「生もろこし」「もろこしあん」「茶菓仙」唐土庵いさみや 秋田県仙北市 和菓子なスクチャイ262 2026.01.25
和菓子なスクチャイ262 秋田県 > 仙北市
※くまの身長は7.5cm。大きさの参考に。
「生もろこし」「もろこしあん」「茶菓仙」唐土庵いさみや 秋田県仙北市


1.「秋田」の諸越は「飽きた」?
秋田名物もろこし(諸越)は吾輩中学生から高校にかけての春夏冬休暇の山形新庄酒田居候中、「東北ワイド周遊券」を使っての1回20日間の東北の旅で秋田を通るたびに何度も買っていたお土産だ。
自分も食べていたが、お土産で渡した中には「歯が悪いから諸越は苦手」と言い出す年長者もいて、吾輩も確かに固い、とは思っていた。
それで最近まで秋田に行っても昔食べ飽きた感もあって珍しくもなく、諸越は横目で見て懐かしいと思うだけでまったく買う気が起こらなかった。
2.「生」もろこし!?
ところが、だ。
固くなくフカフカの「生もろこし」というのが存在する、という噂を聞きつけた。
それで最近秋田駅に行った時、諸越を売っている駅ビル内の土産物屋さんに「生」があるかどうか訊いてみたのだ。
すると「もろこしの生」は一社しか作っていなくて、この(土産物フロアの)中ではあそこ(指をさす)の角の土産物屋さんしか扱ってないと教えてくれた。
自分のところの諸越を買わない客で他社の販売場所の商品になるのに、吾輩が尋ねたその別の諸越屋さんのおねえさんはとても親切であった。
固いのも嫌いでないので買ってもいいのだが・・・でも、これまで何度も食べているから味の想像がつくので面白味がないのだった。
それに引きかえ「ホクホクの生もろこし」は食べたことがないので是非食べたかったのだ。
そのおねえさんのお店では「今度何か買うからね」と心の中で誓ってから、吾輩はおねえさんに教えられたお店に向かった。

そこで、「生もろこし3種詰め合わせ」という吾輩のような初心者に便利な箱入りが売っていたのだ。
お値段も税込1,080円と比較的廉価だった。
3.箱を開けた



箱を開けてみると吾輩のような初心者向けということで、むちゃ上品に箱詰めされた小袋の3種類が少しずつ入っていた。
これだけで1,080円とな!?
大きいだけなのは箱だけやん!
と思ったが、ま、土産物というものはそんなもんだろう。
何はともあれ、喰うのだ。
4.食べた
4.1.生もろこし


箱には2個入りの小袋が4袋入っていた。
これが唐土庵(もろこしあん)の代名詞なのだそうだ。
独自の製法で乾燥や焼きを入れずに仕上げているようで、口に入れた瞬間に「ほろり」と解ける、驚くほどなめらかな口溶けだった。
小豆本来の濃厚な風味と上品な甘さがダイレクトに伝わってきた。
「諸越は硬くて苦手」という人の概念を180度変える逸品だろう。
4.2.もろこしあん


同じく箱には2個入りの小袋が4袋入っていた。
「生もろこし」の中に、さらに「小豆餡(こしあん)」を閉じ込めて丸く整形した、贅沢な二重構造のお菓子だ。
外側のしっとりした諸越生地と、中の柔らかな餡が口の中で一体になった。
「小豆で小豆を包む」という、小豆好きにはたまらない構成で、唐土庵の中でも特にファンの多い商品なのだそうだ。
4.3.茶菓仙(さかせん)


箱には2個入りの小袋が2袋入っていた。
これは生もろこしをさらに進化させたタイプで、もち米の粉(やましな)と粒小豆を載せ、見るからに上等な外観だ。
お茶の席でも扱いやすい上品なサイズ感で、まさに「茶菓子」としての完成度を追求した名前通りの一品だ。
4.4.シンプルな「生もろこし」が一番いい
以上、試食品のような「ミックス」を食べたら、今度はどれか気に入った種類だけのを同じ店で買えばいいのだ。
お店では「ミックス」の隣に、上の3種類の「生もろこし」がそれぞれ一種類ずつ入った商品も売っていた。
さて吾輩は3つのうちどれが一番気に入ったか?
どれも公平にすべて気に入った。( ´∀` )
が、強いてひとつ選ぶなら一番シンプルな「生もろこし」だ。
この3種類のミックスのうちの基調となっている、いわゆる「プレーン」だ。
今度買うなら「生もろこし」単品入りの箱やな、と決めたのだった。
5.諸越(もろこし)
「諸越(もろこし)」といえば、江戸時代から続く秋田の伝統菓子だが、その「硬くて乾燥している」という常識を覆した革命児こそが、角館に本店を構える「唐土庵(もろこしあん)いさみや」なのだ。
吾輩が秋田駅で買ったミックス箱は、唐土庵の「伝統と革新」を一度に味わえる、まさにベストセラーの詰め合わせとのことだった。
6.株式会社唐土庵いさみや の歴史と「革命」
昭和28年(1953年)に、「みちのくの小京都」と呼ばれる角館(仙北市)で創業した。
もともと諸越は小豆粉と砂糖を型打ちして焼き上げた「非常に硬い」お菓子だった。
しかし、先代の店主が「焼く前の、しっとりとした状態の方が小豆の香りが強くて美味しいのではないか」と考え、試行錯誤の末に、焼かずに仕上げる「生もろこし」を開発した。
諸越(もろこし)の「もろ」を「唐(から/とう)」、「こし」を「土」と書き換えた風雅な屋号だ。
7.「諸越」と「唐土」
「諸越(もろこし)」は秋田での正式な呼び名であり、「唐土(もろこし)」はいわゆる当て字だ。
7.1.「もろこし」という言葉のルーツ
もともと「もろこし」という言葉は古代中国の王朝名(唐など)や、広く「中国(大陸)」を指す言葉だった。
古来、中国のことを「唐土(もろこし)」と書いていた。「唐(もろ)の土(こし)」という意味だ。
このお菓子の原料である「小豆」や製法のヒントになったものが大陸伝来であった、あるいは「大陸から来たような立派なもの」という意味を込めて「もろこし(唐土)」という言葉が使われたと言われている。
7.2.「諸越」という漢字になった理由(秋田の伝説)
秋田で「諸越」という漢字が使われるようになったのには、江戸時代の秋田藩主佐竹公にまつわる有名なエピソードがある。
江戸時代、秋田藩の菓子職人がこのお菓子をお殿様に献上した。
その味に感動したお殿様が「諸(もろもろ)の菓子を越えて美味である」と褒め称えた。
「諸々の菓子を越える」という言葉から「諸越」という漢字が当てられるようになり、秋田の銘菓として定着したとのことだ。
8.「唐土庵」という屋号
「唐土庵(もろこしあん)」という店名は、この歴史を逆手に取った非常に知的なネーミングなのだ。
秋田の呼び名である「もろこし(諸越)」という音に、あえてその語源である「唐土(もろこし)」という漢字を当て、さらに、中の「餡(あん)」と、庵(いおり)をかけて「唐土庵(もろこしあん)」とした。
つまり「お菓子のルーツ(唐土)を大切にしながら、秋田の誇り(諸越)を美味しい餡(あん)と共に届ける」という意味が込められていると考えられるのだ。
9.角館の風土が生んだ味
角館は吾輩も歩いたが、武家屋敷が並ぶ格式高い町だ。
そこを訪れる観光客やお茶を嗜む武家の文化に合わせて、唐土庵は「諸越」を単なる駄菓子から贈答品としての「銘菓」へと昇華させた。
秋田駅ビルの物産フロアでこれらが並んでいるのは秋田を代表する「進化した伝統」として認められているからだそうな。
(おわり)
