忘れたいのに忘れられない。その記憶から自由になる方法
夜、ふと思い出してしまう
夜、ベッドに入って目を閉じた瞬間、ふっと蘇ってくる記憶がある。もう何年も前のことなのに、昨日のことのように鮮明に思い出してしまう。
あの時の言葉、あの時の表情、あの時の自分の情けなさ。
「もう忘れたい」って何度も思う。でも、忘れようとすればするほど、その記憶は鮮明になっていく。気づけば真夜中、眠れないまま同じ場面を何度も何度も頭の中で再生している。
翌朝、疲れた顔で鏡を見ながら、「また考えちゃった」って自分を責めてしまう。
こんな経験、ありませんか。
30代、40代って、人生の中で色々なことを経験してきた年代です。仕事での失敗、人間関係のもつれ、大切な人との別れ、自分の選択を後悔すること。
そういう『忘れてしまいたい記憶』が、いくつも心の中に積み重なっている。
そして、忙しい日中は忘れていられるのに、ふとした瞬間に思い出してしまう。通勤電車の中で、家事をしている時に、子どもが寝静まった後に。
その度に胸が苦しくなって、不安な気持ちに飲み込まれていく。
「私だけなのかな、こんなにいつまでも引きずってしまうのは」そんなふうに思ってしまうこともあるかもしれません。
実は、忘れようとするほど忘れられない
でも、これは決してあなただけじゃないんです。そして、あなたが弱いわけでもない。実は、これには脳の仕組みが関係しているんです。
人間の脳って、不思議なもので、「忘れたい」と強く思えば思うほど、その記憶を脳の奥底に深く刻み込んでしまうんですね。
「忘れなきゃ、忘れなきゃ」と思うたびに、脳の中でその記憶がリピート再生される。すると脳は「これは重要な記憶なんだ」って認識してしまう。
皮肉な話ですよね。忘れたいと願っているのに、その願いそのものが記憶を強化してしまうなんて。
これは『潜在意識』の働きなんです。潜在意識は、私たちが繰り返し考えたこと、何度も思い浮かべたことを「重要なこと」だと判断します。
そして、その思いを実現させようと働きかける。夢や目標のようなポジティブなことだけじゃなく、悩みや不安、思い出したくない記憶も同じなんです。
繰り返し考えてしまうと、潜在意識はそれを心の深いところに刻み込んでしまう。
さらに言えば、幼い頃の記憶ほど深層心理に深く刻まれていて、後から消すことが難しくなる。実は、新しいことを覚えるより、一度心に深く刻み込まれた記憶を消す方が、ずっと難しいんです。
私も同じだった
50代になった今だから言えることですが、私も長い間、忘れられない記憶に苦しめられてきました。
若い頃の仕事での大きな失敗。信頼していた人に裏切られた経験。大切な人との別れ。
どれも何年経っても鮮明に覚えていて、ふとした瞬間に思い出しては、胸が締め付けられるような思いをしていたんです。
「なんであの時、ああしてしまったんだろう」「もっと違う選択ができたはずなのに」そんなふうに自分を責めながら、同じ記憶を何度も反芻していました。
でも、ある時気づいたんです。これは自分で自分を苦しめているだけなんだって。過去は変えられない。
でも、その記憶との向き合い方は変えられる。そう思えたとき、少しずつ楽になっていきました。
記憶との付き合い方を変える
ここで大切なのは、「忘れよう」とすることをやめることなんです。
矛盾しているように聞こえるかもしれませんね。でも、本当にそうなんです。「忘れよう、忘れよう」と頑張れば頑張るほど、その記憶は強化されていく。
だから、忘れようとするのをやめる。代わりに、他のことに意識を向けていく。
例えば、嫌な記憶が浮かんできたら、「あ、また来たな」って認めてあげる。否定しないで、「そういえばそんなこともあったね」くらいに受け止める。そして、すぐに別のことに意識を切り替える。
今日あった楽しかったこと、明日やりたいこと、好きな音楽、読みたかった本、会いたい人のこと。何でもいいんです。意識を今この瞬間、そしてこれからのことに向けていく。
体を動かすことの魔法
私が一番効果的だと感じたのは、体を動かすことです。
スポーツでも、運動でも、散歩でも、ヨガでも、何でもいい。体を動かしていると、不思議と頭の中がクリアになっていくんです。嫌な記憶を思い出す暇がないくらい、今この瞬間に集中できる。
走っている時、筋肉の動きを感じている時、深く呼吸をしている時。そういう瞬間は、過去の記憶が入り込む余地がない。体が「今」を感じているからです。
それに、運動をした後って、心地よい疲労感とともに、気持ちが少し軽くなっていることに気づくはずです。これは単なる気分転換じゃなくて、脳の状態が実際に変わっているんですね。
他にも、料理に没頭する、絵を描く、音楽を聴く、友達と笑う。そういう『楽しいと思えること』に意識を集中する時間を、意図的に作っていくことが大切なんです。
環境を変えることも大切
もう一つ、無意識に思い出してしまう状態や環境を変えることも効果的です。
例えば、いつも同じ時間に同じ場所で嫌な記憶を思い出してしまうなら、その時間の過ごし方を変えてみる。寝る前に思い出してしまうなら、寝る前のルーティンを変えてみる。軽いストレッチをする、好きな香りのアロマを焚く、感謝できることを三つ思い浮かべる。
小さな変化でいいんです。脳は習慣の生き物なので、環境やルーティンが変わると、それまでの思考パターンも変わっていきます。
記憶は消えなくていい
ここで知っておいてほしいことがあります。それは、嫌な記憶は無理に消さなくていいということです。
その記憶があるから、今のあなたがいる。痛い経験をしたから、人の痛みがわかるようになった。失敗したから、慎重になることを学んだ。傷ついたから、優しさの大切さを知った。
記憶そのものは消えなくていい。ただ、その記憶に支配されないようになればいいんです。思い出しても、心がざわつかなくなる。「そんなこともあったな」って、遠い昔の出来事のように思えるようになる。
時間が解決してくれることもあります。でも、時間に任せるだけじゃなくて、自分から記憶との距離を取っていく。それが、自分を守ることなんです。
今日から、少しずつ
忘れたいのに忘れられない記憶から自由になるために、今日からできることがあります。
「忘れよう」と頑張るのをやめること。嫌な記憶が浮かんできたら、それを認めて、すぐに意識を別のことに向けること。体を動かす時間を作ること。楽しいと思えることに集中する時間を持つこと。寝る前のルーティンを変えてみること。
どれも小さなことです。でも、この小さな積み重ねが、あなたの心を少しずつ軽くしていきます。
夜、ベッドに入った時、以前よりも穏やかな気持ちで眠れる日が必ず来ます。朝、鏡を見た時、少し明るい表情の自分に出会える日が来ます。
その記憶はあなたの一部です。でも、あなたのすべてじゃない。あなたには、これから作っていく新しい記憶がたくさんある。楽しい記憶、温かい記憶、穏やかな記憶。
今この瞬間から、そういう記憶を一つずつ重ねていきませんか?
過去に縛られるんじゃなくて、今を生きていく。その選択は、いつだってあなたの手の中にあるんです。
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