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マイクロソフトは、私たちの「知的財産」を人質にとっているーーサブスク化の罠

第1章:ソルボンヌの門が閉ざされた日

2021年から2024年にかけてソルボンヌ大学で学んでいた頃、私は LibreOffice と向き合う日々を過ごしていました。

忘れもしない、2024年4月25日のことです。予告なく講義が中止され、大学の門は固く閉ざされました。構内へ入ることすらできなくなったあの日、歴史ある大講堂(アンフィテアトル)は、エマニュエル・マクロン大統領が世界に向けて「欧州の未来」を語る国家の舞台へと変貌していました。

「欧州は死ぬ可能性がある。我々は米国や中国に依存しない『主権』を確立しなければならない」

大統領が壇上でそう咆哮していたまさにその時、私たちは日常の課題において、公的なデジタルスキル認定制度 「PIX(ピクス)」 を通じ、その思想を実践させられていました。受検そのものは必須ではありませんが、そのスコアは就職時の重要な判断材料となるため、教育現場ではLibreOfficeの使用を前提としたスキル習得が徹底されていました。

その最たるものが、統計学の期末試験です。試験会場でPCの前に着座し、LibreOffice(Calc)を操りながら、複雑な表計算を用いて回答を導き出す。一瞬の操作ミスも許されない緊迫した状況下で、私たちは「特定企業に依存しないリテラシー」を、国家の意志として文字通り身体に刻み込まれたのです。

フランスは国家を挙げて、学生一人一人の指先に「主権(Souveraineté numérique)」を宿そうとしていました。しかし、正直に言いましょう。その使い勝手は決して快適ではありませんでした。フォントは微妙にずれ、保存のたびに互換性を心配する日々。PIXが推奨する「自由であること」の代償は、あまりにも大きなストレスでした。

しかし、2026年の今、私はあの頃とは逆の、より深刻な「不自由」の中にいます。洗練された道具を手に入れた代わりに、自分の「思考の産物」を巨大なサーバーの鎖で繋がれてしまったのです。

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