読書メモ「岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。」
表記本を読んだので感想を記載します。いろんな方がおすすめしている本ですが読んだのは初めてでした。たしかにおすすめされるのもわかる内容でした。
できることに真摯に向き合い、優先順位をつけて進む
「飛びながら飛行機を修理する」。これは岩田さんが経営の難しさを語るときに使った比喩です。
大革命をするから、5年待ってください。そのあいだは利益は出ませんと言ったら、社長はクビになるんですよ。だから、毎年、一定水準の利益を出しながら、でも、変えていかなきゃいけない。いってしまえば、飛びながら飛行機を修理するみたいなところがあって。
変化を起こすには時間がかかります。でも、結果は今すぐ求められる。その現実の中で、岩田さんは「できること」にひとつひとつ取り組みました。
彼はこうも語っています。
たぶん、その面談のときにわたしは「判断とは、情報を集めて分析して、優先度をつけることだ」ということがわかったんです。「そこで出た優先度に従って物事を決めて進めていけばいい」と思うようになりました。
すべてに手をつけることはできないからこそ、「何をやらないか」を決めることが大切となります。しかし、現実には、私たちはときに手当たり次第に動いてしまいます。目の前の仕事をこなしながら、「これでいいのか」と不安になる。そんなとき思い出したいのが、岩田さんのこの言葉です。
ところが、人は、とにかく手を動かしていたほうが安心するので、ボトルネックの部分を見つける前に、目の前のことに取り組んで汗をかいてしまいがちです。
そうではなくて、いちばん問題になっていることはなにかとか、自分しかできないことはなにかということが、ちゃんとわかってから行動していくべきです。
大事なのは、「自分にしかできないことは何か」「いま、もっとも問題になっていることは何か」。それがわかったうえで動くこと。それが本当に意味のある「行動」になる。
この思考は、開発の現場やマネジメント、あるいは自分のキャリアの選択にもそのまま当てはまります。できることに正直であるというのは、「できないことを正しく見極める」ということでもあるのです。
人に敬意を払い、ともに進む
もう一つ、岩田さんの言葉から強く感じたのは「人」に対するまなざしの深さでした。
任天堂の社長として多くの変革を進めた岩田さんですが、その根底には「人の誠実さを否定しない」という強い信念がありました。
世の中のありとあらゆる改革は現状否定から入ってしまいがちですが、そうするとすごくアンハッピーになる人もたくさんいると思うんです。だって現状をつくりあげるために、たくさんの人が善意と誠実な熱意でやってきたわけでしょう?不誠実なものについて現状否定をするのはいいと思うんですけど、誠実にやってきたアウトプットに対して現状否定をすることは、やってはいけないと思うんです。
現状をつくりあげてきたのは、過去の人たちの誠実な努力である。その努力を一律に否定するのではなく、そこに敬意を払いつつ、次のステップをつくる。これは組織づくりにおいて、大切な視点だと感じました。(なかなかできないですが・・・)
岩田さんは人材育成にもこの思想を貫いています。
たとえば、新人に対しても「知らないことを恥じない姿勢」や「学ぶことを楽しむ姿勢」が大切だと語ります。そして、年齢や社歴にかかわらず、能力ある人を素直に尊敬することができる。そこには、こんな言葉がありました。
わたしより若くて社歴が短くて経験が浅くても、書いたプログラムが短くて速かったら、それははっきり「いい」とわかるじゃないですか。おなじことをやるのに、より短くてより速いプログラムがあったら、そのほうがなにかがいいわけです。わたしが経緯を払ってその方法から学ぶのは当たり前です。自分のできないことをできる人のことは、性格が好きとか嫌いとか、そういうこととは別に経緯をもてるんです。わたしは、そういうところは、公正といえば公正なのかもしれません。
これはとても成熟した態度だと感じました。たとえば、自分より若い人のコードがより速く、より短いなら、それは学ぶべき対象として「正しい」と認める。そんな透明な目線が、組織全体を前向きにするのだと思います。
また、仕事のなかでの「伝える」という行為にも、岩田さんは人への誠意を込めていました。
説明してそれを聞いた人がわかるのと、その分かった人がほかの人に説明できるほどわかることは、ぜんんぜん別ですから。
「伝わるまで伝える」。それがリーダーの役目であり、相手に敬意を払うということでもある。彼はそう考えていたように感じます。
ご褒美を見つける力が、クリエイティブを支える
仕事の中に「面白さ」や「快感」を見出せる人がいます。目の前の課題に没頭し、いつの間にか時間が経っている。そんな状態が頻繁に訪れる人は、おそらく岩田さんのいう「ご褒美発見回路」が開いているのかもしれません。
つまり、才能というのは、「ご褒美を見つけられる能力」のことなんじゃないだろうかと。「なしとげること」よりも、「なしとげたことに対して快感をかんじられること」が才能なんじゃないかと思うんですよね。行ってみれば、ご褒美を見つけられる「ご褒美発見回路」のようなものが開いている人。
この言葉は、才能を「他人と比べた結果」ではなく、「自分の中にある楽しさを見出せる感受性」として再定義しています。やらなければならないこと、ではなく、やりたくなること。面白がれること。それこそが継続の力になり、創造性の源になっていく。
そして、その創造性の核心には「アイディアとは何か?」という問いがありました。
「アイディアというのは、複数の問題を一気に解決するものである。」これは、ゲームをつくってるときに、任天堂の宮本茂さんが言ったことで、宮本さんはゲームをつくるときのひとつの方法論としておっしゃってたんですけど、わたしは、ゲームづくりに限らず万能な考え方だと思うんですよね。
創造的な仕事とは、単に一つの課題を解決するのではなく、周囲の複雑な条件や矛盾を一気に超えていくような“解き方”を探す営み。そのとき私たちは、真の意味で「面白さ」に触れるのだと思います。
では、そのアイディアはどこから生まれるのか?
それは、相手の視点に立つことから始まります。
宮本さんはなんにも知らない人をつかまえてきて、ポンとコントローラー渡すんですよ。で、「さあ、やってみ」って言ってね、なんにも言わないで後ろから見てるんですよ。わたしは、それを「宮本さんの肩越しの視線」って呼んでたんですけど。
この「宮本さんの肩越しの視線」こそ、プロダクト作りに共通的に必要な考え方だと思いました。
ユーザーを信頼して、観察して、気づきを得る。自分の発想だけで完結させない。むしろ、他者を主語にすることが、最大の創造性につながる。この態度が、任天堂という会社をユニークな存在にし続けた理由ではないかと思います。。
おわりに
プロダクト作りでも、普段の仕事、会社の変革に向けた取り組みにおいても広く覚えておきたい言葉がたくさんある本でした。
わたし、いまよりずっと若いころ、自分がものすごく忙しく感じていたころに、
「自分のコピーがあと3人いればいいのに」って思ったことがあるんです。
でも、いま振り返ると、なんて傲慢で、なんて視野の狭い発想だったんだろうって、思うんですよ。
だって、人はひとりひとり違うから価値があるし、存在する意味があるのに、どうしてそんなこと考えちゃったのかなって、恥ずかしく思うんです。
わたし自身も、周囲の人と、違いを持ちながら同じ方向へ向かえるように、日々の仕事を大切にしていきたいと感じました。ありがとうございました。
