無駄のない道
裏の土手はかつて土の道であった。道幅も狭く車は滅多に通らなかった。
土手には桜が並び、その時期が来れば車の往来に特段注意を払うことなく、開花を眺めながら歩くことができた。
この道が舗装され道幅も広げられた。
以前は対向車が来ると、道路端スレスレまで車を寄せて、通り過ぎるまで待っていた。新道路上ではその心配がなくなった。不安が解消されたら、どの車も突っ走っていくようになった。
桜の時期だからといって、速度を緩めることもない。運転手はひたすら目的地だけに目を向けて走る。
あっという間に着いて、用事を終えたら、あっという間に帰ってくる。
「世界一短い道を持っている国はアメリカで、一番長い道を持っているのはインドだ」と、写真家の藤原新也さんが言っていた。
アメリカの道は無駄がなく直線を基準としており、インドのそれは無駄が多く曲線が多いということだ。
日本の道は、アメリカの直線式が下敷きとなって設計されているのだろう。
私も運転するからわかるが、邪魔されず、カーブがない広い直線道路を走るのはすこぶる気分がいい。途中見落としている箇所は多々あるとおもうのだが、振り返る余裕がない。
これが徒歩となれば、むしろ曲線コースに引き込まれる。回り道をしたり、路地裏へ足を踏み入れてみたり、またそのような入り組んだ道に並ぶ店屋さんには、珍しいものが並べられておるもので、それらが後々思い出の品となったりするのである。
さて今年も残り少なくなった。さすがに人生ともなれば、直線コースではいかぬこと、インドの道と同じである。
最短距離で目的に到達できれば、これに越したことはない。とはいえ、無駄のない道など味気ないと言えなくもない。
