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せんべいをかじる

 土曜日は資格取得のために通学をしている。
 約四ヶ月の通学もいよいよ今日と次回のあと二回のみ。順当にいけば。今日はこれまでの振り返り試験で、合格者のみ、次回の修了試験に挑める。

 いつもは五人の受講生みんな、和やかでわいわいしているクラスであったが、さすがに今日は、朝から雰囲気が重い。講師も初めてあたる人だった。

 午前中は次回の試験にも出題される範囲の座学を受けて、午後からいよいよ試験だ。

 昼の休憩時間、普段の半分以下の声量で、受講生同士で問題を出し合う。正解でも不正解でも緊張感はまるで失せず、空気のよどみに疲れてしまう。と思ったら、他の受講生たちも同様だったらしい。唐突に、健康診断のできごと、飼い猫のおもしろエピソード、近所の人の噂話……笑い声を誘う展開となった。
 そこから自然にお菓子交換が始まる。「どうぞ」も「ありがとう!」も、誰もがワントーン高く放つ。すっかり馴染みの空気に変わる。ひとりがふらっと喫煙に向かうと、ひとりは気分転換の散歩に出かけ、わたしはトイレへ行った。

 教室に戻る。
 室内にはわたしの前の席の女性がいるのみ。テキストと自主学習ノートとを必死に読み比べている。
 出題範囲をとりあえずルーズリーフに書き写しはしたのみのわたしは、彼女くらい熱心に復習したところで、合格できるだろうか。やる気がないわけではない。時間が取れなかったと言えば誰でもそうだ。社会人向けの通学講座なのだから、みな仕事や家庭の事情の合間に受講している。

 わたしの席には、さっきのお菓子交換でいただいたおやつが広がったままだ。
 せめてルーズリーフを読み返すくらいはしなければ。ファイルから、書いたのみのわたしの学びを取り出す。目を通すと「こんなこと講師が言ってたな」とどこか遠くの思い出を振り返る気分になった。こんなことあったな、じゃなくて、身につけて答えて実際の現場で活かさなくてはならないのに。

 ゆっくりと息を吐く。
 おやつに手を伸ばす。サラダせんべいの個包装を開ける。きんと張り詰めた無言の中、せんべいに歯を立て、砕く。堂々とばりばり音を立て、四口で二枚のせんべいを食べた。
 どうしたって今日はこんな空気になる。重苦しさに飲み込まれるくらいなら、少しでも振り払ったほうが気楽じゃないか。
 雑談と同じ。日常の話をこぼすつもりで、せんべいをかじる。試験に普段を持ち込んで、どうか平常心となれ。


文学フリマ大阪


9/13(日)
・12:00〜17:00開催
(→16時には撤収予定です)
・インテックス大阪
(→〒559-0034
  大阪府大阪市住之江区南港北1丁目5−102)
・入場無料

・ぎゅっとしょてん
・え-29
・エッセイ


 試験に落ちたら出店どころやないなあ……。
 最後にブース番号と同じく、ええにく食べて祝杯があげられますように。

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