#03 同じ100坪でも、価値が全く違く理由
前回、不動産会社は
土地の購入前に、私たち建築の専門家に依頼し、土地の条件や建てられる建物の規模、周辺環境を把握している
というお話をしました。
では、実際にどんなことを調べているのか、気になりませんか。
中には
「土地は広さで決まる。つまり、広さ × 周辺の相場だ」
と考えている方も多いかもしれません。
しかし、実際の売買ではそう単純ではありません。
同じ100坪の土地でも、数千万円以上価値が変わることは珍しくないのです。
なぜでしょうか。
何坪の土地かよりも、何坪の建物が建つか
私は建築設計の仕事だけでなく、
不動産会社が土地を購入する際の「用地検討」にも数多く関わってきました。
用地検討は、私たちの業界では
「ボリュームチェック」 と呼ばれています。
Volume(体積・量)という言葉の通り、
私たちが見ているのは土地の広さそのものではなく、
その土地に、どれだけの“建物の量”が載るのか
という点です。
100坪の土地に高さを掛けると、体積になります。
その体積が大きいほど、多くの床面積を確保できる。
つまり、
・どこまで高い建物が建てられるのか
・どれくらいの床面積が確保できるのか
これを購入前に調べる行為が、ボリュームチェックです。
なぜおなじ100坪の土地で価値が違うのか。
例えば、同じ100坪の土地でも、
Aの土地:高さ10mの建物が建つ
Bの土地:高さ20mの建物が建つ
場合、体積はまったく異なります。
Aの土地:体積 約1,000坪
Bの土地:体積 約2,000坪
※わかりやすく体積も坪と表現しています。
仮にこの2つの土地が同じ地域
(平均100万円/坪)にあるとすれば、
不動産会社がBの土地を欲しがるのは当然です。
Bの土地であれば、
Aより高い金額で購入しても事業として成立するからです。
土地の体積(=価値)に影響する条件
土地の体積、すなわち価値に影響する要因は数多くあります。
その多くは 建築基準法 に定められています。
だからこそ、不動産会社は
建築の専門家にボリュームチェックを依頼するのです。
例えば、次のような条件です。
前面道路の幅
道路と敷地が接している長さ
用途地域(建てられる用途の制限)
敷地の形状(東西に長い、南北に長い 等)
これらによって、
建てられる建物の大きさ
現実的な使い方
は大きく変わります。
つまり、
「何坪あるか」よりも
「何坪まで建てられるか」
の方が、はるかに重要なのです。
用地検討「ボリュームの例」
私が関わった用地検討の例を一つだけご紹介します。
同じ地域、同じ道路に接した、
ほぼ同じ大きさ(約100坪)の土地が2つありました。
周辺相場は、どちらも約250万円/坪。
地主の方はいずれも
「2億5,000万円くらいで売れるだろう」
と考えていたと思います。
結果はこうでした。
Aの土地:複数社が競合し、約3億円で売却
Bの土地:2億円を下回る価格でも買い手がつかず
理由は明確でした。
Aの土地:建物を約600坪まで建てられる
Bの土地:建物は約350坪までしか建てられない
この差です。
Bの地主は
「なぜ値下げしても売れないのか」
と感じていたかもしれません。
一方でAの地主は、
本来もっと強気の交渉もできた可能性があります。
実は、土地売買の9割以上は途中で頓挫しています。
用地検討を経て、実際に売買が成立するのは
およそ 5〜10%程度 です。
多くの場合、
高く売りたい地主
採算が合わない不動産会社
この間で交渉がまとまりません。
中には、事情があり
「早く売りたい」方もいれば、
逆に
「本来もっと高く売れたはず」
というケースもあります。
本来、建築家はフェアに知識を提供すべき
これまで私は、不動産会社に対して
こうした知識や技術を提供してきました。
しかし、
それが企業側だけの利益になっている現状に、
違和感を覚えるようになりました。
本来は、
何が建てられるのか
どんな使い方ができるのか
を知った上で、
そのまま持つ
リフォームする
建て替える
売却する
という判断ができるべきだと考えています。
これまで売却を例にお話をしていましたが、本来であれば売却に至る前にそれ以外の選択肢があることが当然です。
その機会を、
建築家が一般の方にも提供できるのではないか。
それが、この連載を書いている理由です。
福永隆太郎建築設計が伝えたいこと
土地や建物の判断は、
「いくらで売れるか」から始めるものではありません。
本来は、
・この土地に何が建てられるのか
・どのくらいの規模が現実的なのか
・どんな使い方が考えられるのか
こうした“前提条件”を知った上で、
はじめて選択肢が見えてきます。
その結果として、
・そのまま持つ
・リフォームする
・建て替える
・売却する
という判断が、納得感をもって選べるようになります。
決断を急ぐ必要はありません。
ただ、
「知らないまま決めてしまう」ことだけは、
避けられるはずです。
※ボリュームチェックは建築家、建築士であればだれでもできるものではありません。

