60分で読めるリーダーシップ①人がついてくるリーダーの心の土台
はじめに なぜ、あなたは迷うのか
「自分は、本当にリーダーとしてやれているのだろうか」
この記事を開いてくださったあなたは、どこかでそんな思いを抱えているのではないでしょうか。
私はこれまで、たくさんのリーダーと向き合ってきました。業種も規模もバラバラ。けれど、最初に口にされる悩みは、驚くほどよく似ています。
何から手をつけていいのか分からない。
自分の判断に、自信が持てない。
メンバーとの距離感に、戸惑っている。
頼れる人が、近くにいない。
自己流でいいのか、分からない。
どれか一つでも、心当たりはないでしょうか。
あなたが弱いから、迷っているのではない
ここで、1つだけお伝えしておきたいことがあります。
あなたが迷っているのは、あなたが弱いからでも、リーダーに向いていないからでもありません。
理由は、はっきりしています。リーダーには、"正解"がないからです。
プレイヤー時代には、ある意味「正解」が存在しました。数字を出すこと、納期を守ること、求められた品質に応えること。
道筋は見えていて、努力の方向を間違えさえしなければ、成果につながった。
ところが、リーダーになった瞬間、その道筋がすっと消えます。
誰も「これが正解」と教えてくれない。
それなのに、「決めること」「導くこと」は容赦なく求められる。
しかも、リーダーについてきちんと教わる機会は、ほとんどありません。
見よう見まねでやってみる。
うまくいかない。
自分を責める。
この繰り返しに、多くの方が疲れていらっしゃいます。
プレイヤーとして成果を出してきた方ほど、リーダーになった瞬間に自信を失う。
これは、私が現場で何度も目にしてきた、ある意味当たり前の現象なのです。
なぜ、私はこの記事を書いたのか
少し、私自身のことをお話させてください。
私が企業のリーダー養成やチームビルディングの仕事に本気で取り組んでいるのは、「日本を経済的に豊かな国にしたい」という願いがあるからです。
大きなことを言っているように聞こえるかもしれません。でも、冗談でも何でもなく、本気でそう思っています。
1人のリーダーが、自信を持って充実した日々を過ごせるようになる。
その状態そのものが、チームに波及する。
チームが活気づけば、職場が変わる。
職場が変われば、社会も少しずつ動き始める。
そうして気づいたとき、日本は自然と立て直されている。
だから、出発点はいつも、1人ひとりのリーダーだと私は考えています。だから、1人ひとりと日々向き合うことのできる仕事を選びました。
この本も、その延長線上にあります。
この記事が約束すること
本シリーズは、「こうすれば正解」を教える記事ではありません。
そもそもリーダーシップに「これが正解」と言い切れるものはない、というのが私の立場です。だからこの記事でお届けするのは、迷ったときに立ち返れる"判断軸"を、あなた自身の中に据えるための視点です。
その軸となるのが、本記事を貫くキーワード、COREモデルです。
4つの資質からなるとてもシンプルな考え方。けれど、一度腑に落ちると、一生使える軸になります。
60分で読める。
でも、読み終わった後、手元に残るのは、明日からの判断を支える4つの軸。
そんな読書体験をお届けできることを望んでおります。
(第2話はこちら↓)
(第3話はこちら↓)
第1章 スキルの前に「資質」を持て
なぜ、リーダーは不安になるのか
「はじめに」で触れた通り、リーダーの不安には、はっきりとした構造的な理由があります。
1つ目は、正解がないこと。
2つ目は、教わる機会がないこと。
3つ目は、それなのに決めることを求められること。
プレイヤー時代を振り返ってみてください。目の前の仕事には、おおよそ「ゴール」と「手順」がありました。
先輩から教わり、マニュアルを読み、OJTで覚える。分からないことがあれば、聞ける相手もいた。
ところが、リーダーになった瞬間、景色が一変します。答えを持っている人が、自分の周りにいない。
上司は結果を求めるだけで、プロセスの相談にはあまり乗ってくれない。部下は「指示待ち」の顔でこちらを見ている。
この状態で、日々の判断を積み重ねる。
これは、相当なストレスです。
不安にならないほうが不自然だと、私は思います。
だからこそ必要なのは、外から与えられる「正解」ではなく、自分の内側に持つ「判断の軸」なのです。
迷ったときに立ち返れる、自分なりの指針。これがあるかどうかで、リーダーとしての安定感は大きく変わります。
スキルだけでは、人はついてこない
ここで、少し立ち止まって考えていただきたいことがあります。
あなた自身、これまでのキャリアの中で、こんな人に出会ったことはないでしょうか。
仕事の能力は高い。知識もある。プレゼンも上手い。
でも、なぜか「この人にはついて行きたくない」と感じてしまう人。
あるいは逆に、こういう人もいたはずです。
決して器用ではない。特別なスキルがあるわけでもない。
けれど、不思議と人が集まってくる。任せたくなる。ついて行きたくなる人。
この違いは、一体どこから生まれているのでしょうか。
答えは、スキルの土台にある"資質"です。
スキルは、後からでも身につきます。学べば覚えられるし、訓練すれば伸びる。
けれど、資質が備わっていないリーダーのもとでは、どんなに高度なスキルも"使いどころ"を失います。
部下は、言葉の上手さより、その人の「在り方」を見ているからです。
どれだけ巧みに語ろうと、どれだけ論理的に指示を出そうと、そこに誠実さが伴っていなければ、言葉は空を切ります。
どれだけ高度なスキルを身につけても、その土台に資質がなければ、1ミリも輝かない。
これが、私が現場で確信するようになったことです。
リーダーシップの土台は「資質」
では、資質とは何か。
私はこれを、「どんなスタンスで人や課題と向き合うか」と定義しています。
何を大切にして判断するのか。失敗したときどのように振る舞うのか。伝わらなかったとき責任をどう引き受けるのか。目に見える行動の奥にあるその人の「構え」のようなもの。
これが資質です。
資質というと、「生まれ持ったもの」と誤解されがちですが、そうではありません。
資質は、日々の意識と選択によって、育てることもできるものです。
逆に言えば、意識しなければ、どれだけ経験を積んでも育ちません。
同じ失敗を繰り返しているリーダーの多くは、スキル不足ではなく、資質と向き合うことを後回しにしてきた結果なのです。
COREモデル ― 4つの資質
では、リーダーに求められる資質とは、具体的にどんなものなのか。
私が数多くのリーダーと向き合いながら整理してきたのが、COREモデルです。4つの資質の頭文字を取っています。
C:Creation(正解を"創る"力)
誰も答えを持っていない状況で、仮説を立て、まず一歩を踏み出す力。正解を探すのではなく、自ら創り出そうとする姿勢。
O:Objectivity(事実に基づく判断力)
事実・感情・意見を冷静に区別する力。人の話に耳を傾けつつ、意思決定の軸は「事実」に置く。
R:Resilient integrity(誠実でしなやかな強さ)
自分の過ちや失敗を潔く認める誠実さと、価値観を貫きつつ必要に応じてアップデートするしなやかさ。
E:Empathic communication(伝わることに責任を持つ姿勢)
「伝えたこと」ではなく「伝わったこと」が全てとし、結果を相手に依存しない伝え方。
この4つは、それぞれが独立した資質でありながら、互いに支え合う関係にあります。
Creationの精度はObjectivityで上がり、Resilient integrityが継続を支え、Empathic communicationがチームへと浸透させる。
詳しくは、次章以降で一つずつ丁寧に見ていきます。今の段階では、「リーダーに必要な軸は、この4つに集約できる」とだけ、頭に留めておいてください。
資質は「磨き続ける」もの
本章の最後に、一つお伝えしておきたいことがあります。
COREモデルは、到達点ではなく、羅針盤です。
「全てを完璧に備えた人」になる必要はありません。そもそも、そんなリーダーは存在しません。
私自身、今でも4つのどれかに足りなさを感じ、日々磨き直しています。
大切なのは、完成させることではなく、迷ったときに立ち返れる場所を持っていること。
この記事を読み終えたとき、あなたの中に4つの軸が芽生えている。それだけで、明日からの判断の質が変わります。
次章からは、いよいよCOREモデルの中身に入っていきます。まずは C:Creation ―「正解は、創るもの」 から。
「決断できない」「根拠が持てない」。
そんな壁に、どう向き合えばいいのか。
私自身の失敗談も交えながら、一緒に見ていきましょう。
第2章 【C】正解は、創るもの
決断できないリーダーが抱える3つの壁
リーダーは、決めるのが仕事。
そう言われても、いざ決断を迫られる場面になると、思考が止まってしまう。多くのリーダーが、どこかでこの感覚を味わっているはずです。
なぜ、私たちは決断に躊躇するのでしょうか。現場でたくさんのリーダーと向き合ってきて、背景には大きく3つの壁があると感じています。
1つ目は、「根拠が持てないまま決めること」への不安です。情報は足りない。先も読めない。その状態で「これでいこう」と言い切ることに、怖さを感じる。
2つ目は、「周囲の視線」への過剰な意識です。上司にどう評価されるか。部下に「判断ミス」と見られないか。自分への評価が、決断そのものを鈍らせる。
3つ目は、「責任を背負うことへのプレッシャー」です。うまくいかなかったら、自分1人が矢面に立たされる。この重さが、決断の一歩目を踏み出せなくしてしまう。
私自身、この3つに何度も苦しめられてきました。
だからこそ、単なる根性論では乗り越えられないことも、よく分かっています。
必要なのは、前提を一段、組み替えること。
その鍵になるのが、COREモデルの1つ目、Creationです。
Creationとは何か
Creationとは、「正解を探す」のではなく、「正解を創り出す」という姿勢です。
リーダーが置かれる状況には、そもそも「これが正解」という答えが用意されていません。
過去の事例を調べても、まったく同じ条件ではない。誰に聞いても、歯切れのいい答えは返ってこない。
この状況で「正解を探す」ことに時間を使っていると、何も決まらないまま、機会だけが遠のいていきます。
Creationの姿勢は、ここで発想を転換します。
「今の時点で一番筋が通りそうな仮説は何か」を立て、まず一歩踏み出す。
そして動きながら、その仮説を"正解に変えていく"。
外れていたかどうかを気にするのではなく、外れていたら修正する。決断を止めず、完了させながら前に進む。これがCreationの本質です。
私が「探す」から「創る」へ切り替わった瞬間
少し、私自身の話をさせてください。
私も、最初から「創る」ができていたわけではありません。新入社員の頃の私は、むしろ誰よりも「正解を探す」タイプでした。
仕事を指示されるたびに、まず取り組むのは「前例探し」。
過去にどんな資料が作られたか、どう進められたかを調べ上げ、その通りになぞる。
学校教育で染みついた「決められた手順に従うのが最適解」という感覚を、そのまま職場に持ち込んでいました。
もちろん、それでは過去の水準を超えられません。探す時間と悩む時間ばかりがかかり、成果は平凡でした。
今振り返ると、ずいぶん遠回りな働き方をしていたと思います。
その価値観を一変させたのが、入社3年目に任された会計監査の案件でした。
私の会社で、会計監査制度が初めて導入された年。社内に過去のフォーマットも前例も、一切ありません。
しかも提出期限は2週間弱。正解を確認しながら進める余裕も、誰かに相談する時間も、どこにもありませんでした。
「これで合っているのか」という不安を抱えながらも、私は腹をくくりました。必要な情報を自分で整理し、自分の頭で構成を考え、「もし間違っていたら、指摘を受けた時に直せばいい」と開き直って、資料を作り上げました。
結果は、意外なものでした。そのとき私が作ったフォーマットが、そのまま監査をクリアし、株主総会の場でも使用されたのです。
細部まで全力で仕上げたつもりではありましたが、まさか公的な場でそのまま通用するとは、思っていませんでした。
この一件で、私は当たり前のようで見落としていた本質に気づかされたのです。
仕事には"正解"があるのではなく、"要件"があるだけ。
要件さえ満たしていれば、手段やフォーマットは自分で創っていいし、失敗したら、そこで直せばいい ― そう気づかされたのです。
この日以来、私は「正解を探す」から「正解を創る」へと、完全に姿勢を切り替えました。
仕事の質は上がり、何より、仕事が"自分事"になり、楽しくなっていったのです。
創るリーダーが持っている3つの視点
Creationを体現しているリーダーには、共通する3つの視点があります。
① 完璧主義ではなく、"完了主義"で動く
「もう少し情報を集めてから」「念のため、もう少し考えてから」。そう言っているうちに、機会は逃げていきます。
Creationを持つリーダーは、完璧よりも完了を優先します。6割の情報で仮説を立て、まず動いてみる。動きながら検証し、修正し、前に進む。決断の精度は、行動を通じてしか磨かれません。
② "問い"から始める
決断に迷ったら、答えを探す前に問いを立てる。
「この決断は、そもそも何を実現するためのものか」
「今、何を優先すべき局面なのか」
「誰にとって意味のある決断になるのか」
問いが明確になると、仮説は"意図"と結びつき、軸のある決断へ変わっていきます。
③ "できそう感"をチームに生み出す
どれだけ立派な仮説を立てても、メンバーが「たぶん無理だよね」と思っていれば、チームは動きません。
Creationを持つリーダーは、自分の仮説に基づいて、「ちょっと難しいけど、頑張ればできそう」という手応えをチームに広げていきます。この"できそう感"こそが、決断に人を巻き込む力の源泉です。
今日からできる、創る力の磨き方
最後に、今日からできる小さな習慣を、1つだけ。
日常の中で、何か問題やモヤモヤに出会ったとき、「こうすれば良いのでは?」と仮説の形で一言、つぶやく癖をつけてみてください。
正しいかどうかは、いったん脇に置く。
「自分ならこうする」を言語化するだけで構いません。
この小さな積み重ねが、いざというときの「仮説を立てて一歩踏み出す力」に化けていきます。
あなたが今、先延ばしにしている決断は何でしょうか。
それを仮説に置き換えるとしたら、最初の一歩はどんな形になるでしょうか。
次は、その仮説の"精度"を支える資質、O:Objectivity ― 事実に基づく判断力 ― について見ていきます。
第3章 【O】事実だけが、判断を支える
なぜ、人は感情に流されるのか
「チームのために」「現場の声を尊重して」。
そう思って下した判断が、結果的にチームを苦しめてしまった。リーダーを続けていると、誰もが一度はぶつかるテーマではないでしょうか。
原因の多くは、スキル不足ではありません。
事実と、感情と、意見が、頭の中で混ざってしまっていたこと。ここに尽きます。
人は、感情の生き物です。
目の前の相手が真剣に訴えかけてくれば、その熱量に動かされる。信頼している人の言葉は、無条件に正しく聞こえる。
これは自然な反応で、否定すべきものではありません。
ただ、そのまま判断の軸にしてしまうと、道を誤ります。
特にリーダーは、「自分は正しく見えている」と思い込みやすい立場です。部下の話を聴き、現場を見て回り、情報は入ってきている。
そう思えば思うほど、見落としている部分に気づけなくなる。
だからこそ、リーダーの冷静さには構造が必要です。その構造を与えてくれるのが、COREモデルの2つ目、Objectivityです。
Objectivityとは何か
Objectivityとは、意見や感情に寄りすぎることなく、「何が本当に起きているのか」を起点に判断する力です。
誤解していただきたくないのは、「感情を排除しろ」ということではない、という点。共感することと、感情に流されることは、まったく別物です。
メンバーの感情には、しっかり耳を傾ける。ただし、意思決定の軸は「事実」に置く。これがObjectivityの核心です。
具体的には、情報に触れたとき、頭の中でこの3つを区別します。
事実:実際に起きていること。確認できる情報。数字や時系列で示せるもの。
感情:相手や自分が、その時どう感じたか。
意見:事実と感情をもとにした、解釈・推測・判断。
「売上が先月比10%下がった」は事実。
「不安だ」は感情。
「このままでは危ない」は意見。
これらを切り分けて捉える癖がつくだけで、判断の質は大きく変わります。
私が「事実」と「意見・感情」を混同した代償
この重要性を、私は手痛い失敗を通じて学びました。
あるスポーツチームでコーチを務めていた時期のことです。複数の選手から、「今のやり方を変えた方がいい」という強い声が寄せられました。
彼らの熱量に、私は動かされました。「それだけ真剣に考えてくれているなら、変えた方がチームのためになる」。
そう判断し、チーム方針の変更を決めたのです。
当時の私は、「言いたいことがあれば、いつでも言いに来ていい」というオープンな姿勢を掲げていました。
だから、自分のもとに届く声こそが「チーム全体の声」だと、無意識に思い込んでいました。
蓋を開けてみれば、違いました。
私のもとに届いていたのは、ごく一部の選手の声でしかなかったのです。大多数のメンバーは、もとのやり方に納得していました。
ただ、わざわざ声を上げていなかっただけだったのです。
急な方針転換にメンバーは戸惑い、チームの空気は悪くなり、パフォーマンスは目に見えて落ち始めました。
変更を求めた選手たち自身も含めて、誰も得をしない結果を招いてしまったのです。
後で振り返って分かったのは、声を届けに来てくれていた選手たちに、いくつかの共通点があったことです。
チームの中心的な存在で、普段から私とコミュニケーションを取る機会が多い選手たちでした。そのため私は、「この人たちは全体を代表している"はずだ"」と勝手に思い込み、十分な裏取りもせずに、彼らの感情に基づいた"意見"を、"事実"として扱ってしまったのです。
この経験は、今でも教訓として私の中に残っています。
声の大きさや感情の強さに、判断を委ねてはいけない。
事実を見る3つの実践
では、日々の現場でObjectivityをどう磨いていくか。私が現場で伝えている実践は、3つあります。
① 相手の話を「事実・感情・意見」に分けて聴く
会話を聴きながら、頭の中で3つのラベルを貼る感覚を持ってください。「今の発言は事実だな」「ここは意見だな」と、流れに沿って仕分けていく。
「みんなが言っています」と言われたら、その「みんな」に主語を戻して確認する。
「〜な気がします」という語尾に出会ったら、それは意見か感情の可能性が高い。
こうして分けていくと、自分が何を根拠に判断しようとしているかが、はっきりと見えてきます。
② 自分の感情も「事実」として客観視する
意外と見落としがちなのは、自分自身の感情です。
「この提案、なんとなく気に入らない」
「この人の意見には賛同したい」
これらは感情であって、判断の根拠ではありません。
でも、それらを「自分は今、そう感じている」という事実として認識しておくことは、とても大切です。
自分の感情を自覚できているリーダーは、流されません。感情に気づいたうえで、事実に立ち戻れるからです。
③ 短期ではなく、長期の視点で事実を見る
目先の事実だけを追うと、判断を誤ることがあります。
「この決定でメンバーの不満は収まる」これは短期の事実。
しかし、長期で見ると「毎回、声の大きい人の意見が通るチームになっていく」という別の事実が立ち上がってきます。
事実は、時間軸を広げて見ることで、意味が変わります。
リーダーは、目の前の事実と同時に、「これが積み重なるとどうなるか」という長期の事実にも目を向ける必要があります。
Objectivityが、Creationの精度を上げる
ここで、第2章と第3章の話が、一本の線でつながります。
Creation(正解を創る力)は、仮説を立てて動くことでした。では、その仮説は、何を材料に立てるのか。
事実です。
事実の把握が粗ければ、どれだけ大胆に仮説を立てても、見当違いの方向に進んでしまう。
私が会計監査の案件で仮説を組み立てられたのも、「要件は何か」という事実の部分を、時間をかけて正確に押さえていたからでした。
逆に、スポーツチームでの失敗は、事実の把握を怠ったまま仮説(方針変更)に飛びついた結果です。
Creationの大胆さと、Objectivityの正確さ。この2つは、両輪です。
どちらか一方だけでは、リーダーの判断は安定しません。
次の章では、3つ目の資質、R:Resilient integrity ― 折れない強さは、しなやかさから ― に入ります。
仮説が外れたとき、判断が間違っていたと気づいたとき、リーダーはどう立ち直るのか。
誠実さとしなやかさ、2つの側面から見ていきましょう。
第4章 【R】折れない強さは、しなやかさから
リーダーに求められる「強さ」とは何か
「リーダーは強くなければいけない」。
この言葉を、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。では、その「強さ」とは、具体的に何を指しているのでしょう。
現場で多くのリーダーを見ていると、誤解されがちな2つのイメージがあります。
1つは、「強さ=威厳」。
声を張り、異論を封じ、決めたことを押し通す。これは一見、強そうに見えます。
しかし、このタイプのリーダーのもとでは、メンバーの本音は蓋をされ、健全な試行錯誤は育ちません。
短期的には機能しても、長期的にはチームから活力が失われていきます。
もう1つは、「強さ=完璧」。
間違えない、揺らがない、迷わない。プレイヤー時代の成功体験が強い人ほど、この罠に陥ります。
けれど、完璧であろうとするほど、間違いを認めにくくなり、軌道修正のタイミングを逃してしまうのです。
私が現場で確信している本当の強さは、そのどちらでもありません。
「誠実さ」と「しなやかさ」、この二つの両立です。
これがCOREモデルの3つ目、Resilient integrityの核になります。
Resilient integrityの2つの側面
Resilient integrityは、2つの顔を持ちます。
1つ目の顔は、「誠実さ」。
自分の判断が間違っていた、仮説が外れていた、失敗したと気づいたとき、それを隠さず、潔く認める姿勢です。
言い訳をしない。
責任転嫁もしない。
「ズレていました。修正します」と、まっすぐ口にできる力。
2つ目の顔は、「しなやかさ」。
誤りに気づいた後、そこで止まらずに立ち直り、次の一手を打ち直す姿勢です。
落ち込みを引きずらない。
自分を過剰に責めない。
新しい情報が入れば、自分の価値観すら必要に応じてアップデートしていく柔軟さ。
この2つが揃うことで初めて、試行錯誤を続けられるリーダーになります。
どちらか一方だけでは不十分です。
誠実さだけだと、失敗を認めた後に動けなくなる。しなやかさだけだと、失敗そのものから目を逸らしてしまう。
「認める」と「立ち直る」の両輪があってこそ、人は同じ場所にとどまらずに済むのです。
私が「取り繕い」で機会を失った話
ここでも、私自身の苦い経験をお話しさせてください。第2章でも触れた、入社3年目の会計監査プロジェクトの、もう一つの側面です。
期限は2週間弱。
前例もフォーマットもない手探りの案件を進める中で、私はある重大なミスを犯しました。
各支店に依頼すべき資料の手配を、すっかり忘れていたのです。
気づいたのは、締め切りまで3日を切ったタイミング。
「今さら『忘れていました、3日以内にお願いします』なんて言えない」。
咄嗟にそう思った私は、すべてを1人で巻き取る決断をしました。
各支店から集めるはずだったデータを、自分で抽出し、突合し、一覧化する。
各支店に素直に依頼していれば1日で終わる作業を、深夜残業を3日続けることで何とか間に合わせたのです。
監査自体は、無事に通りました。
表面的には「誰にもバレずにやり切った」形です。
ところが、代償はじわじわと現れてきました。
各支店と協働する機会を、私は自ら潰していたのです。
本来なら、この案件をきっかけに各支店と連携し、会計監査に関する知見を組織内で共有できていたはずでした。
けれど、ミスを隠して1人で片付けたことで、ノウハウは本社経理部の中、それも私1人のものに閉じてしまった。
結果として、業務の属人化を招きました。
私は「直接恥をかくこと」は回避できました。
しかしその代わりに、長期的な信頼構築と、組織の学習機会を、自分の手で手放していたのです。
今振り返れば、当時の私が取り繕ったのは、完璧主義と、短期視点によるものでした。
「ミスを隠した方が賢明だ」と判断した裏側には、「間違えたら評価が下がる」という恐れと、「ミスをしない人と見られたい」という虚栄があった。
このとき痛感したのは、「隠しても、認めても、リスクはゼロにはならない」ということです。
むしろ早めに認めて周囲を巻き込むほうが、長期的なメリットは圧倒的に大きい。
率直さは、信頼として積み上がっていくのですから。
「まとも」かどうかで判断する
Resilient integrityを支えるうえで、もう1つ大切な視点があります。
判断を、「損得」ではなく「まともかどうか」で下すということです。
リーダーの日常は、判断の連続です。そしてその多くは、短期の損得と、長期の誠実さが、微妙にズレる場面でもあります。
「ここは黙っておく方が、揉めずに済む」
「この相手に合わせた方が、自分の評価は上がる」
「本音を言うより、うまく立ち回る方が賢い」
こうした損得計算で動く判断が、一度や二度なら問題にはならないかもしれません。
けれど、これを積み重ねると、いつの間にか自分自身が、自分の判断を信じられなくなっていきます。
そんな時、私が自問するのはシンプルな問いです。
「これは、まともなのか」。
損得ではなく、まともかどうか。
流行や空気ではなく、自分の価値観に照らして、筋が通るかどうか。
この問いで判断すると、短期的には損をすることもあります。
けれど、「あの時、曲げなかった」という事実が、後の自分を支えてくれるのです。
逆に、損得を優先して価値観を曲げた時の記憶は、ずっと自分の中に残り続けます。
「仲間達には誠実であれと伝えているのに、自分は違うのか」と、自分自身に問われ続けることになる。
これは、じわじわと効いてくる、かなり重い代償です。
価値観は「貫く」と「アップデート」の両立
ただし、ここで誤解していただきたくないのは、「自分の価値観を絶対に曲げない」ことが正解ではない、ということです。
価値観には、「芯として貫くべきもの」と、「新しい情報をもとにアップデートすべきもの」の両方があります。
「誠実でありたい」「仲間を大切にしたい」といった根っこの部分は、簡単には動かしません。ここは貫く領域です。
一方で、「こういう場面ではこう振る舞うべきだ」「この仕事はこのやり方が正しい」といった方法論レベルの価値観は、メンバーの声や現場の変化に応じて、柔軟に書き換えていく必要があります。
「俺はこうだ」だけでは、いつか折れます。
「自分はこう、でも違う見方もある」という余白を持てるリーダーは、折れません。
芯となる幹は貫き、枝葉はしなやかに。この両立こそが、Resilient integrityの完成形です。
ここまで、C・O・Rと見てきました。
次章では、いよいよ最後の資質、E:Empathic communication ― 伝わったことが、伝えたこと ― に入ります。
どれだけ良い判断をしても、それがチームに伝わらなければ、リーダーシップは機能しません。
その責任の所在を、私たちはどこに置くべきなのか。一緒に見ていきましょう。
第5章 【E】伝わったことが、伝えたこと
「伝えたのに伝わらない」の正体
「ちゃんと説明したはずなのに、動いてくれない」
「何度も伝えたのに、なぜ分かってもらえないんだろう」
リーダーを続けていると、誰もが一度はぶつかる壁です。私自身、リーダーになりたての頃は、この壁に何度も突き当たりました。
このときの私たちの頭の中には、無意識のうちに、ある前提が居座っています。「伝えた=伝わった」という前提です。
同じ言葉を口にしたのだから、相手も同じ意味で受け取っているはず。
同じ資料を見たのだから、同じ理解に至っているはず。
けれど実際には、人は立場も、経験も、関心も、コンディションも、ひとりひとり違います。
同じ情報を渡しても、同じ理解にはならないのです。
この前提にリーダーが気づかないまま走り続けると、あるとき、こんな言葉が自分の中に生まれてきます。
「理解できない相手が悪い」。
ここまで来てしまうと、チームは黙り始めます。
「言っても無駄」
「どうせ伝わらない」
という空気が広がり、本音の対話は静かに消えていく。
この負のループを断ち切るのが、COREモデルの最後の資質、Empathic communicationです。
Empathic communicationとは何か
Empathic communicationとは、「どう伝えたか」ではなく「どう伝わったか」に責任を持つ姿勢です。
少し強い言い方をすれば、「伝わっていないのなら、それは自分の伝え方の問題だ」と引き受ける覚悟、と言ってもいい。
これは、自分を責めるための考え方ではありません。伝え方の主導権を、自分の手に取り戻すための考え方です。
「相手が理解しない」を責めても、現状は1ミリも動きません。
けれど「伝え方を変えよう」と思えた瞬間、打ち手は無限に広がります。
言葉を変える、タイミングを変える、手段を変える、場所を変える。
主導権が戻ってくれば、工夫の余地は自分の中に生まれるのです。
これは、第4章でお伝えした「損得ではなく、まともかどうか」の発想と、根っこでつながっています。
結果を相手に委ねず、自分が引き受ける。これが、リーダーの在り方の一貫した軸です。
私が「伝える責任」を引き受けた瞬間
経理部時代の話をひとつ、お伝えさせてください。
結論を先にお伝えしておくと、これは「直接会いに行けば解決する」という単純な話ではありません。
リーダーが手段を一つに固定してしまうことの危うさと、相手と状況に応じて最適な伝え方を選び直す ― そのことの大切さを学んだ話です。
実は、第2章のフォーマット作りも、第4章の手配忘れも、これからお話しする話も、すべて新卒入社3年目に起きた一連の出来事です。
会計監査が私の会社に初めて導入された年で、決算の精度に、それまでとは比べものにならない水準が求められるようになった ― そういう、激動の一年でした。
当時の私は、肩書きで言えば、ただの一兵卒。
リーダーでも、管理職でもありません。それでも、後になって振り返ると、この一年に経験したことが、私のリーダーシップの軸を形作ってくれていました。
リーダーシップは、肩書きを得てから磨くものではなく、日々の選択の積み重ねで育っていくものなのだと、いまでも強く思います。
そんな一年のなか、私の手元には3年近く経費精算が止まったままの支店が、未解決の課題として残っていました。
この滞留を片付けない限り、新基準下での決算は確定できない ― そういう状況です。
経理部としては、ありとあらゆる手を尽くしていました。
【重要・至急】と書いたメール。
リマインドも二度。
催促の電話。
果ては社長名の文書まで。
「これで完璧に伝えたはずだ」と、私たちは思っていました。
ところが、その支店だけは、まったく動かない。催促のたびに「あとでやります」と返されるだけ。
決算の数字確定はそこで止まり、新しい監査基準下のスケジュールは総崩れ寸前でした。
このとき、私はようやく気づかされたのです。
「伝えた」と「伝わった」は、別物だと。
そして同時に、当時の自分が抱えていた傲りにも気づかされました。
「決算作業は、全社で最優先のはずだ」という思い込み。
「仕事なんだから、やってくれるはずだ」という甘い期待。
「進まないのは相手の責任だ」という依頼側の傲慢さ。
私は決断しました。「メールも電話も効かない。行動で重要度を示すしかない」。
出張承認を取り、翌朝一番の飛行機で、その支店に飛んだのです。
支店に着き、支店長や事務員さんの隣に座り、一緒に領収書の処理を始めた瞬間、雰囲気が変わりました。
「そこまで急ぎだったんですね」
「分かりました。私たちも最優先でやります」
それをきっかけに精算作業は進捗し始め、決算数字も無事に確定させることができました。
この一件で私が学んだのは、伝える責任は、最後まで伝える側にあるという、シンプルだけども重要な事実でした。
同時に、もう一つ大切なことを学びました。
それは、伝え方を1つに固定してはいけない、ということです。
誤解しないでいただきたいのは、「困ったら直接会いに行けばいい」という単純な話ではない、ということです。
あの場面で訪問が効いたのは、相手との距離感、案件の緊急度、信頼関係の状態など、いくつもの条件が重なっていたからにすぎません。
別の相手・別の場面では、メール一本で十分なこともあれば、むしろ訪問が圧をかけてしまい逆効果になることもあります。
大切なのは、手段の選択肢を1つに絞らないこと。
相手のタイプ、案件の性質、関係性の状態を見極めたうえで、その時々で最適な伝え方を妥協なく選び直すこと。
メール、電話、対面、文書 ― どれが正解と決めつけず、伝わるまで手段を組み替え続ける。
この姿勢こそが、Empathic communicationの実体なのです。
なお、このときの支店訪問は、私のコーチング理論の核である「信頼の貯蓄」という考え方の出発点にもなりました。
同じ出来事を、第2話で「信頼の貯蓄」の側面から、改めて掘り下げる予定です。
「伝わる責任」を、自分の中に置き続ける
ここまでお伝えしてきたのは、テクニックではなく、姿勢の話です。
結論を伝えるなら、その背景と意図も自分の言葉で添えてみる。
話す相手によって、言葉と見せ方を変えてみる。
伝えたあとは、「どう理解したか聴かせてもらえますか?」と確認する一言を、面倒くさがらずに添えてみる。
どれも特別なテクニックではありません。
「結局どこまでも、伝わる責任は自分にある」という姿勢を持ち続けていれば、自然と出てくる工夫ばかりです。
逆に、姿勢が抜けたまま小手先のテクニックだけを集めても、きっと続きません。
「伝え方を変えよう」と何度繰り返しても、根っこに「相手の理解力次第」という前提が居座っていれば、いつか必ず元に戻ってしまうのです。
Empathic communicationが資質である、ということの本当の意味は、ここにあります。
テクニックではなく、「伝わるまでが自分の仕事」と決めている人だけが、伝え方を磨き続けられるのです。
具体的な逆算の方法 ― 相手のどこを読み、どう設計するか ― は、第2話で日々の習慣として、改めて深掘りしていきます。
Empathic communicationは、すべてを浸透させる
ここで、COREモデル全体を見渡してみましょう。
第2章で見たCreation(正解を創る力)。
第3章で見たObjectivity(事実に基づく判断)。
第4章で見たResilient integrity(誠実でしなやかな強さ)。
これらはすべて、リーダーの内側で完結する資質です。自分の中で仮説を立て、事実を見極め、失敗と向き合う。
ところが、どれだけ内側が整っていても、それがチームに届かなければ、リーダーシップは機能しません。
チームを前に進めるのは、内側の3つの資質を、外側へ運び届ける最後の力 ― つまりEmpathic communicationです。
Eが機能して初めて、COREは完結する。そう言っても大げさではありません。
次の終章では、このC・O・R・Eの4つが、どう繋がり、どう支え合うのかを整理します。
一つの全体像として、4つの資質を捉え直していきましょう。
終章 4つの資質は、繋がっている
COREは「単独の資質」ではない
ここまで、Creation・Objectivity・Resilient integrity・Empathic communicationという4つの資質を、1つずつ見てきました。
それぞれの章で「これが大事です」とお伝えしてきたので、もしかすると今、こんな印象を持たれているかもしれません。
「4つも、一気に身につけるのは大変そうだ」。
ご安心ください。
COREモデルは、4つを別々に磨いていくものではありません。
4つは、互いに支え合い、強め合う関係にあります。
1つを意識すれば、他の3つも自然と引き上がっていく。
逆に、1つだけを切り離して伸ばそうとすると、空回りしてしまう。そういう統合的な構造になっています。
少し角度を変えて、4つがどう繋がっているのかを見てみましょう。
資質はこう繋がる
Creationは、Objectivityによって精度が増す
不確実な状況で仮説を立てるとき(Creation)、その材料になるのは「事実」です。
事実を正確に把握できていなければ(Objectivity)、どれだけ大胆に仮説を立てても、見当違いの方向に進んでしまう。
第3章でお伝えした通り、私がスポーツチームで失敗したのは、事実と意見・感情を混同したまま方針変更(仮説)に飛びついたからでした。Objectivityがあるから、Creationの精度は上がるのです。
ObjectivityとCreationは、Resilient integrityによって継続できる
事実を見て(Objectivity)、仮説を立てて動いた(Creation)としても、その仮説が外れることは当然あります。
むしろ、最初の仮説が完璧に当たることのほうが稀です。
問題はその後。
外れたときに素直に認め、修正できるか(Resilient integrity)。
ここで取り繕うと、私が会計監査の案件でやってしまったように、本来得られたはずの学びと信頼を、自ら手放すことになります。
Resilient integrityがあるから、リーダーは試行錯誤を続けられる。
「動き続けられる」ことの土台が、Rなのです。
すべては、Empathic communicationによってチームに浸透する
そして、ここが最大のポイントです。
どれだけ事実を見て、良い仮説を立て、誠実に修正を重ねても ― それがチームに伝わらなければ、リーダーシップは機能しません。
リーダーが頭の中でどんなに正解に近づいていても、メンバーがそれを共有できていなければ、チームは動かない。
C・O・Rの努力は、Eを通って初めてチームの成果に変わるのです。
だからこそ、Empathic communicationは「最後の資質」ではなく、「最初の3つを統合する資質」と捉えるのが正確です。
COREは、振り返りの軸になる
4つの繋がりが見えてくると、日々の出来事への向き合い方が変わってきます。
今日の判断で迷ったとき、「Creationが足りていなかったかな」と振り返れる。
明日の対話で噛み合わなかったとき、「相手の前提を確認していなかった、Eの意識が弱かったな」と言葉にできる。
失敗の後に立ち上がりにくいとき、「Rのしなやかさを取り戻そう」と自分に処方できる。
COREは、自分の状態を言語化するための共通言語として機能します。
言語化できれば、対処もできる。
これが、4つを「繋がり」として持っておくことの実用的な価値です。
おわりに 完璧ではなく、誠実に
私自身、いまだに迷っています
ここまで4つの資質を語ってきた私自身、4つすべてを完璧に実践できているわけではありません。
今日も判断に迷い、誰かとのコミュニケーションがうまくいかず、後で「ああ、あの時のあれは違ったな」と頭を抱える ― そんな日々の繰り返しです。
それでも、自分の中にCOREという軸があるから、迷っても、立ち返れる場所がある。失敗しても、何が足りなかったかを言葉にできる。
これが、私にとってのCOREモデルの本当の価値です。
だから、もしあなたがこの本を読んで、「自分はまだまだだ」と感じたとしても、どうか落ち込まないでください。
気づけているということは、すでに育ち始めているということです。
完璧ではなく、誠実なリーダーへ
完璧なリーダーは、存在しません。
存在するのは、間違いに気づいたときに、それを誠実に認められるリーダー。
伝わらなかったときに、自分の伝え方を見直せるリーダー。
正解がないと分かっていても、仮説を立てて一歩を踏み出せるリーダー。
そして、そういうリーダーのもとに、人は自然と集まってくるのです。
完璧さは、人を遠ざけます。誠実さが、人を引き寄せるのです。
明日からの、たった一歩
この記事を閉じた後、お願いしたいことがあります。
4つの資質を、一度に身につけようとしないでください。
これは精神論ではなく、構造の話です。
COREの4つは、互いに支え合う関係にあります。1つを深く意識すると、他の3つも自然に引き上がっていく。
逆に、4つを同時に追いかけると、どれも中途半端になってしまうのです。
だから、今、自分にとって一番響いた1つを選んでください。
Creationでも、Objectivityでも、Resilient integrityでも、Empathic communicationでも構いません。
一番気になった1つを、明日から意識してみる。
それで、十分です。1つの軸が深まれば、他の3つはあとからついてきます。
次回への予告
第1話では、リーダーシップの「土台」となる資質をお伝えしてきました。
続く第2話『人がついてくるリーダーの小さな習慣 ― 信頼を生むコミュニケーションの本質』では、この土台を「日々の関わり方」に落とし込んでいきます。
「信頼の貯蓄」という考え方、能動的に聴くことの本当の意味、相手から逆算する伝え方 ― 第1話の資質を、現場で具体的にどう動かすか。第5章でお話した支店訪問のエピソードも、第2話で改めて掘り下げる予定です。
そして第3話では、それらの土台と習慣をもとに、「成果を生む戦略思考」へと繋げていきます。
全3話を読み終えたとき、あなたの中には「資質 × 習慣 × 戦略」という、揺るがないリーダーシップの全体像が立ち上がっているはずです。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
あなたが明日、自分なりの一歩を踏み出せることを、心から願っています。
