掌編小説【恋に照らされて】#片想い文芸部
ナル様の下記記事に参加させていただきました。お世話になります。
よろしくお願いします!
『月奈先輩、お疲れ様です!今日も輝いていて素敵でした。
私たちももっと練習するので、来年は優勝目指しましょう!明日からもビシバシお願いします(^^)』
「はぁ……優勝って。わたし、一勝すらできんかったっての」
スマホをスリープにしてふと窓を見ると、カーテンの隙間から月の灯りが静かに流れこんでいた。
初めての近畿大会は──惨敗だった。
「まあでも、このわたしがここまで来れただけでも奇跡よな。
にしても……かっこよかったなぁ、楢崎くん」
一年生のとき、友達に誘われるがまま何となく入部したバトミントン部。本当に何となくの入部だけあって、練習も体型維持できたらいいや程度に考えていたので、常にベンチ要員だった。
そう、初めて行った近畿大会の応援で、彼の姿を見るまでは。
「あの奈良県代表の男の子、なんかすごない?」
「ああ、彼、まだ一年生やけど去年の全国小学生選手権で優勝した子よ」
「まじ?どうりでだよ」
「私と一緒のベンチ要員がどの目線で言ってんだか……もしかして、名前と同じ『な』が入ってるから親近感わいてんじゃない?」
「は?なにそれ、わけわかんない。それに漢字が違うわ。けど……」
「けどお?」
「な、何でもない!はよ終わらんかなー」
実はこのとき、わたしは『楢崎くん』に一目惚れしていた。
それからというもの、最低でも近畿大会に出場するために、いや、彼に会うために、誰よりも必死に練習してきた。もちろん辛いこともたくさんあったけど、少しでも彼に近づきたくて、とにかく頑張った。
次第に努力も実り、先輩達も認めてくれて、全くのど素人だったわたしは、ニ年生の地区大会では、なんと優勝するまでになった。
けど……
窓の外には、月があんなにも輝いている。
「なんで、月って……太陽の見てないところであんなに綺麗なんやろ。
今輝いても、しょうがないじゃん」
月を眺めているうちに、うとうととし始め、気づけばベッドに身を預けていた。
* * * *
近畿大会を終えて1週間が経った。
「今日は転校生を紹介するぞ。入ってこい」
「……!!」
「初めまして。『楢崎太陽』っていいます。特技はバトミントンですが、国語が苦手で、ちょっと嫌いです!よろしくお願いします!」
「おい、楢崎。俺が国語の教師と知っての暴言か?まあ、それはあとでしっかり教育してやるから、みんな仲良くしてやってくれ!」
月はほんの一瞬だけ、太陽と重なることがあって、それが“日食”って習ったけど
でもそれは、世界を暗くするんだって。
それでも、わたしは……しるもんか!
終
