『盗作』と呼ばれる前に——英語論文のプレイジャリズム対策と引用ルール
「盗作」と呼ばれる前に
イギリスの大学院で「プレイジャリズム(Plagiarism=剽窃)」を指摘されると、最悪の場合、退学になります。
日本の大学ではあまり教わらないこのルール、入学前に知っておくと役立ちます。実際につまずいた経験から、対策と使えるツールを書きます。
日本の大学では、習わなかった。
イギリスの大学院に入って、最初の週に全生徒を集めて学校関係者から言われたこと。
「プレイジャリズム(Plagiarism)は厳しい。見つかれば退学もありえる」
僕は、その言葉の重さを、最初は正直わかっていませんでした。
プレイジャリズムとは何か
Plagiarismは、日本語で「剽窃(ひょうせつ)」と訳されます。他人の言葉や考えを、出典を示さずに自分のものとして使うこと。
「それって、コピペのことでしょ?」
最初、そう思っていました。でも、違いました。
たとえば、こういうケースもプレイジャリズムになります。
論文を読んで、内容を頭に入れて、自分の言葉で書き直した。でも出典を書かなかった。
これも、アウトです。
アイデアを借りたなら、出典を示す。言葉を借りたなら、引用符をつけて出典を示す。それが、アカデミックライティングの最低ルールです。
日本のレポートとの違い
日本では、「参考にしました」の感覚で書いてきたことが多かった。
授業のレポートでも、情報を集めて、まとめて、出す。出典は「参考文献」としてまとめて最後につける程度。
でも、イギリスのアカデミックライティングは、もっと細かい。
本文中に、引用があるたびに「(著者名, 出版年)」と記す。引用した文のすぐ後に、誰の言葉なのかを明示する。参考にした主張なら、「(著者名, 出版年)によれば〜」と文の冒頭で示す。
これがAPA形式であり、Harvardスタイルです。
最初の週、このルールに慣れるだけで頭がいっぱいでした。
実際にやらかした失敗
Presessional Courseの最初のエッセイ。僕は、論文を読んで内容を要約し、自分の意見を加えて提出しました。出典は一応つけましたが、本文中の引用表示が抜けていた。
フィードバックには、こう書かれていました。
"Ensure that in-text citations are consistent throughout."
「プレイジャリズム」という言葉は使われていなかった。でも、次のエッセイまでに直さなければ、評価に響くことは明らかでした。
そこから、文献管理ツール(Refworks公式サイト・Zotero公式サイト)の使い方を覚え、論文を読みながら引用箇所をその場でメモする習慣をつけました。
パラフレーズの壁と、使えるツール
英語で論文を書くとき、もう一つの壁がありました。パラフレーズ、つまり「他者の言葉を自分の言葉で言い換える」技術です。
直接引用ばかりでは、エッセイの文章が借り物だらけになる。でも、うまく言い換えられない。
そこで使い始めたのが、QuillBot公式サイトです。
文章を入力すると、意味を保ちながら別の表現に言い換えてくれるツールです。「こういう意味のことを英語でどう言い換えるか」を確認するのに、ものすごく助かりました。
ただし、注意点があります。QuillBotで言い換えても、出典は必要です。「言い換えたから出典は不要」は間違いで、アイデアの出所を示すことが目的だからです。
ツールはあくまで補助。判断は、自分でする。その意識が、プレイジャリズムを防ぐ唯一の方法です。
文法チェックには Grammarly公式サイト も使っていました。ネイティブが読んで自然かどうかの確認に重宝します。
AIと剽窃の新しい問題
2023年以降、多くのイギリス大学院でAI生成コンテンツに関するポリシーが策定されています。ChatGPTなどのAIで生成した文章をそのまま提出することも、プレイジャリズムとして扱われるケースが増えています。
「AIで書いて、QuillBotで言い換えれば大丈夫では?」
そうはなりません。多くの大学がAI検出ツール(Turnitin AIなど)を導入しています。
AIを使うなら、「アイデアの壁打ち」「構成の確認」「英語表現の参考」にとどめ、最終的な文章は自分で書く。その一線は、守り続けた方がいいです。
「引用する」ことは、弱さではない
日本で育った感覚だと、「人の言葉を借りる」ことは、なんとなく自分の意見の少なさを証明しているように感じることがあります。
でも、イギリスのアカデミズムでは逆です。適切に引用できることは、「先行研究を読んでいる」「議論の文脈を理解している」という証拠として評価されます。
出典をつけることは、ルールでもあるけれど、「僕はここから学びました」という敬意の表明でもある。
その考え方に触れたとき、引用に対する苦手意識が少しだけ消えました。
もしイギリスの大学院を目指しているなら、今から引用の練習を始めてみてください。入学後に最初につまずくのは、英語力より先に、このルールだと思うから。
引用ルールを理解した上で英文を書いたら、提出前に三段構えで仕上げるのが現実的だ。
文法チェックにはLanguageTool、
章ごとのAI校正にはLanguise、
最終稿の人間添削にはアイディーが使える。
ツールの詳しい比較は「2018年に修士論文を書いた私が、今の英語ツールを本気で評価してみた」にまとめた。
論文の全体管理には「修士論文をNotionで管理する方法」も参照してほしい。
シツカン / リワーク・アベール
博物館学修士(University of Leicester, Merit)| エンジニア | リワーク経験者
Amazon著書:ウマをシマウマに塗り替えない。: 脱・パクリ英語論文(プレイジャリズム、盗作、剽窃)。正々堂々と「自分の表現」を再構築する技術 Ver. 1.0~
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