異星人アリサと閻魔さまのトリセツ第13話「真由美の死と飼い犬リッチーの不審死」【7割リアル連載小説】
ある晩、居間で酔っ払った真由美は、回転椅子ごと床に転げ落ちてしまった。
その時、おそらくテーブルを蹴飛ばしたのだろう。
家族が真由美を見つけたとき、重いテーブルは定位置から1メートルも動いていた。彼女の左額にはみるみるうちに大きなタンコブができ、床には左膝から流れた血で、小さな水たまりが広がっていた。
緊急搬送された病院で二週間も眠り続ける真由美を見て、家族は途方に暮れていた。しかし、昏睡状態にある彼女は冥界で、もう一つの現実世界を見ていた。
◇
真由美が深酒に溺れるようになったのは、愛犬であるボーダーコリーのリッチーを失ったことが原因だった。
リッチーが亡くなったのは2024年10月8日、自宅の階段下で血を吐いて息絶えていた。翌月で15歳になるはずだったが、亡くなる当日の朝までボール遊びや散歩を楽しみ、大好物の牛肉も美味しそうに食べていた。
リッチーは人懐っこく、人や他の犬にも優しい性格だった。調教師による3か月の訓練のおかげで、誰に触られても嫌がらず、決して噛むこともなかった。
近年、ボーダーコリーの人気が高まり、散歩中にリッチーを撫でたがる人も増えていた。
異変が現れたのは2023年の秋頃、リッチーが亡くなる1年前のことだった。急に脚を引きずるようになり、2024年に入ると痙攣や下痢、吐き気、めまい、ふらつきといった症状が時折見られるようになった。
ただ、脚を引きずる以外の症状は数日で治まることが多く、獣医も原因を特定できず、老化の影響ではないかと語る程度だった。
リッチーの散歩は主に真由美の夫が担当していたが、夫が散歩から帰るたびに真由美は頭痛を感じるようになっていた。
誰かのシェディングの影響ではないかと疑い始めた矢先、それがリッチーのせいだと気づいて愕然とした。
頭痛の原因は、「打って安心計画」の薬剤によるものではないのか?
ネットで調べてみると、老犬がシェディングの影響で亡くなるケースが多発していることが分かった。
実際、noteには同じような疑いを持つ人の記事が増え、近所でも老犬が次々と亡くなり、関西に住む友人の近所でも同じような状況だと知った。老犬とはいえ、どうして何匹も同じ時期に亡くなってしまうのか。
その時、真由美は薬剤による老犬のシェディング被害の疑いが確信に変わった。
真由美は怖くなり、リッチーを誰にも触らせないと決めたが、急に駆け寄ってリッチーを触ろうとする人たちを止めるのは難しかった。夫にも誰にも触らせないよう頼んでいたが、あまり真剣に受け止めてもらえなかった。
その後ほどなくして、毎日散歩中に柴犬を連れた聾唖の女性がリッチーを執拗に撫で回していることを知った。
ある夕方、散歩に出かけた直後、夫がその女性に遭遇し、いつものようにリッチーが撫で回されてしまったようだった。
出かける直前、真由美は夫に
「絶対にリッチーを誰にも触らせないで!」
と強く念を押していたにもかかわらずだ。
その後、夫とリッチーが帰宅するなり、真由美は頭痛に襲われ、その出来事を知ることになった。
件の聾唖のシニア女性は、“打って安心計画”のワクチン接種が始まって以来、1年以上も杖をついていた。あの症状は薬害の影響ではなかったのだろうか。
◇
第14話へ続く
