異星人アリサと閻魔さまのトリセツ第8話「閻魔さまの視点:イスラム社会と女性」【連載小説】
アリサが続けた。
「なるほど。国や宗教が違えば、閻魔さまもいろいろとご苦労されるのですね。そういえば、この間、イスラム教徒の女性の公開処刑動画がX(旧ツイッター)に流れていました。今から20年以上前の映像ですけど、その女性の罪はレイプされたことでした。加害者は鞭打ちの刑で済んだのに、なぜ被害者が処刑されるのかと衝撃を受けた視聴者からの怒りと疑問のコメントで溢れていました。西欧諸国の人々も日本人も、この状況を理解するのは難しいです。これは私の推測ですが、かつて女性がスルタン(イスラム教の世界で君主又は支配者の称号)だった時代に起きたことがイスラムの男性にトラウマを与えたのが原因かとーー。それでも今の時代にはそぐわないですよね。閻魔さまは、そんな被害女性の霊魂がここに来た時、どのような配慮をされますか?下界では、他国の罰則に異議を唱えることはタブーとされていますけど」
すると、閻魔さまはこう返した。
「そりゃ下界では簡単な話ではありませんよ。文化背景というのは、それぞれ違うようにできていますからね。だから、“ナゼ”という問いは、そもそも当てはまらないのです。多くの人々にとって納得がいかない話でしょうがーー。ただ、人の一生というのはドラマそのものです。一人一人に役が与えられ、大きな舞台でその役割を果たしていく。特に地球人は、そのミッション性が際立っています。そもそも地球人の寿命が短いのは、地球人の知能に合わせて、苦しみが長引かないように創造主が仕組んだ節があります。地球は未開の地ですからね。そんな場所で永遠の命を持てば、不幸な人たちだらけになってしまうでしょう。ただ、地球人には下界の一生がすごく長く感じられるでしょうが、天界から見ればほんの一瞬にしか過ぎません。他の惑星では時間が未来から過去へと流れていますが、地球では過去から未来へと進みます。そのため、文明や文化、感性、そして探求心に関しても、非地球人の視点だけで地球の出来事や特質を語ることは難しいのです。そういうわけで、そのような霊魂がここに来たときに、私は他の霊魂と同じように対面するだけです。所謂サウンディングボードの役割をしているだけですから。先ほどの例のようにレイプされた挙句、被害者側が処刑までされれば、衝撃が大きすぎます。ただし、被害女性は苦しみの呪縛から逃れられた気持ちになっているようですよ。私との対話後、天界へ喜んで発たれる霊魂がほとんどですから」
その声には、またもや達観した響きがあった。
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第9話「閻魔宮殿で起きた究極の珍事」に続く
