バイト副業の住民税、普通徴収が効かない理由
「その節はうちの近くの…」なんて誰かに聞かれたら答えに困る話ですが、確定申告で住民税の欄に「普通徴収」の丸をきちんとつけたはずなのに、5月のある日、市役所に電話をかけながら受話器を持つ手から血の気が引いていくのを感じたことがあります。
副業の収入を会社に知られたくなくて、確定申告書の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄で「自分で納付」を選んだ。手続きはそれで完了のはずでした。でも、本当にそれだけで安心していいのか——同じような疑問を抱えている方は少なくないと思います。
「普通徴収にチェックすれば大丈夫」で終わらない理由
副業をしている会社員や主婦の方から、こんな不安をよく聞きます。
確定申告書で普通徴収にチェックしたのに、本当に会社に住民税額の変化は伝わらないのか
副業がアルバイトやパートの場合、事業所得や雑所得の副業と同じ扱いでいいのか
自治体や会社の運用次第で、結局は天引きに戻されてしまうのではないか
特に副業が給与所得(アルバイト・パートなど)の方は、ネットの情報の多くが事業所得・雑所得の副業を前提にしていて、自分のケースに当てはめられずモヤモヤした経験がある方も多いはずです。
住民税は天引きが原則というルール
会社員の個人住民税は、地方税法第321条の4等により原則として特別徴収(給与からの天引き)で徴収することが法律で義務付けられています。大阪府内の自治体では平成30年度から、すべての事業主を特別徴収義務者として一斉に指定し、この原則を徹底しています(出典: https://www.pref.osaka.lg.jp/o050040/zei/alacarte/juminzei_tokucho.html)。
つまり、住民税は本来「会社が天引きして納める」ものであり、「自分で納付する」普通徴収は例外的な扱いだという前提をまず押さえておく必要があります。
普通徴収に変えられるのはごく限られたケースだけ
東京都主税局のサイトでは、特別徴収の例外として普通徴収が認められるのは、次の4つの条件に当てはまる場合だけだと説明されています。退職者または退職予定者(5月末日まで)、給与が少なく特別徴収しきれない者、給与の支払期間が不定期な者、他の勤務先の給与からすでに特別徴収されている者(乙欄適用者)、の4つです(出典: https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju/tokubetsu/about)。
これらに当てはまらない場合、事業主は給与支払報告書の提出時に「普通徴収切替理由書」を添付する必要があり、普通徴収にするかどうかは従業員自身の意思だけでコントロールしきれない部分がある、という点は覚えておいて損はありません。
バイト・パートの副業は、実はチェックが効かないことがある
副業が事業所得や雑所得(業務委託やフリーランス収入など)であれば、確定申告書第2表の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄で「自分で納付」に丸をつけることで、その分の住民税を普通徴収に切り替えられます。市・県民税申告書でも同様の欄が用意されています(出典: https://www.nishi.or.jp/kurashi/shizei/kojinshiminzei/nouzeihouhou/Heicyou.html)。
ところが、複数の会社から給与(給与所得)を受けている場合、一部の支払者からの給与に係る税額だけを普通徴収にすることは法律上できません。副業がアルバイトやパートなど「給与所得」にあたる方は、このチェック欄だけでは副業分の住民税を本業の給与と切り離せない可能性が高いということです。
20万円以下でも、住民税の申告は必要
所得税には「給与を1か所から受けていて、各種所得の合計額が20万円以下なら確定申告は不要」という、いわゆる20万円ルールがあります(出典: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm)。
ただ、このルールは住民税には適用されません。目黒区の公式FAQでも「所得税では給与所得以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要だが、住民税では源泉徴収制度がとられていないことなどから給与所得と合わせて申告する必要がある」と明記されています(出典: https://www.city.meguro.tokyo.jp/zeimu/kusei/faq/juminzei-8.html)。副業の額が小さいから申告しなくていい、というわけにはいかない点は要注意です。
この記事のこの先でお伝えすること
ここから先では、次の5つの実務ツールと、私が実際に経験した「すり抜けかけた顛末」の一部始終をお伝えします。
事業所得型・給与所得型の対応早見表
給与所得の副業で普通徴収にできない場合の確認事項チェックリスト
副業所得別に見る住民税増加額の試算表
自治体への「念のための確認電話」で使えるコピペスクリプト
申告漏れ・無申告リスクのチェックリスト
副業の種類別・対応早見表
まず、副業の所得の種類によって「普通徴収チェックが効くかどうか」がまったく違う、という点を整理しておきます。コピーして使える早見表としてどうぞ。
副業が事業所得・雑所得(業務委託、フリーランス収入、フリマ収入など)の場合
普通徴収チェック: 効く
対応: 確定申告書第2表の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄で「自分で納付」を選べば、その分の住民税は自分で納付書払いになる
副業がアルバイト・パートなど給与所得の場合
普通徴収チェック: 単独では効かない可能性が高い
対応: 複数の給与のうち一部だけを普通徴収にすることは法律上できないため、まずは自分の副業先の給与が「乙欄」適用になっているかを確認し、自治体の窓口に個別に相談する必要がある
事業所得・雑所得とアルバイトの両方をしている場合
普通徴収チェック: 事業所得・雑所得分のみ効く
対応: 給与所得分は上記と同様に個別対応が必要。申告書上でも所得の種類ごとに切り分けて記載する
給与所得の副業で普通徴収にできない場合の実務的な代替手段
副業が給与所得の場合に確認しておきたい項目をチェックリストにしました。
副業先の給与が「乙欄」適用になっているか、副業先の給与担当に確認する
確定申告書を提出したあと、5月頃(税額決定通知の準備が進む時期)に自治体の税務課へ「普通徴収の設定になっているか」を電話で確認する
自治体の窓口で普通徴収の例外区分に該当するかどうかを尋ねる(区分の呼び方は自治体によって異なる場合があるため、名称にはこだわらず「普通徴収にできる条件に当てはまるか」を聞く)
万一「本業と合算されそうだ」と言われた場合、その場で「普通徴収に変更してほしい」と明確に伝え、担当者名と対応内容をメモしておく
会社にバレる住民税額のシミュレーション
会社の経理担当者は、税額決定通知書に記載された「年税額」と「毎月の徴収額」を見ることができます。本業の給与だけでは説明がつかないほど税額が多いと、副業を疑われる可能性がある、という点はすでにお伝えしたとおりです。
ここでは、住民税(所得割)がおおよそ所得の10%程度とされている(目安)という一般的な計算方法を使って、副業所得が上乗せされた場合の税額増加のイメージを試算してみます。あくまで簡易な目安であり、実際の税額は控除の内容や自治体によって変わる点はご了承ください。
副業(給与所得)の年間所得が10万円ほど上乗せされた場合: 住民税(所得割)の増加はおおよそ年1万円、月割りで800円程度の増加(目安)
副業所得が30万円ほど上乗せされた場合: 年3万円、月2,500円程度の増加(目安)
副業所得が50万円ほど上乗せされた場合: 年5万円、月4,000円程度の増加(目安)
本業の年収や控除の状況によって「不自然」に見える増加額の感覚は変わりますが、月々数千円単位の増加でも、経理担当者が過去の通知と見比べれば気づく可能性はゼロではない、という前提で考えておくのが安全です。
実体験の全容:「普通徴収に丸をつけたから安心」の罠
結論から言うと、私は確定申告でちゃんと「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れたのに、会社にバレる寸前までいきました。
5月中旬、ネットで見かけた「役所は見落とすことがある」という話がどうしても気になり、地元の市役所の税務課に電話をかけました。「私の住民税、普通徴収になっていますか?」と聞いてみたんです。
職員さんの返答は、今思い出してもゾッとします。「あ、本当だ。確定申告書には普通徴収と書いてありますね。でも、システムが自動で本業の給与と合算しちゃって、会社に通知するデータが作られかけています。……あ、今なら手作業で直せますので、普通徴収に変えておきますね」
受話器を持つ手から血の気が引いていくのが分かりました。もし、あのとき「まぁ大丈夫だろう」とそのまま放置していたら、6月に副業分の住民税が上乗せされた通知書が会社の総務に届き、一発でアウトになっていたはずです。
国の確定申告書にどれだけ正しく記入しても、自治体側のシステムや目視の確認段階で「スルーされる」ことが実際にある、というのが私の体験からの実感です。逆に言えば、お役所仕事を鵜呑みにせず、5月に「念のための確認電話」を1本入れたこと、その泥臭い一手間だけが今の状況を守ってくれました。
自治体への「念のための確認電話」スクリプト
私が実際にかけた電話の流れをもとに、そのまま読み上げられるスクリプトにしました。
お世話になります。個人住民税について確認したいのですが、確定申告書で副業分の住民税を普通徴収(自分で納付)として提出しました。現在、私の分の住民税が特別徴収と普通徴収、どちらの設定になっているか確認いただけますでしょうか。もし特別徴収(給与天引き)として処理されそうな場合は、普通徴収への変更をお願いできますか。
電話をかけるタイミングの目安は、確定申告後から5月末(税額決定通知が作成される前)までです。担当者の名前と回答内容は、後から確認できるようメモしておくと安心です。
申告漏れ・無申告リスクのチェックリスト
住民税には所得税のような「20万円以下は申告不要」という特例がないため、申告前に次の点を確認しておきましょう。
副業の所得が20万円以下でも、住民税の申告(市・県民税申告、または確定申告)は必要という前提で動く
確定申告をした場合は、住民税の申告を別途する必要はないが、確定申告書の住民税欄の記載漏れがないか見直す
確定申告をしない年でも、副業所得がある場合は市区町村への住民税申告が必要になる場合があるため、お住まいの自治体の申告要否を確認する
申告を忘れていた場合、無申告加算税や延滞金が発生する可能性があるため、気づいた時点で早めに自治体・税務署に相談する
おわりに
副業の住民税は、「普通徴収にチェックしたから終わり」ではなく、事業所得か給与所得かで対応が変わり、自治体側の処理ミスも起こり得る、という前提で向き合う必要があります。まずは今日、上の早見表で自分の副業がどちらのタイプに当てはまるかを確認するところから始めてみてください。
参考リンク
大阪府「個人住民税の特別徴収について」https://www.pref.osaka.lg.jp/o050040/zei/alacarte/juminzei_tokucho.html
東京都主税局「特別徴収税額の通知について」https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju/tokubetsu/about
西宮市「個人市民税の納税方法」https://www.nishi.or.jp/kurashi/shizei/kojinshiminzei/nouzeihouhou/Heicyou.html
国税庁 タックスアンサー No.1900 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
目黒区「住民税に関するFAQ」https://www.city.meguro.tokyo.jp/zeimu/kusei/faq/juminzei-8.html
