花びら餅 御菓子司木村屋 水戸市 和菓子なスクチャイ209 2026.01.20
和菓子なスクチャイ209 茨城県 > 水戸市
※くまの身長は7.5cm。大きさの参考に。
花びら餅 御菓子司木村屋 水戸市

1.「花びら餅」の蘊蓄能書き
新年の茶会「初釜」に登場するという「花びら餅」だが、茶人ではない吾輩には縁遠かったようで、これまで食べる機会がなかった。
むしろ人が食べて、どこそこのは美味しいのだの味噌が効き過ぎているだの塩分が気になるだのどうのこうのと蘊蓄能書きを聞かされて、甚だしくなんだか面倒くさい食べ物に思えていたのだ。
この年末年始に過ごしていた京都でも見て・・・初めて食べてみようと買う気になっていたのだが・・・その大丸京都店の和菓子売り場人曰く、決して自分のところの商品を売りつけようとする姿勢は見せず、
「花びら餅は製造元によって味が違うので、みんな好き好きで選んで、好きなメーカーがあるものなのですよ〜」
と言い、店内の和菓子売り場をひと通り眺めてからどれか気に入ったのを買うのがいいかもね、とのことだった。
しかも味が甘いベースもあれば味噌が効き過ぎて塩辛いベースもあって、基本的には甘辛い味のお菓子だが、その差は製造元によって配分量が違うし、モノによっては「ご飯のおかず」的な味噌味メインのようなものもあるなどと聞かされた。
初心者の吾輩にとっては惑わす言葉で、結局大丸京都店では買わず仕舞いだったのだ。
買わなかったもうひとつの理由は一個500円以上で箱入り4個など、買うには2,000円以上かかるのであった。
2.水戸で鮟鱇鍋を食べた後に
さてその後、吾輩は水戸で「鮟鱇鍋」を喰った帰りに水戸駅に歩く道すがら、味のある和菓子屋さんを発見したのだ。
吸い寄せられるように店内に入ると感じのいい2人の店員さんが初めての吾輩をニコやかな笑顔で迎えてくれた。
その瞬間に、この和菓子屋さんの素晴らしさを悟り、つまりここで販売している和菓子はどれも美味しいに決まってる!とわかったのだ。
よし!吾輩はいくつか買うぞ!と決めた。
ちょうど鮟鱇鍋を食べた後で、そこでは甘味は頼まなかったので、これから乗る列車の中で食べる甘味を仕入れるのは理に適っていた。
しかも店外のショウウィンドウには「花びら餅」が飾っていたのだ。

もう正月も20日過ぎなので、京都で買わなかった花びら餅は、今年は諦めていたのだ。
しかもピンと来た和菓子屋さんだ。
美味しいに決まってる。
3.御菓子司木村屋本店にて
店内で花びら餅を見ると450円で1個売りが可能だった。
花びら餅1個に加えていくつかの和菓子を買った。
このお店では、ほとんどのお菓子が1個売りしてくれるのだった。
非常に良心的で、単身者や少人数向けに優しいお店なのだ。
そのお店の姿勢にも感心して大いに気に入ったのだった。
4.食べる





さて吾輩は常磐線の特急列車車内でさっそくその花びら餅の包みを解いた。
花びら餅は写真の通り物干し竿に布団を干しているような形で、物干し竿は牛蒡(ごぼう)だ。
その牛蒡がずっと気になっていて、いったいどんな味がするのか興味があったのだ。
砂糖漬けか砂糖で煮込んだ甘い根菜の可能もあり、またはきんぴらのように醤油などで炒めた甘辛い、または塩辛い、あるいは唐辛子のパンチが効いている可能性もある。
果たして吾輩が仕入れたた花びら餅の「物干し竿」の牛蒡は何味か?
・・・味噌味だった。
漬物ほど歯応えがあるわけではなく、柔らかく抵抗なくスッと噛み切れた。
断面を見ると牛蒡の茶色い断面の隣に桃色の餡があって、その餡が甘くて美味しかった。
ただしそれぞれを分けて食べたわけではないので味の分類は正確ではないかもしれない。
齧って食べると求肥と一緒に味噌味の牛蒡と甘い餡を一緒に食べることになり、全体的に程良い甘辛さなのであった。しかもそのバランスが絶妙だ。
こりゃ〜うまい!
恐れていた気持ちが雲散霧消して「花びら餅」がいっぺんに大好きになった。
ただしあくまで水戸の木村屋で買った「花びら餅」の場合の話だ。
他のメーカーのものは知らん。
吾輩は気に入っても、こればっかりは食べてみないとわからないだろうし、甘辛い度合いにも食べる人によって好き好きがあるだろう。
その場で店員さんに確認したが、花びら餅を含め生菓子はこの店舗内で昔ながらの製法で作っているのだ。
こういう和菓子屋さんと、そこで買って食べる季節の和菓子を吾輩は日ごろから求めていたのだ。
別記事にするが、他に買った生菓子もとても美味しくすべてが気に入った。
水戸に来た目的は鮟鱇鍋を食べることだったが、予定外にこんなにいい和菓子屋さんを見つけて儲けもんの気分であった。
ちなみに会計は現金のみだったが、それぞれが消費税込みの10円単位なので細かな1円単位は出ない。
5.一部は県外の既製品
干菓子コーナーにある商品の一部には別地域から取り寄せて販売しているものもあるので、ここで作っているものを買いたければ店員さんに確認した方がいいだろう。
吾輩は買った商品の一部、すはまだんごと麩菓子はそれぞれの製造元が京都と大阪だった。
すはまだんごは豆政ではないメーカーで、若女将さんも仕入れ業者を通じているのではっきりと京都とわからないようだった。
麩菓子は裏面のラベルにはっきりと大阪の製造元と表記してあった。
すはまだんごは久しぶりに食べたかったので2本だけ買い(1本税込95円)、麩菓子は見た目で買ってしまったのだったが、買う前に確認しなかった吾輩が悪いのだ。
ちなみにすはまだんごは食べると香ばしさがあまりなかったので吾輩が馴染んでいる豆政のものではないとは気づいたが、いったいどこで作っているのかと吾輩列車の中だったがデッキに立って木村屋に電話して若女将さんに聞いてみたのだ。
水戸に来てまで買った麩菓子とすはまだんごがどちらも関西が製造元だったことはちょっとショックだったが、吾輩は確認をしなかったのでまあ仕方がない。
6.花びら餅について
「花びら餅」は新年の茶会「初釜」に欠かせない平安時代から続く深い歴史を持つ和菓子だ。
そのルーツはお菓子というよりも「儀式のための食べ物」にあった。
6.1.ルーツは平安時代の「歯固めの儀」
花びら餅の原形は平安時代の宮中で正月に行われていた「歯固め(はがため)の儀」という長寿を願う儀式にあった。
当時はお菓子ではなく、餅の上に「押し鮎(塩漬けにした鮎)」、大根、猪の肉などを乗せて食べる硬い食べ物だった。
「固いものを食べて、歯を強くし長生きする」という願いが込められていた。
6.2.「菱餅」への変化
時代が下るにつれ宮中の「歯固めの儀」の内容が簡略化され、「御菱葩(おひしはなば)」と呼ばれる形に変わった。
それは白い丸餅の上に赤い菱形の餅を重ね、その上に茹でた「ごぼう」と「味噌」を乗せたものだった。
この「ごぼう」は、かつての鮎を見立てた名残だと言われている。
6.3.明治時代、茶道「裏千家」によって全国へ
現在のような柔らかいお餅で包んだ和菓子の形になったのは明治時代に入ってからだ。
茶道の裏千家十一世の玄々斎(げんげんさい)がお正月の「初釜」で使うための菓子として宮中から特別に許可を得て作らせたのが始まりだった。
京都の老舗菓子司である「川端道喜(かわばたどうき)」などが宮中の御菱葩を現代風の生菓子に仕立て直した。
これがきっかけとなり、それまで宮中だけの秘密の行事食だったものが一般にも広まり、「初釜の代表的なお菓子」として定着した。
花びら餅の「不思議な構成」の理由
花びら餅を見ると「なぜごぼうが?」と驚く人が多いようで吾輩も同じだったが、これには歴史的な意味が詰まっている。
ごぼうはかつての「鮎」の代わりで、また、土の中に深く根を張ることから「家業が安泰であるように」との願いがあったようだ。
白味噌の餡はかつての雑煮の風味を凝縮したもののようだが、水戸の木村屋の場合は餡は桃色で中に味噌が入っているかどうかは食べる時には個別に判断がつかなかった。しかし全体的に味噌味だったので、餡に白味噌は入っている可能性があるとは思った。
白い餅の下に赤い菱餅(現在は薄いピンクの餅や餡)を重ねることで、うっすらと花びらのような色が透け新春の華やかさを表現するのだが、水戸の木村屋の場合はピンクの餡だったというわけだ。
7.楽しむためのポイント
花びら餅は、12月末から1月中旬ごろまでの非常に短い期間しか店頭に並ばない季節限定のお菓子だ。
京都の老舗はもちろん現在では全国の和菓子店で作られているが、既に書いたように、お店によって「お餅の柔らかさ」や「味噌餡の濃さ」が微妙に異なる。
繰り返し延べることになるが、結局「花びら餅」は自分好みの製造元を見つけていおくのがいいような気がするのだった。
(おわり)
