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あの日、私は自分を守った。

あのときの私は、
それが人生の分岐点だとは
まったく気づいていませんでした。

ただ、必死でした。

転職したいと
初めて人に打ち明けたときのことです。

相手は、私がとても信頼していた人。
人事のプロで、キャリアの専門家でもありました。

だからこそ、
その人ははっきり言いました。

「いまの職場を辞めない方がいい」

年齢や条件を考えると、
ここより良い条件での転職は難しい。
そういう判断だったのだと思います。

きっと、
私のことを思っての言葉でした。

でもそのとき、
私の中にはどうしても
譲れないものがありました。

それは

私は転職したい

という気持ちです。

それまでの私は、
人の意見に押されると
自分の気持ちを引っ込めてしまうことが
よくありました。

「あなたのため」と言われると
何も言えなくなってしまう。

でもそのときは違いました。

反対されても、
私は考えを変えませんでした。

自分でも驚くくらい、
はっきりとでした。

今振り返ると、
あれは私が初めて
自分を守った瞬間
だったのだと思います。

そのとき、
ふっと背すじが伸びるような感覚がありました。

誇らしい、という気持ち。

「私、ちゃんと自分を大事にできた」

そんな感覚でした。

あのときはまだ、
それがどれほど大きなことか
わかっていませんでした。

でも今ならわかります。

あの日、
私は人生のレールを
切り替えていました。

そして不思議なことに、
その友人は
私を柿田川に案内してくれた人でもあります。

人生を振り返ると、
大きな分岐点のそばには
いつも誰かが
「信号」のような役を
引き受けてくれていました。

そういえば、東京へ来るときもそうでした。

本当は地元の工場の寮に入る予定でした。
借金を返すため、とにかく働くしかないと
思っていたからです。

そんなとき主人が
「どうせ家を出るなら
 東京に行けばいいんじゃないか」
と言ってくれました。

もしあの一言がなかったら、
私はいまでも地元の工場で
まったく違う人生を生きていたかもしれません。

方向を指してくれる人がいて、
最後に選ぶのは自分。

そうやって
私の人生のレールは
何度か切り替わってきたのだと思います。

いま振り返ると、
あの友人も、
そして主人も。

私の人生に現れてくれた
愛のメッセンジャー
だったのだと思います。

そして、
あの日、私は自分を守りました。

あのときの私を思うと、
今でも誇らしく思えるのです。

「よくやったね」

そう、あの日の私に
伝えたいと思います。

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