イギリスの冬と精神衛生——日照時間が短い国での1年
by シツカン(University of Leicester 博物館学修士・Merit)
留学前に誰も教えてくれなかったことがある。
イギリスの冬は、精神に来る。本当にシャレにならない。
日照時間の話
レスターの冬(12月)の日の出は8時すぎ、日の入りは15時40分頃だ。つまり昼間の時間が7時間ちょっとしかない。体感は3時間くらいしかないと一番短い日照時間の期間には感じていた。
しかも晴れることが少ない。曇り・小雨・霧が続く日が何週間も続く。太陽を見ない日が普通にある。
日本の冬でも日照時間は短くなるが、イギリスのそれとは次元が違う。
実際に起きたこと
11月頃から「なんとなくやる気が出ない」「朝起きられない」「論文を書く気になれない」という状態になった。
修士課程は課題の締め切りが秋学期の終わりに集中していた。一番しんどい季節に、一番大変な時期が来る。この構造は事前に知っておきたかった。
対策として有効だったこと
① 朝に外に出る :曇っていても外に出ることで光を浴びる。室内にいる時間を減らす。
② 運動を習慣にする :大学のジムは学生証で使えた。週に2〜3回行くようにしてから、気分の低下がある程度安定した。
③ 人と話す機会を意識的に作る :図書館で一人作業する時間が増えると孤立感が高まる。ゼミの仲間とのランチやコーヒーの時間を意識的に設ける。
④ 帰国・旅行のスケジュールを作る :「〇月になったら旅行する」という予定が頭にあると気持ちが安定した。先の楽しみを設定することが有効だった。
SAD(季節性感情障害)について
Seasonal Affective Disorder(SAD)という、日照時間の減少によって引き起こされる季節性のうつ症状がある。
光療法ランプ(Light Therapy Lamp)がドラッグストアで売られており、実際に使っていた同期もいた。
「やる気が出ない」「気分が重い」が数週間続く場合は、環境(日照時間の少なさ)が影響している可能性を考えてみる価値がある。
正直な話
イギリス留学をしていた人間として書く。
日照時間の少ない環境は、もともとメンタルヘルスに課題がなくても相当きつい。「頑張れば乗り越えられる」ではない。環境の影響は実在する。
留学前にメンタルヘルスの状態を確認して、必要であれば準備(主治医との相談、薬の持参、SOS先の確保)をしておくことを勧める。
春以降は別の国になる
4月頃から日照時間が急速に伸び始める。木々に葉が戻り、花が咲き、街の雰囲気が一変する。夜は明るく11時まで昼のよう。そこらじゅうに薄着の人が寝そべっている。
あのコントラストは、イギリスの冬を経験した人にしかわからない感覚だ。春の光のありがたさを人生で最も実感した1年だった。
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この記事を書いた人:シツカン。University of Leicester 博物館学修士(Merit)。2018〜2019年、適応障害と共にレスター在住。
次のステップ
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