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【殿堂入り記事】創業期からユニコーンを支えた投資家が教える、解像度の高い事業構想の描き方



「スタートアップとは、ビフォーとアフターを説明する道具だ」——この一言で、事業構想というものの見え方がまるごと変わった。


スタートアップの本質は「変化の説明」だった

事業計画を立てようとすると、どこから手をつければいいかわからなくなる。

ビジネスモデルを考えようとしても、何をどう考えればいいかが曖昧なまま、フレームワークだけが増えていく。

でも今日聞いた言葉は、そういう詰まり方を一気に解消するものだった。


スタートアップとは、「ビフォーとアフター」を説明している道具だ。


世界がこうだった(ビフォー)。でも今、こうなっている(アフター)。その変化の説明を、事業というかたちで体現していく——それがスタートアップだというのだ。

たとえばこういうことだ。

  • ビフォー:名刺は紙で管理するしかなかった → アフター:Sansan でデジタル化・検索可能になった

  • ビフォー:ホテルの運営は人手に頼る部分が大きかった → アフター:スクイーズがチェックイン・清掃をITで効率化した

  • ビフォー:月へのモノの輸送手段は存在しなかった → アフター:ispaceが月面輸送を事業化した

どれも、「世界が変わった」という事実を事業で体現している。

逆に言えば、変化のないところにスタートアップは生まれない。 変化がないということは、ビフォーとアフターがないということだから。


「変化を見つける」が、事業構想の唯一の入り口

では、どこから考え始めればいいか。

答えはシンプルだった。

まず変化を見つけること。事業計画はその後。

「事業計画書を書こう」「ビジネスモデルを設計しよう」より、もっと手前の話だ。

  • 友達が最近お金を使い始めているものは何か

  • 昔使っていたアプリで、今誰も使っていないものは何か

  • 親世代が「最近これが大変になった」と言っていることは何か

こういうことを、机の前で唸って考えるのではなく、喫茶店で話しながら、スマホを眺めながら、日常の中でキャッチしていく。

そしてその変化を捕まえたとき、問うべき問いがある。

「なぜ今まではこうだったのか。なぜこれからはこうなるのか」

このビフォーとアフターを、自分の言葉でクリアに説明できたとき、事業のコンセプトが初めて輪郭を持ち始める。


ビジネスモデルは「誰に、何を、いくらで」だけでいい

ビフォーとアフターが見えたあと、次に問うべきことがある。



誰に、何を、いくらで売るか


これだけだ。ビジネスモデルというのは、結局これを決めることだと聞いて、拍子抜けするくらいシンプルだと思った。でも実際、ここを曖昧にしたまま走っている事業がどれだけあるか。

一番わかりやすかった例が、宇宙ビジネスの話だ。

月面着陸船にペイロードを積んで運ぶ ispace のビジネスは、構造だけ見ればトラックの運送業と同じだという。荷主から「ここからここまで、1キロあたりいくら」で受注する。それを月でやっているだけだ。

壮大に見えても、「誰に何をいくらで」に分解すると途端に輪郭が見える。

同じテーマでも、「誰に何を」の設定を変えれば全く別の事業になる。レアアースを扱うにしても、採掘機器を売るのか、データ解析を政府に売るのか、掘り出した素材を工場に卸すのかで、別の会社になる。テーマは同じでも、「誰に何を」を変えれば事業は変わる。


なぜ今、日本でやるのか

「日本はスタートアップに向いていない」という空気を、自分もどこかで感じていた。

でもこの話を聞いて、その認識は相当ずれていたと思った。

競争の非対称性という観点が、特に刺さった。

中国で「これは儲かる」というビジネスが出ると、競合は50〜100社が現れる。日本では5社程度。

「5分の1になるか、100分の1で勝ち抜くか」——どちらが現実的かは、考えるまでもない。

さらに、日本が世界第3位のGDPを持ち、第2位の中国と隣り合っているという地理的・経済的な構造も、改めて考えたことがなかった。人口減少ばかりが語られるが、この「東アジアの縦のライン」というマーケット規模は、スタートアップにとって十分すぎるほどの土台だ。

加えて、日本の産業の多様さは世界でも異質らしい。宇宙、ロボット、化学素材、半導体、医療、アニメ、食、農業、スポーツ——これだけのものが一国に揃っている国は、アメリカでさえない。この50〜100年かけて積み上げてきた蓄積を、若い世代が解放していく。それが今の日本に求められていることだという見立ては、なるほどと思った。


「人手不足」は課題ではなく、チャンスの構造だ

日本もいずれ中国も、人口が減っていく。

この話を最初「課題」として聞いていたが、途中から**「チャンスの構造」として読み替えられる**ようになった。

人が余っている国では、AIを使う必然性がない。

10人でやっていた仕事を、採用できないから5人でやらなければならなくなる。そのとき初めて「やり方を根本から変えないといけない」という必然が生まれる。人手不足は、イノベーションの「強制力」になる。

これはすでに地方で静かに始まっている変化だ。大都市にいると実感しにくいが、地方の特定業種では「賃金を上げても誰も来ない」という状況がすでにある。その「詰まり」を解くための事業が、最も必要とされている事業だ。

そして重要なのは、AIに関しては、ベテランも若者も同じスタートラインに立っているということだ。20年の経験があっても、ChatGPTを使い始めたのは2〜3年前。今この瞬間は珍しく「経験値のアドバンテージが効かない」領域が生まれている。


投資家は「ビジネスプラン」を見ていない

Q&Aで、現役の起業家がこんな質問をした。

「AI分野でスタートアップに投資する基準は何ですか? AI技術が民主化されてきて、差別化がしにくくなっている中で、何を見て判断しているんですか?」

答えが予想外だった。

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