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装花とは何か

花を飾ることから、空間に必要な価値を表現することへ


花は、空間の印象を変える。


一輪の花があるだけで、場の空気はやわらかくなる。
色が加わり、季節が生まれ、そこに人の感情が宿る。


では、装花とは何だろう。


花を飾ることだろうか。
会場を華やかにすることだろうか。
それとも、空間の中で花によって何かを表現することだろうか。


前回の記事では、空間装飾を「空間を装う行為」と定義した。


広義には、内装・インテリア・照明・植物・花・造形・サイン・ディスプレイなど、空間の印象や体験を形づくるすべての要素を含む。


一方で、狭義には、建築や内装の上に加えられ、空間の体験価値やブランド価値を高めるための装飾的表現を指す。


その空間装飾という大きな領域の中に、花を用いた表現がある。


それが、装花であり、空間装花である。



1. 装花という言葉が持つ印象


装花という言葉は、一般的には冠婚葬祭や式典の場で使われることが多い。


ウェディング装花。
会場装花。
高砂装花。
チャペル装花。
葬儀装花。
祭壇装花。
式典装花。


そこには、花によって場を整えるという意味合いがある。


結婚式であれば、新郎新婦の世界観や祝福の空気をつくる。
葬儀であれば、故人を偲ぶ場を整え、祈りや想いを花に託す。
式典であれば、その場の格式や特別感を花によって表現する。


つまり装花とは、単に花を置くことではなく、花を通じて場の印象を整える行為である。


ただし、装花という言葉だけでは、まだ少し範囲が狭く感じることがある。


なぜなら、花は冠婚葬祭だけに使われるものではないからだ。


フォトスタジオ。
ホテル。
商業施設。
店舗。
イベント。
展示会。
ブランド空間。


花は、さまざまな空間の中で使われている。


そこで私は、花を用いて空間そのものを装う行為を「空間装花」と捉えている。


2. 装花は、生花でなければならないのか


装花と聞くと、生花を思い浮かべる人は多い。


それは自然なことだと思う。


生花には、生花にしかない美しさがある。
瑞々しさがあり、生命感があり、その日、その瞬間にしか存在しない表情がある。


もし生花が半永久的にその美しさを保ち続けられるのであれば、私は生花で装花を行うのが最も自然で美しいと思っている。


しかし、空間装花は必ずしも一日限りのものではない。


ホテルやフォトスタジオ、商業施設、店舗などでは、数週間、数ヶ月、場合によってはそれ以上の期間、空間の印象を保ち続ける必要がある。


そのような長期的な空間装花においては、アーティフィシャルフラワーが有効な選択肢になる。


生花には生花の価値がある。
アーティフィシャルフラワーにはアーティフィシャルフラワーの価値がある。


どちらが上か下かではない。
どちらが本物で、どちらが代用品かという話でもない。


大切なのは、その空間に必要な価値に対して、どの素材が最も適しているかである。


生花は、瑞々しさや生命感、その瞬間の特別感を表現することに向いている。


一方で、アーティフィシャルフラワーは、長期設置や大型装飾、季節に左右されない表現、再利用性、メンテナンス性に優れている。


一本一本で見れば、アーティフィシャルフラワーの方が高価になることもある。

しかし、長期間にわたって空間を装い続ける場合、使い回しができ、美しさを保ち続けられるため、結果的にコストを抑えられることもある。


空間装花において大切なのは、素材の優劣ではない。


その空間の目的。
設置する期間。
求められる演出。
維持管理のしやすさ。
予算。
季節性。
再利用性。


それらを踏まえて、最適な素材を選ぶことである。


3. 装花と空間装花の違い


では、装花と空間装花は何が違うのか。


私は、こう整理している。


装花とは、花を用いて場を装うこと。


空間装花とは、花を通じて空間に必要な価値を表現すること。


装花は、比較的小さな単位でも成立する。


テーブルの上に花を置く。
受付にアレンジメントを飾る。
高砂に花を設える。
祭壇を花で整える。


それらは装花である。


一方で、空間装花はもう少し空間全体を捉える必要がある。


花をどこに置くのか。
どの高さに見せ場をつくるのか。
どこに奥行きを出すのか。
人はどこに立つのか。
写真にはどのように写るのか。
視線はどこから入り、どこへ抜けるのか。


空間装花は、花を大きく飾ることではない。


花を通じて、空間のスケールや奥行き、立体感、視線の流れを設計することである。


たとえば、ウェルカムスペースに花を置くだけなら、それは装花かもしれない。


しかし、その花が人の立つ位置や写真に残る背景、空間全体の印象まで考えられているなら、それは空間装花に近づいていく。


フラワーアーチも同じである。


花を集めてアーチを作るだけではなく、人がそこを通ること、そこに立つこと、写真に残ること、その場の記憶になることまで含めて考える。


そのとき花は、単なる装飾ではなく、空間体験をつくる要素になる。


4. 空間装花に必要なのは、花の技術だけではない


空間装花は、形だけで言えば誰でも作ることができる。


土台を作り、そこに花を挿していけば、ひとつの装飾物として形にはなる。


しかし、形になることと、空間装花として成立することは違う。


空間装花に必要なのは、花を美しく扱う技術だけではない。


その装花が、空間の中でどのように見えるのか。
人がどこに立ち、どこから見るのか。
写真に写ったとき、どのような背景になるのか。
どこに高さを出し、どこに奥行きをつくるのか。
メインとなる花をどこに置き、サブとなる花をどのように流すのか。


そうした空間全体の見え方まで考えて、初めて空間装花としての価値が生まれる。


さらに、空間装花にはビジネス視点も必要になる。


その空間は、誰のために存在しているのか。
お客様は、その空間をどのように使うのか。
その装花によって、どのような価値を生み出したいのか。


たとえばフォトスタジオであれば、装花はただの背景ではない。


撮影商品の一部であり、お客様がそのスタジオを選ぶ理由にもなり得る。


ウェディングであれば、装花は会場を華やかにするだけではない。


新郎新婦の世界観や、ゲストに残る印象を形にするものでもある。


商業空間であれば、装花は単なる飾りではない。


ブランドイメージや季節感を伝え、来店体験を豊かにするための表現にもなる。


つまり、空間装花とは、花を使って空間を飾ることだけではない。


お客様の事業や目的を理解し、その空間に必要な価値を、花によって表現することである。


5. 空間フローリストという考え方


私は、日本空間フローリスト協会、JSFAという協会を運営している。


そこでは、空間装飾全体ではなく、主に花を用いて空間を装う「空間装花」のレッスンを行っている。


たとえば、ウェルカムスペース。
フラワーアーチ。
フラワーチェア。
吊り下げ装花。
フォトシーンで使える花の装飾。


これらは、単に花を美しく飾るだけでは成立しない。


人がどこに立つのか。
写真にどう写るのか。
空間のどこに高さを出し、どこに奥行きをつくるのか。
その場の印象を、花によってどう変えるのか。


そうした視点を持って、花を空間の中で機能させる必要がある。


私は、こうした空間装花を扱う人たちを「空間フローリスト」と呼んでいる。


普通のフローリストが花を美しく扱う人だとすれば、空間フローリストは、花を通じて空間を装う人である。


花単体ではなく、空間の中で花をどう機能させるか。
その場の印象や、写真に残る体験をどうつくるか。
そこまで考えて花を扱う人である。


6. 花を通じて、空間に必要な価値を表現する


装花は、花で場を装うことである。


そして空間装花は、花を通じて空間に必要な価値を表現することである。


生花か、アーティフィシャルフラワーか。
大きいか、小さいか。
華やかか、静かか。
固定するのか、移動できるようにするのか。


それらはすべて手段である。


大切なのは、その空間に何が必要なのかを考えること。


そこに花があった方がいいのか。
なくてもいいのか。
あるとすれば、どのような花で、どのような形で、何を表現するのか。


花は美しい。


けれど、その美しさを空間の中でどう生かすのかを考えなければ、装花はただの飾りで終わってしまう。


空間装花とは、花を通じて空間に必要な価値を表現すること。


それは、花の技術であり、空間を見る力であり、お客様の目的を理解する力でもある。



次回は、空間装花でも用いられる「アーティフィシャルフラワー」という素材について考えていきます。


RETHECITY JOURNAL

RETHECITY JOURNALは、空間装飾・空間ディスプレイ・空間デコレーションの領域から、空間価値について考えるジャーナルです。

リザシティジャパン株式会社では、花・植物・造形・アーティフィシャルフラワー・フェイクグリーンなどを用いた空間装飾を手がけています。


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