米中の地政学2

文藝春秋スペシャル2017春から、「“南シナ海で米中対決”を予言! 1942年イエール大白熱授業」の要約の続き。
著者は地政学・戦略学者奥山真司氏。

昨日の要約でほとんど終わり、本日用の文はほとんど残っていなかった。

スパイクマンの予測
1 南シナ海の重要性向上
2 極東の発展と安定の米国への寄与
3 中国の台頭とアメリカへのライバル化
4 イギリス、アメリカ、日本のシーパワーではなく、中国のエアパワーがアジアの地中海を支配する可能性がある。

感想・考察
太平洋戦争半ばまでにここまで世界を見通したスパイクマン。地政学というツールがそれを可能にする大きな力だった。地政学について学ぶ必要がある。今ではシーパワー・ランドパワーに加えて、本文最後に出てきたエアーパワーにエアロパワー、さらにはサイバーパワーまである。これらはシーパワーとランドパワーを大きく補強する。

その中で、サイバーパワーは異質感がある。サイバー戦争は常に進行しているところが、これまでの戦争と違う。宣戦布告もない。現代の戦争の枠組みは、過去とかなり違ってきている。サイバーパワーは金融も無力化させられる。特に現金経済が衰退してきている現代では、国を知らぬ顔で大混乱に陥れられる。過去に日本では登戸研究所で研究されたような紙幣偽造による経済撹乱とは桁違いの効果を僅かな机上の操作で生じさせられる。経済の混乱といえば、18世紀初頭のフランスでは、スコットランド人のジョン・ローはフランス政府に雇われて、金融政策の暴走という形でフランスに対してそれを実行して、最大限の負の効果を発揮した。ここから先70年後に生じるフランス革命の下地ができた。経済撹乱戦は侮れない。
クラウセヴィッツは、「戦争は政治の一形態」と言ったという。つまり、これら全て政治であって、政治家とは大変な仕事だとあらためて思う。議員に立候補する人たちには、肝に銘じていただきたい。

地政学は危険な学問という言説がある。自分としては地政学といえばナチスに取り入れられたカール・ハウスホーファーの地政学のイメージしかなかったが、それは極端な例による悪イメージ。ヒトラーはハウスホーファーの弟子ではない。ハウスホーファーは『ゴルゴ13』の『裏切りのスワスチカ』で、ルドルフ・ヘスの師匠として登場していた。身分を隠して依頼をするヘスに対して、「依頼は受けた、ヘス」と返すゴルゴに、説明不要の何かを感じて痺れた記憶がある。ゴルゴは全ての学問や思想を超越した存在である。

地政学っぽく地図を見ると、日本はイギリスとともに大陸を挟んでいる。つまり日英同盟はオセロで言えばとても強いが、やはり現実世界はオセロと違うし、今では日本もイギリスも一周辺国の立場にいる。大陸側に入った途端、西にはフランス、東には中国というランドパワーのボスがそこにはいる。話にならない。

ワールドワイドな地政学の視点を歴史の登場人物がもし持っていたら、歴史は今と大きく違ったかもしれない。大航海時代に先んじた鄭和の大艦隊をシーパワーとして使用していたら、明は世界を征服できただろうか。百年戦争の途中のトロワ条約締結後、ヘンリー5世が「ガラスの身体を持つ男」シャルル6世より先に死ななかったら、フランスはイギリスと一体となってランドパワーとシーパワーが融合した最強帝国ができていただろうか。そして、最強のランドパワー帝国であったモンゴル帝国がシーパワーを確立させていたら、元寇は失敗しなかっただろう。
歴史にifは言ってもしょうがないというが、量子論の多世界解釈的にはそれもありとなる。あるかもしれない。

徳川幕府は島国であるに関わらず、鎖国を敷いて内に向いたランドパワー帝国という見方も可能だろうが、江戸時代にシーパワーを目指した藩はあったのか。維新直前の琉球支配の薩摩、瀬戸内海の長州、海援隊の土佐、長崎防衛の佐賀等の雄藩には、少しそんな感じがする。

地政学で先を見通すにはスパイクマンのような尋常でない知性が必要だろうが、今を理解するツールとしては、きっと常人にも役に立つ。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集