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さくさくさく、冬に冬虫がさく


ーよもぎさんに捧ぐ





大ちゃんが飲めない酒を代わりに飲んでくれてさ。


そうなんだ。


いやだからそれでね。




昨日のことは何も憶えていない。


はっきり言わせてもらえば



冬虫はさ。


とんで火に入る夏の虫とは違って


間違っても自分から火に入るなんてヘマはやらない。



だってオマエそんなことをしたら


あれだろ



アレってなんだい



アレはアレだよ


ほらそのアレレのレって言ってるオジサンかいただろ



ああ



あの意味がわからずピストル撃ちまくる目ン玉が目玉焼きみたいに繋がってるお巡りさんでしょ


違う違うチガーう


そっちじゃなくってあっちだよ



あっちってどっちのあっち


暑いのかい? 外はまだ真冬の真っ盛りだっていうのに



さっきから自分の匂いのしないせんべい布団の横では


大ちゃんとフクちゃんの会話が噛み合わない。




たしかこの後



昨日の飲み代を払いに酒場に行った後で



昨日のあいつに飲めない酒勧められ


断りきれずにモジモジしているのを横目に



大ちゃんが代わりに代わりに酒を飲み干して

…。




窓辺の蜜柑が隣の客はよく柿食う客だって

柄にもない早口言葉が言えずに黙っている。




その姿が津軽のリンゴじゃないから照れてるのに真っ赤になれずに



オレンジ色の憎いやつに、成り下がっている姿が矢沢永吉の出来損ないみたいでなんだかヤケにイジらしい。



部屋には書き損じた落書きがクシャクシャに丸めてある。



豚の似顔絵が描いて紙くずにまじって。




ほらチェルシーも一つチェルシー。



あなたにもチェルシーあげたい。



なんて書いてあるのもある。



きっ。


いくら本人がカッコつけたって


その実


文章までカッコよくなるわけなんてない。



カッコいい文章はどうやったら書けるのか?



そんなこと知ったこっちゃない。



芋食って、屁こいて、転びまくって、毎日、頭の中に浮かんでくる言葉を書きまくっていたら



もしかしたらそのうちカッコよくなるかもしれない。



まあカッコつけないでやれることやるだけだね。



カッコよくなってもよし。



カッコ悪いまんまでもよしだ。



さくさくっていけてれば良しだ良し。



もともと大した玉でもないんだし

何はなくとも浪花節っていうからさ。



何をまた。



くだらないことが頭にもたげてくる。



ひー。



それにしてもフクちゃんの旦那さん、肥溜めに落っこちたんだ、酔っぱらいって危ないじゃん。


でも知らなかったなー。



このこと、きっとフクちゃん、死ぬまで旦那さんの肥溜めエピソード事あるごとに誰かに繰り返し話し続けるんだろうな。



でもあれか



毎日がママじゃないけどままならないことばかりだが


名前みたいにさくさくいかないのが

案外いいのかもしれないな。



苦虫を噛み潰したような横顔が磨りガラスに透けた。


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