4/1から2,798品目が値上がり、月7,400円の負担増。「なんで全部一気に?」を説明できる人は少ない
4月1日。マヨネーズが値上がりした。カップ麺も。電気代の補助がなくなった。
ガソリンも、固定電話も、年金保険料も。
どれか一つなら「まあ仕方ない」で流せた。でも今日、全部が同時に来た。
4人家族の年間負担増、約8.9万円——その数字の裏側を整理しておく。
今日から何かが変わった、という感覚。

モモ「店長、さっきお会計終わった田中さんが、『今日からまた値上がりか』ってため息ついてましたよ」
レイ「まあ、今日から多いからね」
モモ「毎月言ってる気がするんですけど、今月はどのくらいなんですか?」
レイ「帝国データバンクの調査で、4月だけで2,798品目。主要食品メーカー195社の話」
モモ「2,798……スーパーの棚、ぜんぶじゃないですか?」
レイ「さすがに全部じゃないわよ。普通のスーパーって3万〜5万品目くらいあるの」
モモ「えっそんなに? じゃあ2,798ってどのくらいの感覚で?」
レイ「体感で言うとね、今月スーパー行ったとき、レジの合計見て『あ、また上がってる』って気づく場面が増える、その密度よ」
モモ「あ、さっきの田中さんのため息ってそれですよね」
レイ「食品だけじゃないのよ。電気代の補助が3月で終わったの——」
レイ「……あ、この店の電気代も、当然上がるわね」
モモ「え、今気づいたんですか」
レイ「……いつも構造から考えてるから、自分が当事者なのを忘れることがあるのよ」
モモ「大丈夫です?」
レイ「大丈夫よ。話を戻すと、東京電力だと月260kWhくらい使う家庭で、今月から500〜800円ほど上がる。年換算で1万円ね」
何が、いくら上がったのか。
モモ「食費と電気代だけでも十分きついのに、他にも何かあるんですか?」
レイ「NTTの固定電話の基本料が上がった。国民年金の保険料が月410円上がった。たばこも増税」
モモ「全部今日から?」
レイ「全部今日からよ」
モモ「……なんで足並みそろえてくるんですか」
レイ「会計年度・契約更新・税制改正、全部4月に集中する社会システムがあるから。必然的にこうなるの」
モモ「うちの親が固定電話持ってるんですよね。関係ない話だと思ってた」
レイ「住宅用なら月220円の値上げよ。年で2,640円」
全部まとめると、月7,400円。
モモ「全部合わせると家計にどのくらい来るんですか」
レイ「第一生命経済研究所の試算で、4人家族で年間約8.9万円の負担増」
モモ「え〜! 月に直すと?」
レイ「約7,400円」
モモ「え、7,400円! バイト1日分くらいなんですけど」
レイ「ただ、全員が全部の値上げを受けるわけじゃないわ。たばこ吸わない人は関係ないし、固定電話を解約済みの人も。これは上限のイメージね」
モモ「でも電気代と食費はほぼ全員に来ますよね」
レイ「……まあ、そういうことよ」
モモ「だよなあ……で、店長。なんで毎年毎年こうなるんですか。去年も一昨年も値上がりしてた気がして」
レイ「そこが肝なのよ。なんで上がるかの構造、説明できる?」
モモ「……円安?」
レイ「半分は合ってるわね」
なぜ「全部一気に」上がるのか。
レイ「値上げの理由、同じ調査に出てるの。原材料高が99.8%、物流費が72.9%、人件費が66%、エネルギー費が60%、円安が11.7%」
モモ「全部足したら300%超えてます」
レイ「複数回答だから。一社が複数の理由を挙げてるの」
モモ「あ。じゃあ円安って11.7%だからそんなに多くない?」
レイ「円安が直接の理由に挙がるのは11.7%だけど、原材料を輸入するコストは円安の影響をモロに受けてる。だから99.8%の原材料高の裏には円安がいるのよ」
モモ「……間接的にはほぼ全部ってこと?」
レイ「まあ、そういうことね。物流費は2024年問題でドライバーの時間規制が入って構造的に上がってる。人件費は春闘の賃上げが4月から価格に転嫁される形で来てる。複合してるから、一つ解決しても全体は戻らない」
モモ「じゃあ円安だけの話じゃないんですね」
レイ「全然。それが今の値上げラッシュの本質よ」

コストが上がるから値段が上がる——これが今のしんどさの正体。
レイ「今起きてるのは『コストプッシュインフレ』っていう状態なの」
モモ「コスト……プッシュ?」
レイ「コストが上がって、それが値段を押し上げる。需要が増えたから値上がりするわけじゃないのよ」
モモ「普通のインフレと何が違うんですか?」
レイ「好景気のインフレはね、みんながものを買いたいから値段が上がる。今は違う。売れるかどうかに関係なく、作るのにかかるお金が増えたから値段を上げざるを得ない」
モモ「景気が悪いのに物価が上がる、みたいな感じ?」
レイ「……まあ、合ってるわね。これが『給料上がってるのに生活きつい』の正体のひとつよ」
賃上げで5%上がったのに、なぜ生活は楽にならないのか。
モモ「あ、でも今年の春闘って賃上げ5%超えてましたよね。相殺されません?」
レイ「順番の話でね。名目で5%賃金が上がっても、物価が同じくらい上がったら実質はほぼゼロよ」
モモ「え……5%上がってもゼロ?」
レイ「名目と実質の差——これは前にやった話ね」
レイ「今年の値上げラッシュは、その実質の削られ方を体感で理解する年になると思っておいて」
※春闘と実質賃金の構造についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
政府は何をしているのか、そしてその限界。

モモ「政府は補助とかしないんですか?」
レイ「ガソリンは3月から緊急的激変緩和措置で170円程度に抑える動きがある。電気・ガスの補助も夏(7〜9月)に再開するかもしれないって政府が示唆してる」
モモ「じゃあそんなに心配しなくていい?」
レイ「補助はね、問題を先送りにしてるのよ。補助があるうちは数字が小さく見えるだけで、やめた瞬間にどっと来る——今日の電気代がまさにそれ」
モモ「3月で補助が終わったから、4月にドカンと来た」
レイ「そういうこと。あと補助の財源は税金だから、長期間やれば財政的に限界が来る。永遠には続けられないわ」
モモ「希望ある感じで終わらせてくれないんですね、店長」
レイ「中東情勢が落ち着いて、円が少し戻れば和らぐわ。ただ今年後半に第2波が来る可能性も指摘されてる——楽観はできないのよ」
これを知ってると、職場のおじさんたちとの会話が変わる。

モモ「今日これを知ってたら、田中さんのため息に対して何か言えてたかなー」
レイ「『最近何でも高くなった』って言われたとき、『それ、コストプッシュインフレですよ』って言えると話が3段階くらい深くなるわよ」
モモ「田中さん、そう言ったらもっと困った顔しそう」
レイ「……たぶん、そうね」
モモ「でも職場のおじさんたちが同じこと言ってたら刺さると思う。『なんで上がるの』『円安だろ』って止まってる人に」
レイ「円安は一因。でも物流費も人件費も複合してるのよ、って言えると全然違うわ」
💬 知ってると一目置かれる一言
レイ「今日の一言。『コストプッシュインフレ』」
モモ「さっきも出てきたやつですね」
レイ「需要が増えて値上がりするのが『デマンドプルインフレ』。コストが上がって値段を上げざるを得ないのが『コストプッシュインフレ』。今の日本は後者よ」
モモ「景気が良くないのに物価が上がる——それを一言で言えちゃうわけですね」
レイ「次に誰かが『最近何でも高いよね』って言ったとき、この言葉を使えると話が変わる。田中さんに限らず」
モモ「……田中さんにだけ使います(笑)」
モモ「読んでくれてありがとうございます!『なるほど』と思ったら、スキ❤️ を押してもらえると嬉しいです。あと、フォローしてもらえると次の記事もお届けできます。また次回〜!」
