聞きます」


💬 知ってると一目置かれる一言

モモ「店長、一個だけ教えてください。この話を人にするとき、どの言葉を使えばいいですか?」

レイ「ファウンドリ」

モモ「ファウンドリ?」

レイ「半導体の製造だけに特化した工場のこと。自分では設計しない。他の会社から依頼されたものを作る。TSMCがその代表例で、ラピダスが目指してるのもそのモデルよ」

モモ「日本は昔はそれじゃなかったんですか?」

レイ「昔は設計も製造も一社でやってた。でも世界がその二つを分けた。その流れに乗り遅れたのが凋落の本質ね。ファウンドリって言葉を知ってると、なぜ今さらラピダスが必要なのかが一言で説明できるわよ」

モモ「……なんか、遅れた理由がわかった感じがします」

レイ「使えるでしょ」

後編はこちら



モモ「読んでくれてありがとうございます! ラピダスってニュースで見るたびに『なんか大事そう』しかわかってなかったやつが、やっと整理できた気がします。もし『そういうことか』ってなったら、スキ❤️ を押してもらえると嬉しいです。あと、フォローしてもらえると続きもお届けできます。また次回!」


#時事解説 #半導体 #ラピダス #経済安全保障 #AI #ニュース解説 #テクノロジー

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