初なすび 大松屋本家 山形県鶴岡市 和菓子なスクチャイ221 2026.01.27
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※くまの身長は7.5cm。大きさの参考に。
初なすび 大松屋本家 山形県鶴岡市





1.何度も電話する
これを食べてみたくて何度か本家に電話していたが、昨年(2025年)は時期を逃してしまい今年の冬にかけた。
今年の冬も行く予定が悪天候で鉄道が不通になり延期が繰り返され、いよいよ1月下旬になり「初なすび」もそろそろ製造が終わり在庫限りの販売ということを知った。
女将さんと思われる人には何度も電話するものだから声も覚えられてしまって、発送もできるのでその方がいいのでは?と何回か言われた。
確かに手に入れて食べるだけならその方が手っ取り早いし交通費や時間も節約できるので理に適っているのだが、吾輩の気持ちとしては老舗ほどその店頭まで出向いて購入したいのだ。
そこのところを何度か話して発送の依頼はしなかった。
2.いよいよ本家訪問
そしてついに1月下旬のある日、羽越本線が動いていることを確認して現地に行くことにしたのだ。
行くだけでは安心は出来ず、帰りもきちんと鉄道が動いてなくては困るので天気予報が気が気でなかった。最悪は、行ったはいいが帰って来れなくて2〜3日その辺のホテル住まい・・・などという費用も時間も浪費しかねないのが冬の日本海側の旅なのだ。
その日も夜からまた強い冬型の気圧配置でおよそ1週間は強風と豪雪が予想されていた。
本当に神経を尖らせる移動で、気が気ではないのだ。
3.唯一無二の和菓子
たかが砂糖漬けのなすびを手に入れるだけで・・・
・・・と言ってもそのなすびのお菓子が唯一無二で全国にも類を見ないし、国内で唯一ということは世界で唯一となり、果ては宇宙で唯一ということになる。
そんな貴重なお菓子が今も作られ続けている現実を是非老舗まで足を運んで肌で感じたかったのだ。
4.大松屋本家

大松屋本家は鶴岡駅から徒歩で10分程度だ。但し天候が安定していて足元が良い場合だ。
実際には、道中、先日までの大雪で路肩には雪が掻き寄せられていて歩道は歩きにくく、予測よりも少し多く時間がかかった。
信号のある小さな交差点を左に曲がるとすぐのところに「大松屋本家」があった。
5.「初なすび 販賣始めました」

ガラス戸に「初なすび 販賣始めました」と達筆な筆字で書いた長方形の書道用紙のような紙を貼ってあるのが「ついに来たぞ!」と吾輩の悦びを掻き立てるのだった。
「売」ではなくて「賣」なのがいい!
紙が事務用のA4用紙ではなく、書道用なのか、あまり見かけない規格の長方形の紙なのがいい!
達筆な筆字がいい!
そして・・・入り口前が除雪されてないのがいい・・・いや、これはちょっと危なかった。
もし滑って転んだら狭い道を左折してきた車に轢かれてしまう恐れがあった。・・・_| ̄|○
吾輩は滑って転ばないように気をつけて雪を跨いでどうにか店の扉を開けた。
6.田舎のおばあちゃん家の匂い
入った瞬間、時代が逆行して昭和になって、老舗っぽい昔の民家の香りが漂っていて昔昔山形の田舎の親戚宅に遊びに行った時のおばあちゃんの匂いまで思い出すのだった。
これがあるから老舗に足を運んで買いに来たかったのだ。
宅配便や百貨店やアンテナショップを利用しての無機質な買い物だとこうはいかない。
この体験こそが特に今の時代には貴重で重要なのだ。
怪しい天候の間の穏やかな日を狙って交通費と時間をかけて来た甲斐があったと言うものだ。
それにしてもこの昔ながらの民家の良き匂い!
幼少時におばあちゃんの膝の上で抱かれているようなほんわかした気分にもなってきた。
7.1箱買った



挨拶して店内に入ると、間もなく電話で何度も話していた声の主であるおばちゃん、いや、女将さんが奥から出てきた。
「初なすび」は今週いっぱいは取り置きしなくても在庫があるから安心していいと電話で言ってくれたそのままで、店頭には箱入りも袋入りも両方あった。
自分用に1箱買えば良い吾輩には何の問題もなかったわけだ。
吾輩は箱入りを1箱買った。現金で税込1,250円支払った。
8.話好きな女将さん
大松屋本家はこの地で始まり、「初なすび」もこの地で作っていた。
しかし今の女将さんのお父さんである四代目の時に、数々の転機が訪れた。
「お父さんはかなりの変わり者でね・・・」
と女将さんは言い、そこから宙を眺めるような目つきで延々とお父さんの話をするのだったが、同じく変わり者の吾輩から見たら同類、いや、かなり尊敬に値する人物には違いなかった。
「昔からのお菓子作りはそばをこねるのに似ているのでそばもできるはず」
「それに、そば屋は絶対に潰れない商売だ」
これが父上の信条だったらしい。
そういうことで和菓子屋なのに羽前水沢駅から1kmほどの場所に「大松庵(だいしょうあん)」というそば屋を始めた。
本店は「おおまつや(大松屋)」だがそば屋の方は「だいしょうあん(大松庵)」と「大松」の読みが違うのだ。
以来、「初なすび」もその大松庵の場所で製造するようになって、今はそこから本家に「初なすび」を運んできているのだ。
大松屋本家は「初なすび」販売専用のお店で、11月末頃から2月の頭までの営業で女将さんがたった1人で店番をしている。
営業時間は11時から14時までで、土日月火の週4日だけの営業だ。
「店は閉めていてもアタシは生きてて中で生活してるわよ!」
と女将さんは笑って言うのだったが、そういうことでここが昔からの住まいなのは変わらないらしい。
9.酒田市日和山公園の山頂の船
超変わり者のお父さんネタは枚挙にいとまがなく全部話すのは不可能らしいのだが、その中で顕著な話をひとつ聞いた。
それはお父さんは酒田市から依頼を受けて酒田市の日和山公園の山の天辺に船をこしらえたとのこと。
え? 山の天辺に船? 何のことやら?
と思って聞いていると、その前の市長の時にお父さんは酒田市に北前舟の功徳を今に残すため実物大の北前舟の模型を何処かに作ろうと提案していたが却下され続けていたとのことだ。
それが市長が変わって受け入れられ、現在は日和山の天辺に北前舟の原寸大模型があるとのこと。
舟なら港では? なんで山の上に舟? ノアの方舟でもあるまいし?
と、吾輩は頓珍漢な気分だった。
しかし後でGoogleMapで日和山公園を見たら天辺に池があってそこに確かに北前舟と思われる姿形のでかい舟が浮いているのだった。
そこに行けば大松屋かお父さんの名前かが書いてあるのかどうかはわからないが、ともかく吾輩も一度現地に見に行ってやろうという気になった。
「鶴瓶の家族に乾杯」でも見たが、日和山公園は桜の名所でもあるので桜の頃に訪問したいなと思った。
10.超変わり者の四代目岳父
そんなこんなでいろいろなことに手を出して忙しかった現女将さんのお父さんである大松屋四代目はさぞかし愉快な人だったようだ。
話を聞いていると吾輩なんかとは案外気が合いそうな気がして、何だか他人とは思えない気分になった。
しかし当時振り回されていた家族の1人が娘の現女将だということは容易に想像できた。
気の毒ではあるが、しかし結果的にそば屋も舟もうまくいき今に至り、また「初なすび」も現存して全国に知られるほどの人気商品として続いているので、結果的に偉大な岳父と言えるのではないかと外部の吾輩なんかは四代目に対して畏敬の念を抱くばかりなのだ。
こういう貴重な話を知り得、当の娘さんから直に話を聞けたことも老舗の本家を訪ねてきたからこその御利益だ。
これだから万難を排して老舗訪問することはやっぱり意義深いしやめられないのだ。
11.大松屋本家
山形県鶴岡市にある大松屋本家(おおまつやほんけ)は、他ではまずお目にかかれない「茄子の和菓子」を作ることで知られる非常にユニークな歴史を持つ老舗だ。
大松屋本家は1907年(明治40年)創業の老舗だ。
もともとは鶴岡市の日吉町で菓子店を営んでいたが、四代目の時代に大きな転換期を迎えた。
四代目が江戸時代中期の豪農の屋敷を譲り受け、現在の鶴岡市水沢に移築した。
これが現在の「大松庵(だいしょうあん)」となり、囲炉裏のある風情豊かな空間で、菓子作りとともにお蕎麦も楽しめる場所として親しまれている。
12.「初なすび」




看板商品の「初なすび」は、昭和天皇へ献上されたこともある由緒ある品だ。
野菜の茄子をそのままお菓子にするという、全国的にも極めて珍しい「野菜の砂糖漬け」だ。
素材には、鶴岡特産の小粒で実が締まった「民田なす(みんでんなす)」を使用している。
松尾芭蕉が『奥の細道』の旅で「珍らしや 山を出羽の 初なすび」と詠んだことでも有名な、歴史ある茄子だ。
12.1.製法
長いヘタがついた生の小茄子を、薄い砂糖水から段階的に濃度を上げた蜜でじっくりと煮含め、最後に乾燥させて砂糖をまぶす。
完成までに非常に手間と時間がかかる、職人技の結晶なのだ。
外は砂糖がシャリッとしているが、中は驚くほど瑞々しく、しっとりとしている。
茄子の風味をほんのり残しつつも、フルーティーな甘納豆やドライフルーツのような不思議で上品な美味しさだ。
12.2.「初なすび」の謂れと縁起
「一富士二鷹三茄子」という言葉があるように、茄子は古くから初夢に見ると幸福を招くと言われる縁起物だ。
特徴的な長いヘタも蜜がしっかり染み込んでいてそのまま食べられる・・・と言いつつもやっぱり固いヘタもあって無理して食べることはないと吾輩は思う。
茄子は「一つの無駄もなく実がなる」ことから、子孫繁栄や商売繁盛の願いも込められている。
12.3.すばらしき「初なすび」
「初なすび」は、そのままでも美味しいが、お茶席での菓子としても珍重される。
見た目が本当に「小さな茄子そのもの」なので、初めて見た人は驚くだろうが、一口食べればその繊細な甘さの虜になるはずだ。
13.店舗資料


(おわり)
