耳ダンボ👂テーラー稲津の内緒話#55「養鶏場の近くで会った怪しい女」
東京に住んでいた頃のある日、都の調査ということでシニアの女性が家に来た。 玄関から見えたであろう私の本棚の洋書を見て、その女性は誇らしげにこう言った。
「ウチの長女は東京大学を卒業したあと、ハーバードで修士をとりましたの」
まあ、それはいい。 さぞかし自慢の娘さんなのだろう。
ただ、長男がいることは自分で話しておきながら、息子さんの学歴には一切触れなかった。 まあ、それもいい。
で、そのあとに話してくれたことが、妙に印象に残っている。
その女性の家の近くに養鶏場があったらしいのだが、 そこを訪問しようとした某企業の営業マンが、道すがら妙な女性に会ったという。
物凄く色白で、裾の長い白いドレスを着た細い女性が近寄ってきて、
「ここの養鶏場の鶏は、あまり栄養状態がよくありません。 鶏を食べるって、あんまりよくないみたいですよ」
と告げたらしい。
あとになって分かったことだが、同じような体験をした営業マンが何人もいたという。
恐らくだが—— あのか細い色白の女性って……鶏の“ゆうれい”だったんじゃないかって。 そんな噂が、もっぱら広まっていたそうだ。
◇
一度あの世へ行って戻ってきた人たちの話を取り入れています。残念ながら、生まれ変わる人はあまり多くないようです。
