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なぜ私たちは“本質”を求めてしまうのか?


社会人になってから、いろんな人に出会いました。仕事の現場でも、飲み会でも、読書会でも。そこでよく耳にするのが、「結局は本質が大事だよね」という言葉です。
でも正直、私はこの「本質」という言葉にずっと違和感を持ってきました。

経理の世界で数字と格闘しながら働いてきた私にとって、ものごとを「本質」で片付ける人ほど、実際の現場を見ていないように感じることが多いんです。

「本質」とは何なのか。
そして、なぜ私たちはそんな言葉に惹かれてしまうのか。
この記事では、経理畑での経験を交えながら考えていきたいと思います。



1. なぜ人は「本質」という言葉に安心するのか

「本質」という言葉には、どこか魔法のような響きがあります。
複雑な現実を一気に整理してくれるような、そんな錯覚を与えてくれるからです。

たとえば会議で、「結局、本質はお客様を喜ばせることだよね」と言われると、それ以上深掘りできない雰囲気になります。誰も否定できないからです。

心理学的にも、人は「答えらしいもの」に惹かれやすいと言われます。曖昧な状態を不安に感じるからこそ、「本質」という言葉を持ち出して安心したいのかもしれません。

でも実際のところ、「本質」は人によって違う。経理担当から見れば「コスト削減」が本質に思えるし、営業担当から見れば「売上拡大」が本質に見える。立場や状況によって変わる以上、それは固定された真理ではなく「便利な言い換え」にすぎないんです。



2. 経理の現場から見える「本質」の危うさ

私が特に「本質」という言葉に引っかかるのは、数字の世界にいるからだと思います。

あるとき、上司が「コスト削減が本質だ」と言い切りました。確かにその通りにも思えます。でも、細かい削減を重ねて疲弊した結果、現場のモチベーションが下がり、むしろ業績が落ち込むケースもありました。

逆に、別のプロジェクトでは「攻めが本質だ」として予算を積極的に投じたけれど、蓋を開けてみれば赤字。冷静に数字を見れば、もっと早く軌道修正できたはずでした。

経理をやっていると、本質という言葉が「現実を見なくてもいい免罪符」になっている場面をよく目にします。都合よく使えば、誰も反論できない盾になるんですよね。



3. 「本質」を求めるより、目の前を正直に見る

じゃあどうすればいいのか。
私が思うのは、「本質」を探すより、目の前の具体を正直に見ることです。
• 本質はコスト削減だ → 実際に削減すべき数字はどこ?
• 本質は売上拡大だ → 実際にどの商品が利益を生んでいる?
• 本質はお客様を喜ばせることだ → 実際に顧客満足度はどう測れる?

数字は冷たく見えて、実はすごく誠実です。嘘をつかないから。私にとって経理の仕事は、「本質」という言葉でごまかすより、具体的な数値や現場の声に寄り添うことの大切さを教えてくれました。



4. 「本質」を手放すと、もっと楽に生きられる

「本質」を求めないと、不安になる人もいると思います。芯がなくなるように感じるからです。
でも、私はむしろ逆だと感じています。

「本質など存在しない」と思えると、人間関係も仕事もずっと楽になります。
だって、正解を一つに絞らなくていいから。状況ごとに判断していいし、人によって意見が違ってもいい。むしろその違いに価値があると気づけるんです。

私がよく思い出すのは、地元の冬の暮らしです。雪かきをしても、また夜には積もる。それでも翌朝またスコップを持つ。

はたから見たら不毛な行為に見えるかもしれませんね。「別の場所に引っ越せば良いのに」なんて、よくSNSで見られる意見だと思います。

結局のところ、そこに「本質」なんてないけど、確かに生きる力がある。

それと同じで、「本質」に縛られなくても、私たちはちゃんと生きていけるんじゃないでしょうか。



まとめ:本質を求める代わりにできる一歩

「本質」という言葉に惑わされずに生きるために、私が意識していることはシンプルです。
1. 曖昧なものは曖昧なまま受け止める
2. 数字や現場の声という“具体”を見る
3. 正解を一つに絞ろうとしない

結局、「本質」は安心のために私たちがつくり出した言葉なのかもしれません。
でもそれを手放すことで、もっと現実に正直に、もっと自分らしく選んでいける気がします。

今日からできる小さな一歩としては、会話や会議で「結局は本質が〜」と出てきたら、こう問い返してみてください。
――「それって、具体的にはどういうことですか?」

その瞬間から、あなたの目の前の世界は少しずつクリアになっていくはずです。

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