掌編【猫も喰わない】#片想い文芸部
ナル様の下記記事に参加させていただきました。ありがとうございます!
お楽しみいただけたら幸いです。
あざとい⸻と言うのだろうか。
いや、それ以上のような気もする。
とにかく、今日のみゆきは刺激が強すぎる。
右肩が出たトレーナーに、やたら短いスカート。
それだけでない。猫を撫でる指先も、言葉の端々さえも、妙に甘ったるくて艶めいている。
「……おい、今日のみゆきちゃん、なんかヤバいよな」
「……確かに」
康祐も僕もみゆきにばかり目が行くので、猫カフェに来たはずなのに猫の記憶が薄れているほどだ。
それに4人で来ているのに、エリのことを忘れかけてさえいた。
「ねえ、この子康祐くんに似てない? よーしよし」
その言い方すら甘くて、わざとらしい。
屈んだ拍子にスカートの奥がちらりと揺れるたび、視線を逸らすふりをしては、逸らせない。
そういえば彼女、ずっと康祐ばかりに話しかけている。
なんとなく面白くなくなってきた僕は、思い出したようにエリの方を見た。
エリは、ひざの上に一匹の猫を乗せて静かに座っていた。
動いているのは、左手の指先だけ。
小指から順番に、ゆっくりと⸻まるで壊してはいけないものを扱うような慎重さで⸻猫の毛を柔らかにかき分ける。
それは撫でているというより、奥へ奥へと何かを探っているようにも見えて、その姿に僕の心がなぜかざわついた。
ふと彼女が顔を上げた。
大きな瞳と目が合った。
⸻この子、なかなか離れてくれないの⸻
とでも言いたげな、ちょっと困ったような瞳。
下から覗き込むその視線に、僕は不意をつかれた。
まるで、背中をその細い指で撫でられたような感覚が走った。
気持ちいいような、弄ばれているような……ちょっと怖いような。
なんだろう、この感じ。
遠くでみゆきと康祐の笑い声がする。
けれど僕は、エリから目を離すことができなかった。
終
