掌編小説【蛇口からお金】#シロクマ文芸部
小牧幸助様の下記記事に参加させていただきました。ありがとうございます。
よろしくお願い申し上げます。
「蛇口から紙幣が出るようにしてみてはどうでしょうか」
「なにを言ってるんだ、君は」
私もそう思った。秘書になってニ年、ついにこの人の側近まで理性が蒸発したか。
「しかし考えてみてください。最近の物価上昇は激しく、庶民の懐事情は火の車です。先生は、賃金が“上昇”しているとおっしゃいますが、それは一部の企業のおかげで、中央値で見れば生活水準はむしろ下降しています。増税、値上げ、社会保険料……結果、手元に残るのは萎れたスポンジのような財布です」
「そんなことはわかっとる。だが、金を出す先は我々を支えてくれる企業様だけで十分だ。それ以外の庶民はな、水さえあれば勝手に生き延びるんだよ」
よく言うよ。あんたが頬張ってるその高級料亭の弁当は、誰のおかげだと思っているんだか。
「それにな、わざわざ蛇口から出るようにせんでも、給付金をばら撒けばいいじゃないか」
「前回のことを覚えておいでですか?紙の申請に手間取り、ネット申請にはマイナンバー。銀行口座のない人もいて、ともかく現場ベースでは混乱を招きましたよね」
「うーむ……」
「だからこそ“蛇口”です。誰もが使えて、すぐ手に取れる。それが水です。そして水は、金なのです。この国の外に目を向ければ、世界中で水が高値で取引され、奪われ、血を流しています」
「……ふむ」
「しかも今年は梅雨が例年より早く明け、水不足が予想されます。なので水を紙幣に変えれば、水の過剰使用も回避できます。加えて飲み水と同じくらいありがたがられるでしょう。
庶民は救われ、先生の支持率も爆上がり間違いなしです。その勢いはさながら″鯉の滝登り″」
「いやしかしだね、予算が……」
「心配ありません。蛇口からジャブジャブ出ますよ。これからは」
どこからツッコめばいいのかもはや分からない。
せめて、この国の水道管だけでも変えるため
私は選挙に行こうと思う。
終
その昔「じゃくち」っていったら「じゃぐち」って訂正されました。
どっちでもよー(^^)
